■米国の産業看護師及び学校看護師の法的義務 #148

看護師の免許を取得すると、色々な場所での勤務が可能になります。

病院以外でも、透析センター、クリニック、がんセンター(クリニック)、内視鏡検査専門のセンター、乳がん検診センター、LTC(長期療養)、リハビリセンター等々、その他にも、勤務場所は多岐に渡ります。

その中に、産業看護師や、学校看護師(保険の先生みたいな)も含まれます。産業看護師 (occupational health nurse) や学校看護師 (school nurse) は、病院勤務に比べ、勤務時間の設定も、休みの日の設定も融通が利きやすいと想定されるので、お子さんがいらっしゃる方とかの選択肢として浮上してくる可能性もあるかと思います。

ここでは、少しだけですが、それに付随する、法的な義務みたいなものについて話してみたいと思います。

産業看護師 (occupational health nurse)

産業看護師という職業(ポジション)は、通常の看護師の歴史に比べ、比較的新しいと言えます。

主に企業内の勤務で、職務内容は、従業員の健康診断等の健康管理と、怪我などへの対応です。

看護師は、一般的には医師の下で働きますが、産業看護師のポジションは、主に医師不在の場面で働くことになるので、アセスメントや必要な検査など、自身の決断を迫られる場面が多く、ほぼ医師の代わり的に勤務することになります。が、医師の代わりになる、ということでは決してありません。

職場で起る事故は、労災になる場合がありますが、それも産業看護師のアセスメントや処置にかかってきたりしますので、責任重大です。産業看護師の職を得る場合は、事前に個人のLiability Insurance に絶対に入っておいたほうが安心です。

なので、大切なのは、勤務している施設や企業内の、ガイドラインやプロトコル、医師のスタンディング・オーダー(決まった事項に関して、事前に医師がOKを出しているオーダー)などがあることです。そしてそれを知っておくことが大切です。

産業看護師が、事故や怪我の処置の際に、この所内のガイドラインやプロトコルに従わなかった場合(悪意の有る無しに関わらず)、後に従業員が会社と看護師を相手取っての裁判になった場合、会社側が看護師を逆に訴えたりする場合もあります(ガイドラインに従っていなかった件で)。

病院勤務の看護師同様、病歴を含むアセスメントの内容を正確に記録(ドキュメント)に残すことが重要です。労災の裁判などに関わってきます。

こういう話を聞くと、正直、尻込みしちゃいますよね…。でも、事前に知っていたら、その都度、自分の行動に対してメタ認知できると思います。

個人的には、社内に看護師さんが1人常駐していたら、ちょっとしたことでクリニックに行く機会がなかなか持てずに悪化してしまう、とかそういう事が防げると思うので、助かるなあ、って思う人が多くいると思います。

学校看護師 (school nurse)

School Nurse は、Public nurse 又は Community nurse に含まれます。

学校勤務のいい所は、なんたって、長い夏休みや冬休み、春休みや秋休み、その他諸々の休みがついてくることです。本当に羨ましい。

また、勤務時間も、朝8時から午後も2時くらいまでで終われたり…。

学区によって、学区内の学校(幼・小・中・高)を掛け持ちだったり、一校に常駐だったり、いろいろです。

職務内容は、生徒の置き薬のチェック、アレルギーのチェック、体調が悪い生徒の対応、怪我対応、等々、いわゆる保健の先生ですね。

アレルギーがある生徒の置き薬には、エピペン等の注射もあって、アレルギー反応が起きた緊急時にはそれを使用することになる場合もあります。生死に関わるので、責任重大です。

また、子供の持病には、喘息の発作や1型糖尿病もあります。

喘息用のinhaler (吸入薬) がちゃんと置かれて無かった場合(事前チェックを怠っていた場合)や、低血糖の対応が遅かった場合等は、本当に危険なので、父兄の方との連携も必要です。こういう子供さんを持つ父兄の方々は、看護師よりも病気に詳しい場合がほとんどです。

日本の保健の先生は、保健室便り、とか、保健関係のお便り的な印刷物(昨今はメールでしょうか)を出してくれたりしたものですが、アメリカでそういったものを受け取ったことは一度もありません。出したら出したでいいのでしょうが、出さなきゃダメというものでも無いのでしょう。

学校勤務の看護師も、サッカーの試合だとか、フットボールの試合だとかで、放課後の怪我に立ち会ったりする機会もあると思います。脳震盪などは意識を失ったりもしますので、ホントに責任重大です。個人のLiability insurance に入っておくことを強くお勧めします。

個人の Liability Insurance は、年間$100ちょっとくらいの金額で、高額ではありませんし、入っておいて損はないと思います。

カナダでは、全ての看護師が強制加入と聞いています。

看護師の保険で、有名なのは、NSOと言って、Nurses Service Organization というところです。ウェブサイトは、こちらです。(私は回し者ではありませんが)

保険会社は勿論他にもあります。