Stagnating wound 慢性化して治癒過程が停滞した創傷

静脈性潰瘍で、小さいのになっかなか閉じてくれないwoundがある80代の患者さんがいます。

サイズ的にはすごく小さいです。0.6㎝x0.1cmというほとんど閉じる寸前のwoundなのに、これがなかなか閉じない。もう閉じるね、もう閉じるねといいながら、この2,3週間、動きが停滞しています。

この小ささなのに、小さいながら、抵抗しているかのように、微妙な変化を見せて、でも、閉じない。

医師が「なんでここから進まないんだ!」と言って、「よーし」みたいな感じで、「ガーゼ(をくれ)」と言いました。

創傷周りを乾いたガーゼでこすって刺激と共にデブリーメントすることにしました。閉じようとしている傷をこすってフレッシュにすると、一旦傷のサイズが大きくなるのですが、傷は綺麗になります。

患者はその瞬間、痛みで「きゃーっ!」という感じだったけど、10秒にも満たない時間だったので、「な、何?なんなの?」とびっくりしているうちに終わりました。

医療現場では、これからやる事を患者さんに説明して、相手の了解を取ることが必須とされていますが、それをすると、時に患者さんを事前に不安にさせてしまうことがあります。この医師は、あまりそういう決まり事みたいな事に拘らず、しゃしゃっとしてしまう人です。患者さんが「言ってくれたらよかったのに」とかブーブー言っても、「言ったらどうなるんだ。痛みが軽減するとでも言うのか」とか言って、全く気にしないタイプ。

さて、デブリーメント。

傷はフレッシュにちょっと血が出て、血小板 (platelets) が動き出します。そして、成長ホルモン (growth factor) とかも出てきて、wound healing のプロセスが新しく始まります。

そうです。デブリーメントの長所は、フレッシュスタートを狙えることです。

停滞していてやる気のない創床の組織を刺激して目を覚まさせてあげるみたいな感じです。ちなみに、ガーゼも「woven」のタイプが効果的です。外来には「woven」しか置いてないですけどね。

正直、これは男性ならではの仕事かな~と感じます。

私に同じ事は出来ないんじゃないかな、と思います。出来ないわけじゃないけど、ちょっとそこまでガガッとはできないかもしれない、と思います。

患者さんも「いや、もうびっくりした~」と言って、連れの方とその後大笑いしていました。