■パワーポートへのアクセスのコツ #79

パワーポートは、がんの患者さんや白血病の患者さんに多く見られます。

利点は何といっても、皮膚の上にラインが出ていないこと。ラインが出ていないので、インフェクションのリスクも少なく、水泳なども可能になります。

状況的に、ラインを保持しなければいけない時は、それも可能です。小児の白血病の患者さんが家で化学治療をする場合は、頻度が高いため、その度に針を刺すのは酷なので、一旦アクセスしたらそのラインを一週間くらいキープする時も多いです。

その場合は、PICCラインと同じように、テガダームのフィルムドレッシングで覆います。

訪問看護(#77)のところで少しふれましたが、パワーポートへの針刺しは、可能な限り一発で決めたいですが、やはりミスも起こります。

そこで、本当にちょっとしたことなのでコツと言うほどのことでもないのですが、参考にしていただけたら嬉しいです。

パワーポートは、痩せている患者さんは、年齢に関わらず、ポートについているマーク(3つの∴印)が浮き出ていたりして、その場合は、その真ん中を目指せばいいわけで、とてもやりやすいです。

PowerPort® Implantable Port

画像は、Bards社のサイトから。ポット部分は、Tの横の、∴が入った三角が’それです。三つの点が指で確認できたらラッキー。

しかしながら、ちょっとその上に肉付きがある場合、目で見えないので、指で触って確認します。

① まず最初に、人差し指の腹で、∴を確認します。∴でない場合でも、ポートの中心を指の腹で確認します。

② 中指をちょっと曲げ気味にして、人差し指と背を合わせる感じで、人差し指の隣に置きます。

③ 人差し指を①の位置から指一本分、下にずらします。

そうすることで、ポートを人差し指と中指で挟んで固定できます。ポートは、皮膚の下で、動く場合があって、指でちゃんと固定しないと逃げてしまう時があります。このはさみ方だと、目指す場所がはっきりします。

目指す場所が決まったら、「1,2,3」で刺します。患者さんのほとんどは、この「1,2,3」があるといいみたいです。

図にすると、下のようになります。

ポートの中には、ゴムの仕切りがあって、ゴムの下に針の先端が入って初めてラインに到達できます。

なので、針を刺した時に、硬めのゴムをポートの底の部分と勘違いせず、そのゴムを突き刺す感覚を覚えるといいと思います。

また、何度も針を刺していると、皮膚に茶色い感じの針刺しマークがつく場合があります。

その場合は、もうそこしかないので、そこを目指します。でも、その患者さんが、最近パワーポートを入れなおしたとかいう場合も時々ありますので、患者さんの最近の記録は予め確認しておくことをお勧めします。そのマークは過去の物になっている場合もありますので…。

透析の患者さんなどは、腕に入れたAV Fistula (動静脈瘻)を保護するために、透析時の針を刺す場所をずらしたりするのが普通ですが、パワーポートの場合は、ピンポイントですので、マークがあったらもうその場所です。

針の長さの選択はとても重要です。子供が年齢を重ねるにつれて肉付きもよくなってくると、「ああ、もうこの針じゃ短いね」という時が来ますので、そういう体の変化に合わせて針を選ぶことが大切です。針が短いと、中のゴムを通過できなかったりしますので、針は全部入ってるのに、血も出てくるのに(ラインに)、なんだか出が悪い、みたいな時は、針が中途半端に入っている時だったりします。

針は、フーバー・ニードル(Huber needle)というL字に曲がった針を使用します。この微妙な針の曲がり方が、看護師を迷わせるのですが、刺さった際の針の先端が真っすぐになるように作られているので、あまりそこに惑わされる必要はないと思います。

採血は、各病院の規定もあると思いますが、基本的には、最初に生食フラッシュをして、10mlのシリンジで抜き出してそれを捨てて、次のシリンジで採ります。その後、また生食フラッシュをしてラインを綺麗にして、ヘパリンを入れて終了です。

通常のIVのラインとは、使用するヘパリンの濃度が違います。

以上は、全部Sterile field(無菌のエリア)で行います。

私は一回失敗した時、スランプに陥ってしまって(精神的に負けてた)、上のような押さえ方を上司に教わって、スランプから抜け出すことができました。

ほんのちょっとのことなんですが、誰かの参考になりますように。