VACシステム トラブルシューティング(キャニスターの詰まり

■外来使用の3M/KCI社のNPWTシステム

■キャニスター

■詰まる原因

■詰まらないようにするには。製造元からのアドバイス2つ

■使用状況は監視されている

■外来使用の3M/KCI社のNPWTシステム

Wound VACのシステムを病院で使用する場合、大概の場合はベッドの足元の方に引っ掛けますが、外来で使用する場合は、KCI社の場合、暗黙の了解で、「ActiVAC」というシステムに決まっています。

ActiVAC system: image from Acelity.com 外来使用はこれ。

ActiVAC system: image from Acelity.com

Negative Pressure Wound Therapy (NPWT)のシステムを提供している会社は、KCI社だけではありませんが、市場シェアが大きい分、NPWT=KCIのVACシステム、という印象です。

違う会社のを使用するのも勿論ありですが、緊急で最寄りのERなどの行った場合、「これ何?アプライしてくれたクリニックに戻ってやってもらって」となる可能性も、現実問題、無きにしもあらず…なのです。

キャニスターとドレッシング材、そしてシステムの使用は、保険摘要です。事前に申請し、保険会社のOKが出ないと、KCI社はシステムを送ってきてくれません。なので、患者さんの手元に届いたらそれは保険摘要の手続きが済んでいるということです。クリニック等で始める場合は、最初のパッケージの送り先がクリニックになる場合が殆どです。

■キャニスター

外来用システムのキャニスターは、デバイスの形状に合わせて微妙にカーブがついており、一見、下のVAC Freedomのシステムのキャニスターに似ていますが、形が違うので互換性はないです。VAC Freedomは、小ぶりで持ち運びにも便利なので、リハビリのフロア等に向いています。リハビリ中もこれと一緒に、という感じです。

VAC Freedom system: image from Acelity.com 小ぶりで持ち運びに便利なので、リハビリフロア等での使用に向いています。

VAC Freedom system: image from Acelity.com

キャニスターは、患者さんでも簡単に取り外し・取り付け可能なので、ドレイネイジが多くて、臭いが気になる場合は、新しいのにご自分で替えてもらって全く構いません。出来れば、週に三回のドレッシング材の交換の際に、看護師にドレイネイジをアセスメントしてもらえればいいですが、患者さんが臭いに耐えられない、とか、外出するので新しいのがいい、とかいう場合は、替えてもらって構いません。そんなことで精神的苦痛を増す必要は全くありません。

ドレイネイジが少ない場合、キャニスターを交換したくなければ、又は交換できるキャニスターが手元に無い場合は、同じのを引き続き使用することも可能ですが、替えるとアセスメントは簡単になります。複数人でケアをしている場合は、キャニスターに装着の日付をシャーピーで記入しておくといいです。

■詰まる原因

さて、このキャニスターが、写真のように詰まってしまう場合があります。その際、システムの吸いが悪いとかではなく、0%の吸い上げになってしまったり(動いてないのと同じ)します。

そうなると、ドレッシング材がPuffyな感じになって、2時間以上そのままだと逆にインフェクションになるリスクが高まります。

2時間以上トラブルシューティングが出来ないのが明確な場合には、ドレッシング材を全部外して、患部にとりあえずの、Normal Salineの「wet-to-dry」のガーゼをアプライします。家にNormal Salineが無い場合は、ボトルの水でも大丈夫です。とりあえず、ですのでね。そして、なるべく早急にトラブルシューティングをします。

この作業は、よっぽど患者さんや患者さんの家族がハンディでない限り、看護師がやることになります。

キャニスターの中には、白い粉のようなものが入ったパッケージが予め入っています。

「Isolyser gel」と言って、液状のドレイネージをゲル状に変えてくれます。ドレイネージは臭いがあるので、このゲルが臭いを抑える役目をしてくれます。キャニスターは、どこからも漏れないような造りになってはいますが、ドレイネージが多いと、やはりそれなりに臭うので、高校生のしかも女の子は特に気にします。NPWT使用時に気になるのは、音とかではなく、この「臭い」なのです。学校に絶対に行きたくないのも、痛みや音じゃなくて、この臭いです。

キャニスターが詰まる場合、多くの場合、このゲル状になったドレイネージがキャニスターの入り口部分に詰まってしまうことが原因です。

■詰まらないようにするには

外来の患者さんは、普通の生活をしているので、専用のバッグにシステムを入れて、持ち歩きます。テーブルに座っていたり、ソファに座っていたり、バッグを肩にかけて歩いていたりします。

なので、バッグの中のキャニスターの位置が割と大切です。

KCI社からのTIPは、2つ。

1.バッグに入れる際、キャニスター側を先に入れる。するとON/OFFボタンがきちんと小窓に出るように入ります。でも、感覚としてどうしてもキャニスターを上に入れる傾向があります。これは、システムのデザインを改善したら、問題が起きる頻度が下がるのに…と誰もが思うでしょう。

2.システムを常に下に置くようにして、出来るだけ重力に逆らわないようにする。椅子やソファに座る場合は、床に置くとか、そのようにするとシステムもその分スムーズに動くようです。

■使用状況は監視されている

NPWTは、高額な治療です。医療費の無駄を防ぐためにも、患者さんにはきちんと使用していただいて、きちんと治ってもらう必要があります。きちんと使用せず、その後、complicationを起こして更なる治療を必要とすると、更なる医療費の負担(税金からです)が発生します。

というわけで、NPWTのシステム内には、使用時間を監視する仕組みが組み込まれています。最近は、RTM (Remote Therapy Monitoring) システムというユニット付きのデバイスが、大体デフォルトで出されるようです。

2時間以上、きちんと稼働していないと、インフェクションに発展しますので、きちんとトラブルシューティングをする必要があります。

先日外来を訪れた患者さんは、Wound VACをつけていましたが、デバイスは止まっていました。いつから止まっていたのかの質問には「わからない」とのことでした。隣の病院でやったとのことだったので、医師の名前を聞いても「わからない」とのこと。

しょうがないので、ドレッシング材を外したら、悪臭がして、患部の状態が悪かったため、この患者さんは、隣の病院に再入院となりました。