リハビリのフロアには、必ずPT／OTがいます。Physical Therapist(理学療法士)とOccupational Therapist(作業療法士)です。
リハビリだろうが長期だろうが、患者さんの部屋に入ると、いろいろ助けてしまうのが看護師の習性といいますか、自分の習性といいますか、なので、患者さんが快適なように、あれこれ手を出してしまいます。
患者さんのドレッシング材を替えていたら、PTが「悪いけど私はもう戻らないといけないから、ドレッシング交換が終わったら、（患者さんに）ベッドに戻ってもらってくれる？「自力で」。助けないでね。」と念を押されました。
「オッケー。」と返事をして、さて、いざ、椅子からベッドに戻ってもらおうとしたのですが、「あ、あぁ、でも助けちゃいけない」と、つい出てしまう手を引っ込めるのがこんなにも大変だなんて、我ながらびっくり。
いかに、今まで安易に手助けをしていたのか、という気持ち。
PTと一緒だと、患者さんがみるみる動ける人になるんですよね。本当にびっくりします。
以前は、PTにもwound careのスペシャリストが多くいて（今もいます）、傾向としては、段々看護師側にその比重がシフトしてきている、と聞きましたが、PTも創傷ケアに関していろいろ知識があって、教わることも多いです。
例えば、electrical stimulation (電流によって、創傷部分の毛細血管の分布密度を上げる）などは、看護師ではなくて、通常PTがするもので、そう言った意味でも、PTとは連携を保ちながら仕事をしていくことが多いです。
そして、今週は驚きのOT力を見たのでした。
交通事故で両足が複雑骨折してしまい、キャストと金具のために、下半身が硬直して動かなくなってしまったという23歳の男性が入院して来られました。
下半身は不随ではないようなのですが、手術を受けた遠方の病院から家に退院してきて、External fixator（骨に器具が固定されている状態）が片方の足に、片方の足はキャスト（ギプス）で固定されたままの状態で、６週間動かずに家にいたようで（PT/OT無し）、そのうち足の感覚が無くなってしまった、とのことです。
外科の医師達は、通常、他の人の術後を引き継くのをためらうので、彼は手術を受けた病院へ戻ることを勧められましたが、家族と患者さんが、不信感からそれを拒否してうちの病院に入院したいと言って来られたようでした。
直接の入院理由は、pulmonary embolism (
前置きが長くなりましたが、そういうわけで、彼は、身体も硬直していて、痛みもあって、急な事故で突然車椅子生活になったので、仕事も交友関係も突然崩れて、精神的なダメージが大きかったと見えて、機嫌も悪いし、ちょっとしたことで怒るし半泣きだし、看護する側も、腫れ物に触るような感じでした。
そして、リハビリのフロアに移って2日目。
OTがやってきて、「さあ、今日はシャワーをしましょう。」と準備し出しました。
彼は６週間の間、シャワーを一度もしていなかったのでした。
彼は最初すごくびっくりして、「シャワーなんて無理。嫌だ」と断ったようですが、OTにピシッと「貴方はこのまま、一生シャワーしないつもり？一生そうやって泣いてるつもり？違うよね？今日のゴールはシャワーです。」と言われて、言われるままにシャワー室に。
シャワー室で、生まれて初めて、その状態でシャワーするわけなので、いろいろあったのでしょう。私はシャワー室には入りませんでしたが、創傷があったので、ちょっとチェックしにシャワー前にちらっと部屋に行った感じです。
シャワー後に、ドレッシング材を替えに行ったら、もう顔が…怒りと痛みと疲労が全部混じったような複雑な顔をしていました。
が、若いってすごいな～。OTってすごいな～。
2回目のシャワーは、かなりスムーズに事が運んだようで、直後に部屋に行ったら、平常心、って感じでした。OT曰く、「彼はほとんど一人でシャワーしたよ」と。
そして、3回目のシャワーは、もう全て自分で！
そして彼は、この４、５日で、見た目も、全く別人のようになりました。
こんな短期間で人はここまで変われるの？というくらい。
顔もパーッと明るくなってて、ガールフレンドと笑いながら携帯で喋ってて、車椅子で庭に出て、リハビリでPT/OTをしてからです。
PT/OTって本当に凄い。
訪れたお母さんも、「本当に別人よね。すごく嬉しい。」と喜んでいて、私まで嬉しくなりました。
先日、テレビ番組で乙武さんが義足で歩く試みをしているのを見ました。
PTがついた時から、状況が変わって、というようなことを言っていて、PTってすごいな～とそこでも思いました。