■End-of-Lifeに思うこと★科学を超えるもの #52

今、入院中の患者さんの一人にEnd-of-Lifeの方がいらっしゃいます。時々教会から誰かが訪問しにきます。

息子さんが、日中ずーっと付き添っています。警察官の方だと聞いていて、きっと休みを取っているのだと思います。どのような気持ちで一日中付き添っていらっしゃるのかな、と思います。

喉にひっかけるといけないので、トーストから何まで全部ピューレ状にされて出て来て、患者さんは「食べ物じゃないみたい。要らない」と言って食べないので、息子さんが、ベビーフード(ピューレ状)のいろんな味を買ってきて試していました。

こんな時、ほとんどの家族は、外(家)から患者さんの好きな物を適当に持ってきて、喉にひっかけるリスクがあっても美味しい物を食べさせちゃうのですが、この方は警察官だけあって… ピューレ状と言われたら「ピューレ状の食べ物か… じゃあ、ベビーフードかな…」とちゃんとルールに従います。複雑な気持ち…。

最期の時くらい、美味しい物とか好きな物を食べさせてあげたいのが本音です。

高齢の患者さんは、End-of-Lifeになると、よく私達看護師には見えないもの、例えば、ほぼ高齢者しかいない施設内で、子供を見たり、動物を見たりします。

「ちょっと、そこの子を連れてって。さっきからもう騒いでてうるさい。」とか、「私も乗馬でも出来たらねえ。そしたらそこにいる馬に乗れるのに」とか、「その犬はね、夜になると来る私の犬なの、〇〇って名前なの。あれ?どこ行っちゃったかしら?探しに行かなきゃ。」とか言ったりします。

看護師達は、そういう話を、大体は笑い話にします。でも、皆んな、内心、もうすぐかな、と思ってたりします。

ある方は、夜寝る時に、看護助手にお礼とお別れのさようならを述べて、「おやすみなさい」を普通にして寝たら、同じ看護助手に普通に翌朝起こされて、「貴方にせっかくさようならを言って、私は綺麗な花畑に行ったのに、またここに戻ったの?(溜息)」とか言ってたりして笑わせてくれました。

どの方も、それから大体、3,4日~1週間くらいでお亡くなりになります。

そして、本当に不思議で、でも、微笑ましいと思うのが、皆さん、必ず、これ本当にほぼ必ずなのですが、一人じゃなくて、3人くらいで連れ立って逝かれるのです。これは比較的大きな医療施設だったから感じられたことなのかもしれません。

家庭スタイルの数人くらいの場所ではそれは無理でしょう。

私の頭の中では、その様が、アメリカだからなのか、何故かそれは舟ではなくてバスで、しかも、人数も3人くらいなので、工事現場にいくような小さめのマイクロバスで、考えてみればそんな私の発想はあまりにも風情が無く、亡くなる患者さんに申し訳ないと思うのですが、いつもそう思ってしまいます。

以前、ホスピスで入ってらっしゃった患者さんが、やはり「あ、そこに犬がいる~」とか、「男の子がいる」とか言って、その2日後くらいにお亡くなりになりました。家族の方が、「施設のケアが十分でなかったために亡くなった」と立腹されて大騒ぎでしたが、その患者さんは、そういったEnd-of-Life 特有とも言える言動があったことから、きっとその時期だったんじゃないのかな…と思われました。

しかしながら、ご家族の方達のそのような気持ちは十分理解できます。

看護師に向かって怒りまくる家族もいれば、静かに感謝の言葉を述べていかれる家族もいたり、本当にEnd-of-Life の形は様々です。どの家族も悲しいには違いないけど、でもやっぱり私はバスで仲間と楽しく出発するマイクロバスを想像していたいと思うのです。