■Lamb’s Wool (子羊の毛)#83

以前創傷があった12歳(現在13歳)が両親と共にフォローアップでクリニックを訪れました。

左右の胸の間に出来た創傷が閉じたには閉じたのですが、辺と辺が変にくっついて、ちょっと…な仕上がりになってしまっていました。女の子の胸なのに…。

だからこそ、私は訪問看護の大切さを主張したいです。

一週間に一回の訪問でいろいろ見てあげられるのですし、家庭の中でもし家族が困っている事とかあったら聞いてあげられるので、付けてあげられたら良かったです。

こういう結果になってしまうことを防げるし、この不安げな顔の両親の不安を取り除いてあげることができます。

「ほっとけば治るよ」とか「子供だしねえ。子供の訪問看護なんてあるの?」とか言われたりすることが多いのですが、この患者さんの場合は、そういう理由じゃなく、小児の訪問看護のエージェンシーに「人手が足りない」という理由で断られたのでした。そして、結局ガーゼのパッキングによる治療になったので、家族が出来るから訪問看護師は不要、となりました。。

でも、まあ、何はともあれ、傷は閉じたということで…。

しかしながら、入って来た外科医が「あれ、ラッシュ(発疹)があるね。痒い?」と患者さんに聞いていて…

私の目には見えていないので、え?!どこ?ラッシュって… と、またまた自分の未熟さか、と思いました。

患者さんは痒くはないというし、赤さも、そして私の目にはラッシュは見えていないのでした…。

そして、外科医が「そういうのにはlamb’s woolがいいんだよ。知ってる?ラムズ・ウール」。

患者も両親も「何それ?」という顔で…。

私も内心「え?!」の反応をしてしまっていたかと思います。

でも、ここで私が「え?!」の反応をしてしまったら、患者・家族一同を更なる不安に陥れてしまうので、そのまま聞いていたら、外科医曰く、それが、モイスチャーからくるラッシュ(発疹)を防ぐとのこと。

そ、そうなのか?! ほんとに?!

という気持ちを抑えて聞いていたら、外科医は、ウォールマートで売ってるよ、の説明を始めていて。。。。。

聞いてる患者・家族一同の顔は固まったまま。。。。。

たとえ、たとえ、百歩譲って、それがラッシュに効くのだとしても、この遊び盛りの13歳がブラの下にラムズ・ウールを挟んで、ボーイフレンドと一緒に出かけて行くと思いますか?って話…。

ラムズ・ウールは、足の指と指の間のプレッシャーを取り除くのに主に使われていて、でも施設では、プレッシャーを与えないような靴や室内履きなどを履いてもらうので、どの人も、そのような物を必要としないのです。

でも、前任者がいた時にどこかから仕入れたと思われるラムズ・ウールがオフィスの棚のどこかに置いてあったのは知っていました。

そこで、そのクリニックの患者さんに「サンプルあげるから、それ先に試して」と言ったら、一同ホッとした顔。

医師から言われたら、クリニックの帰り、寄って買っていくのか、とちゃんと真面目に思っていたのはわかっていたし、そんな気持ちにさせていることが気の毒でした。

医師が何か言ってる時は、患者さんにとって、その瞬間はほとんど、医師はイエス・キリストと同じかそれよりも上のポジション…。

ラムズ・ウールは、本物と、人工のがあって、本物は、動物性故、人によってはアレルギー反応を起こしたり、湿気を吸って更なる湿気になっちゃったりします。

足の指と指の間が痛い人は、本物じゃないやつのほうが湿気にも強く、プレッシャー予防にもそっちがいいかと思います。フカフカしてて、痛みが軽減されます。

サンプルを持ってきて、「これ、使ってみて。動物性だから、痒くなったら使うの止めてね。好きだったらお店で買えばいいし(パッケージの写真を携帯で撮ってもらって)、嫌だったら、捨てていいよ。(私には見えないけど)すっごくラッシュが悪化したらまた来てね」と言って、ブラの下に挟めてもらって帰りました。

挟める時、一瞬「え…?」って噴き出してたので、私は内心「ほら~。この13歳がこんなものを使うわけないっつの」と確信したのでした。

でも、両親はニコニコして両手で握手して帰ったから、ま、いいや、ということにします。棚の肥やしが役に立って良かったです。

それにしても、ラムズ・ウールがラッシュに効くって、文献も探せないし、すごく気になります。