■訪問看護師の仕事の利点と気を付ける点 #77

これからもっともっと訪問看護の需要が伸びると思っています。

創傷がある患者さんは、内科的な状態が安定していると、創傷だけで入院しているわけにいかず、退院するのですが、その際、患者さんはほぼ100%「このWoundをどうしたらいいのか」となります。

でも、保険の関係上やスケジュール上、頻繁にクリニックに来られるわけでもなく、教えてもらえれば自分達で何とかできる、という患者さん+家族には教えて、でもそれを定期的にチェックしてくれる看護師も必要で、結果「退院するには訪問看護師が必要」となります。

というわけで、訪問看護師を抱えるエージェンシーはどこも手一杯の忙しさです。私が所属する小児専門の訪問看護の会社も先日、「もう看護師の数が間に合わないから(患者の受け入れを)断るしかない」と言っていました。

本題ですが、患者さんの家族から(特に小児の場合)「看護師を替えてもらえないか」とディレクターに連絡が入る場合が時々あります。

「もうこの看護師は送らないでほしい。他の看護師に替えて欲しい。」という要望です。

そうなると、ディレクターは、それが何故なのかを聞いて、ちゃんと教育するからとご家族を説得して看護師の変更を留まるか、または、それが妥当だと判断したら、ご家族の要望通りに変更して他の看護師に訪問してもらうことになります。

これは、必ずしもその看護師に落ち度があるというわけではなく、訪問時間が家族のスケジュールにどうしても合わない、等、理由はいろいろです。

ここでは、経験から、これは注意するべき、という点を挙げてみたいと思います。訪問看護の仕事に興味のある方の参考になったら嬉しいです。

その前に、訪問看護を仕事とする利点も同時に挙げてみたいと思います。

  • 需要がある。既に述べた通り、今後、もっともっと必要になる分野です。
  • 時間の融通が利く。週のうち一日しか働けない、一日のうち、11時から3時までしか働けない、朝一の仕事だけ欲しい、等という条件下でも看護師として働ける。
  • きちんと教育があるので、看護師として復帰したい方も可
  • キャリアとしてちゃんと認められる
  • 車のマイル分もちゃんと払ってもらえる。(1mileに付き約$0.5/10 mile の場所へは約$10の計算)
  • 副業としても可

訪問看護で気を付けること(特に小児訪問看護)

1)極力、時間に遅れない

小児看護の場合、家族内に他の子供達(兄弟)がいることが多く、親はその子達のスケジュールにも合わせないといけない。ので、看護師が来る時間に来なかったら、もう、他の子供の予定も組んでいるのに、気が気でなくなる。

子供が絡むと親は怒ります。ので、時間には極力遅れない。でも、前の患者さん宅で、意外なトラブルが発生する場合だってあります。そんな不可抗力にも対処できるよう、到着時間には最低30分のクッションを含めます。

2)針刺しは極力一回で決める

親は子供の横で看護師がやることを一部始終じーっと見ています。我が子に看護師の不手際で何かあったら一大事だからです。これはほぼどこの家でも同じです。

そして、どの子も針を刺されるのは、めっちゃ怖いようで、泣いて逃げ回ったり隠れたりします。それを毎回なだめて、怒って、押さえて、なんとか看護師の前に座らせないといけないお母さんの苦労は大変なものです。

そしてそこで針を刺すのに失敗したら、もう、お母さんも子供も… その後のリアクションは想像に易しです。。

腕からの採血や、パワーPICCからの採血は、絶対に一発で決める覚悟でやります。

「諸矢は無いと思え」です。

3)同僚看護師のしたことを悪く言わない

家族は、看護師の手技が、他の看護師とちょっとでも違ったら「先週来た看護師はそれはしなかったけど。どうして?」と聞いてきます。ここでその同僚看護師のしたであろうことを悪口的に言って自分を守ってはいけません。「そうですか、きっと彼女は〇〇の理由でそうしたと思う。」と彼女がしたことに対する肯定的な理由(rationale的な)を言ってあげて、自分のしたことに対しても同じにして家族に不安を抱かせない。

完全にアウトな内容だったら、自分のやったことでないにしても謝る、です。そしてディレクターに報告します。家族がエージェンシー全体に対して不信感を持つことは避けたいです。

4)靴を脱ぐ

「靴のままでもいいよ」とナイスに言ってくれる家庭は多いです。でも、「病院にも行く靴だから」とか「病院からの帰りの靴だから」言うと、ほぼ100%、「ああ、そうね。ありがとう。」と言われます。

特に、家には小さな子供(患者)がいるわけで、とても綺麗なカーペットの家もあって、そこをハイハイで遊んでいる赤ちゃん(兄弟・姉妹)もいます。

そして何より、小児の訪問看護で一番多いのが白血病なので、菌の持ち込みはできるだけ避けたいです。

靴のままでドスドス入って、そののお宅のお父さんを激怒させた看護師もいます。

板の床の家なら平気じゃない?という雰囲気もありますが、そうでもないです。

以前、板の床の家で「靴を脱いでくれてありがとう。ここはデイケア的に毎日子供が大勢くるから、毎日床を拭いて掃除してるの。」と言われた時があります。

なので「靴を脱ぐ」はもう鉄則だと思っています。

そして「替えの靴下常備」です。時々「うわ、やられた…」ってな家もあるので…。

5)携帯に極力出ない

常識でしょ?と思われるかもしれませんが、実際にいます。これは、病院でも患者さんや家族から出る苦情の一つで、現場での携帯使用は禁止、となっていますが、それでもやっぱりあります。

以前、2人連れで訪問した時も、一緒のもう一人の看護師がかかってきた携帯に出て、丁度その時、患者さんのお父さんが怒っていた時だったので、私も内心「今この状況で電話に出る?!」とびっくりしました。しかもその内容が、ハイテンション的な楽しげな内容で、すぐに切りはしたものの、その訪問でその看護師はスルー、って感じでした。(もう来なくていいです、という意味)

以上5つ挙げましたが、看護プログラムで先生に言われてことを思い出します。「看護はセンスとコモンセンスです」と言っていました。

センスというのは、先生曰く「こればっかりは学校で教えることはできない」だそうです(これは過去にドレスショップでも同じことを言われました。)

コモンセンスというのは、文字通り「常識」です。

靴を脱いだり、時間を守ったり、携帯を切ったり、同僚の悪口を言わない等、どれも常識の範囲内の事なのです。何も特別なことではありません。

だから、いかに「人として」常識的であるか、ということです。

(先生の言うこの場合のコモンセンスは、患者さんの具合が悪そうだな、とか、ラボの値が異常値だったら普通はすぐに医師に連絡するよね、とか、ベッドを高くしたままなら、普通に考えて危ないよね、みたいなそういう数々の「普通」ことです)

でもかくいう私も、じゃあ、できているのか、と言われたら答えに詰まります。

廊下を走っていつもCNAに怒られてたり、タイムカード押し忘れが「また」ありますよ、と怒られたり…

でも、患者さんに対する誠意が第一ですかね!自分もこれを書いて気持ちを改めようと思いました。