静脈性潰瘍の創床周りの肌の保護

静脈性の潰瘍になりやすい部位は、足の内側くるぶしの上あたりです。

そして、一旦、傷になってしまったら、治りにくい場所でもあります。

静脈性の潰瘍は、ドレイネージが出るので、そしてそれが下に垂れ流れて潰瘍の周りの肌がやられると、そのために潰瘍のサイズが簡単に大きくなってしまったりします。

そういうわけで、潰瘍周りの肌の保護はとても重要です。

肌の保護の仕方はいくつかあるので、一つのやり方にこだわらず、いくつか試してみると良いです。

(1)スキンバリアのみ

ドレイネージの量があまり多くなかったら、これで十分な場合が多いです。スキンバリアは、「Cavilon」か「Benzoin」で。どちらも私が愛用してるアイテムです。大切なのは、塗ったら、完全に空気乾燥で塗った箇所を乾かす、ということです。

(2)これでちょっと弱い場合は、ストーマ周りの保護と同じコンセプトで、ストマパウダーと一緒に、層にします。これは、傷の部分を目隠ししたら、スキンバリア+パウダー+スキンバリア+バウダー+スキンバリアと2層か3層にします。ストマ用語でパンケーキ(動詞的に使います)と言います。

パウダーは、パウダースノウみたいに、薄い膜になるように噴射して、「ダマ」にならないようにします。

(3)Calazimeのペーストを塗る。Calazimeのペーストは、CalamineとZinc Oxideがミックスされたもので、ドレッシング材でカバーできないような広範囲にわたる静脈性の潰瘍等に使用しますが、これを試してみても良いですが、効かない場合もあります。次のドレッシング交換まで日数が有る場合は、その間悪化してしまう可能性もあります。ドレッシング交換までそれほど長時間無い場合は試してみても良いかと思います。

(4)スキンバリアの後、フィルムドレッシングで保護する。これは、Wound VAC使用時に創床周りの肌を保護する目的でフィルムが貼られるのと同じ原理です。

これは、この度、患者さんに実際に使用しました。この患者さんには、ドレナージが多いので、Cavilonよりも強力なBenzoinを塗って、フィルムを貼りました。

ドレナージの量が多く、何日も持たないので、月曜日にクリニックに来てもらうことになっていましたが(今日は水曜日)、予約がキャンセルされていて、「ドレッシングを交換しないと悪化してしまうのにどうしたんだろう…」と心配して、MA(メディカルアシスタント)の子に、電話して聞いてもらえない?と頼んだら、「今日予約入ってるみたいなので、今日来るよ」とのこと。

患者さんがクリニックに訪れたので、見てみたら新しいドレッシング材が。あ、うちのじゃない…ということは誰かが交換してくれたんだ~。ああ、有難や~。どこのお方かわかりませんが感謝です。

「このドレッシング、隣の病院のだけど、誰か交換してくれたの?」と聞くと、心臓外科のドクターの予約が長引いて来れなかった。そこでドクターが交換してくれた、とのこと。看護師ではなくドクターがしてくれた、とのこと。

心臓の?医師が?ホントに? … ほんとかな。

まあ、いずれにせよ、あぁ、そんな素敵なドクターもいるのか…。と単純に感謝感謝です。

が、でも、その瞬間、自分が貼った肌の保護用のフィルムの事を思い出しました。どうだったんだろう!ちゃんと保護されていたのだろうか。見たかった~。

見たらフィルムは剥がされていて既に無くて(当たり前ですね)… あ、でも良かった、肌が良くなっている…。

そしたら患者さんが「ドクターが、肌の保護がちゃんとされててvery goodだ、って言ってたよ」と言ってくれました。

良かった~。嬉しい~。患者さんも嬉しそうだった。良かったよかった。