サンティル軟膏(Collagenase Santyl Ointment)

■サンティル使用の際の注意

■Zinc

■pHと他商品とのコンフリクト

サンティル(Santyl Collagenase Ointment)は、市場で唯一、コラーゲン分解酵素の働きでWound bedにある壊死細胞を取り除いてくれる軟膏です。

■サンティル使用の際の注意点

Santyl使用の際には、2,3注意点があります。

Santylのㇾプに口酸っぱく言われていたことがあります。それは次の二つです。

① Santylは、Moist environment(湿潤環境)にしてあげないとActivateされない、ということ。

Activate されなかったら、$250の軟膏も$4のワセリン軟膏も同じです。レプの方曰く、Santylは、activateされたなかったら、ただのPetroleum jellyです。

だから、創傷が比較的ドライな場合は、生食水+ガーゼ等でモイストにしてあげなければいけません。

何年か前は、Smith&Nephew社から出ているどんな説明にも、そのような記載が無かったのですが、最近ウェブサイトがアップデートされました。私自身もその後ちょっと学んで、このブログ内容をアップデートしています(笑)。じゃないと、Smith&Nephew社さんに対してフェアじゃないですしね!。

② Topical Bacitracin ointment (抗生物質の軟膏)等を一緒に使用する場合は、抗生物質の軟膏を上に、サンティルを下(創傷に直)にレイヤーで置くように言われました。

抗生物質エージェントがパウダー状の場合は、パウダーが下です。

私の職場にあるのは軟膏のみです。TopicalのBacitracinを一緒に使用すると、Bacitracin軟膏にもPetroleum Jellyが含まれるので、皮膚の上に結構な量のPetroleum Jellyが載ってしまうことになります。一緒に使用することは、あまりありません。

■Zinc

更に、Smithi&Nephew社の説明によると、サンティルは、Zincがあって初めてActivateされる、とあります。コラーゲンの分解酵素であるMMPが、Zincに依存するものであることが理由かと思います。ほとんどのMMPには、Zincと接合するサイトを持っています。

■pHと他商品とのコンフリクト

一般の酵素の働きと同じように、酵素は特定のacid-baseのバランスの範囲内で、また、体内と同じような温度下で、効力を発揮することができます。Santylに最適なpHの範囲は6~8とされています(Santylのパンフレット)。

Dakin’s solutionは、pHが比較的高く、pH=~約10とされています(Wound Management & Prevention, 2018) が、レプ曰く、Dakin’s solutionとのコンフリクトは無い、との説明でした。それは、Santylのパンフレットにも記載されています(SantylのパンフレットのP.8)。Wound careにおいて、これは助かります。Salineではなく、Dakin’s solutionを一緒に使用することで、infectionを抑えられるからです。

SilverやAcid solution、またiodineは、コンフリクトがあるので、一緒に使用することはできません。併用すると、ヘビーメタルイオンと反応して、コラーゲン分解酵素の働きが妨げられるようです。(SantylのパンフレットのP.8)(Collagenase Santyl FAQ

サンティルを処方された患者さんのケースが2件ありました。

患者さんは、外来のクリニックで、PCP(主治医)からのReferral でした。最近、近隣の病院に10日間程入院していて、たぶんその前からだと思うのですが、踵に直径3.5㎝の褥瘡がありました。褥瘡は、80%くらい黒いエスカーで覆われている状態でした。

医師が来て「サンティルでいこう」と言いました。サンティルは、このようなエスカーが剥がれてくるのを促進してくれます。

しかしながら、外来のサンティル使用は難しいです。褥瘡、患者、家族のコンビネーションによっては、とても不向きな場合があります。特に、患者さんの家族がケアをしなければならない場合は、説明をしてもなかなか出来ません。

その翌週に来られた際、一週間前と全く変わっていませんでした。そうなんです。そんなに短期間で結果が出るものじゃないんです。酵素の働きにはその都度限界があるし、時間がかかるのです。その週は、違う医師が担当されていて、シャープデブリーメントをしよう、ということになりました。シャープデブリーメントは手術室で行われました。

2件目は、Long-Term Care の患者さんです。Soft-tissue infectionです。Cellulitisの一歩手前です。この状態はサンティルを使っている場合ではなく、IVの抗生物質をお願い、と思う段階なんですが、オーダーは抗生物質の錠剤(Oral)+サンティルでした。サンティル自体が悪いわけじゃないです。単に、この創傷+インフェクション (gram(-) rod) の状態は、サンティルの段階を超えています。Radiologyのオーダーをお願いしました。

この件では、フロアのナースによると、Long-Term Careを扱っているPharmacyから電話があって、保険のカバーが出来ないと言ってきたようです。結局、使用不可となりました。

サンティルは市場唯一のコラーゲン分解酵素の商品であるのに、実際は、こんなふうに使用にバリアがある悩ましい商品なのです。

ko

Reference
Smith & Nephew Inc. (2014). Product Monograph Santyl ointment: topical enzymatic debriding agent. Retrieved from: https://pdf.hres.ca/dpd_pm/00028617.PDF
Smith & Nephew Inc. (2016). Collagenase Santyl – collagenase Santyl ointment. Retrieved from: https://dailymed.nlm.nih.gov/dailymed/fda/fdaDrugXsl.cfm?setid=6b6fbfc6-98fa-46aa-88ef-ab00fbb08ffd&type=display