■外科医のタイプ #64

他の医師同様、外科医にもタイプがあって、高齢の患者さんの治療にはとにかくあくまで保守的なタイプと、身体の負担がそれほどでも無かったら、何歳だろうと前向きに治療を進めていくタイプ。

93歳男性の患者さん。#62の投稿で少し書いた患者さんです。同じ方です。

外科医にベッドサイドでのデブリーメントをお願いして、外科医も、朝に部屋にちょっと訪れて創傷を確認して「じゃ、今、ちょっと手術が入ってるから、その後で来る」と言ったきり何時間経っても現れない…。

クリニック(診療所)に患者さんがいるとか、緊急の手術とか、医師は何かと忙しいので、まあ、もう少し待ちますか…と待っていたのです。

ナース・ステーションに行ったら、担当看護師が「NPO」と書かれた札をその患者さんの部屋に貼ろうとしてて…びっくり!

NPOとは、予定している手術等のために、患者さんが一切の飲み食いを止められてる状態を言います。

「え? 部屋でWoundの表面をささっと削るだけだよ? なんでNPO?」と聞いたら、「え~?OR(手術室)でやるらしいよ。貴方が頼んだんでしょ?」との答え。

「いや、頼んだけど… でも頼んだのはそんなことじゃなくて、え、ええ~っ?!」と思ったけど、ま、いいや、外科医がそう判断したのなら、そういうことなんでしょう、と一旦帰宅して、今朝、患者さんをチェックしにいきました。

そしたら、な、な、なんと、、、あれから、担当医と外科医とで話し合って、「Phimosis(包茎)」の手術をしたのだそうです。

そして勿論、創傷のデブリーメントは、その手術のおまけ的な…。

聞くと、この患者さんは、最近になって、このPhimosisのお陰でその周辺のスキントラブルが連発して、病院外にあるこの担当医のオフィスを度々訪れていたとのこと。

この患者さんのケースは、Phimosisの中でも、「タイト」の上をいく「かなりタイト」なケースなのだそうで、リトラクション(わかりますでしょうか?)が困難なケースなのだそうです。なのだそうです、というか、そうでした、実際に。

でも、私はてっきり「今まで93年間、これで来てるんだし、赤い炎症も見えないし、本人も特に何も言ってないし、なんたって93歳だし!」と思っていたのですが、それは私の主観であるんですよね…。

医師的には、「93歳が何か?この先の何年かが過ごしやすいんだったら治すべきだろう」と言うことで、そうなんですよね。本当にその通りなんです。

ちらっと、退院後に他のもっと大きな病院で、改めて専門医に診てもらうかも、という話は確かに出ていました。

でも、退院する筈だったのに、外科医にデブリーメントをお願いしよう、となったものだから、外科医が「一応担当医と話を通してからじゃないと」となって、そしたら、じゃあ、これを機に、これも一緒に、となったようです。

でも、外科医によっては、高齢者にはとかく保守的な治療を勧めて、現状維持で行きたい先生もいます。むしろ、その方が多いのではないでしょうか。確かに、高齢の患者さんにとって手術は、身体的な負担が大きく、更には家族の意見もあって、そうすんなり手術を…とはならないのです。

が、この外科医は前に述べたように、「93歳が何か?」のタイプ。

そして結果的に、患者さんも患者さんの家族も、そして担当医師も担当看護師達も、とてもハッピーだったのです。勿論私も嬉しい。

医師もそうですが、貴方の家族が(お父様とか)93歳で、医師に包茎手術を勧められたら、どのように反応しますか?

私は、この件で、「主観で考えちゃいけないなぁ」と反省しました。