皮膚移植のドナー・サイト

皮膚の移植は非常に日常茶飯事的な多さで行われます。最近、トラウマ指定病院に研修で行く機会があり、そこでは、ほぼ毎週のように交通事故後の皮膚移植手術があります。(事故の多くは、バイク事故です。バイクに乗られる方、本当に気をつけてね!)

皮膚の移植が必要な部位の多くは膝下で、その場合、皮膚を提供する部位は同じ側(手術中、同じ側の方がやり易いに決まってる)の太腿となる場合がほとんどです。提供される部位がレシピエント・サイト(recipient site)なのに対し、皮膚を提供する部位をドナー・サイト(Donor site)と呼びます。

ステージ2の褥瘡がステージ3の褥瘡より痛いのと同じように、また、第三度の熱傷より第二度の熱傷の方が痛いのと同じように、ドナー・サイトの痛みはレシピエント・サイトに比べ、痛みがかなりあります。

この痛みは、勿論皆さん一律ではなく、それは患者さん個人個人の痛みに対するしきい値のせいだけではなく、皮膚を切り取る際に、その皮膚の移植先の状態に合わせて厚さを調整するためで、ちょっと深く切り取った際は、やはり痛みもその分大きくなります。

■ 痛みのコントロール

看護の基本として、ドレッシング材交換時は、患者さんには事前に痛み止めをあげるのが通常ですが、飲み薬だけでは、ドレッシング材交換時(剥がす時や、パッキング時が痛い)の痛みは軽減されません。痛いのはその割と瞬間だけなので、私個人的には、無駄なNarcoticとかあげなくても…と思いますが、痛みには対しては、錠剤でも何でも、できる限りきちんと対応する必要があります。

傷面の痛みには、やはりトピカルなケア(ライドケイン軟膏を塗るとか、NPWTならシリコン製のコンタクトレイヤードレッシング材を使用するなど)が効果的です。

傷面の面積が広い場合は、1%のライドケイン(1% Lidocaine ointment)軟膏を塗ってあげると(医師の処方のもと)痛みが軽減されます。(Kerlixの包帯で保護)

■ ドナーサイトからのExudateには

多くの場合、ドナー・サイトに対するドレッシング材は、フォームドレッシング、または、フォームドレッシング+Agまたは、アルジネイト+Ag(Silver Alginate)です。

Silver nitrateが止血に使用されるのと同様、Agのフォームドレッシングを剥がすと、血が黒く凝固してて、一瞬「え…?これっていいの?」と思ってしまいます。通常の銀無しのアルジネイト・ドレッシング材の方が一律でピンク色でいいんじゃないの?と思うでしょうが、傷口の感染予防的にも、最初は医師のオーダー通り、Agで行った方が安全です。ドナー・サイトにゼロフォームを使われることは稀です。

■ 皮膚の再生が終わったら、そこはまた皮膚提供部位になれる?

ドナー・サイトは、真皮(Dermis)の半分の薄さしか取っていませんので、皮膚が再生します。ドナー・サイトの皮膚は、何事も無ければ約2週間程で再生されます。そして、そこはまた皮膚の移植の提供部位として使用可能です。