外来の患者さんと看護助手から、次のような物に関して質問がありましたので、書いてみたいと思います。
- ドーナツ型のクッション
- カットアウト(cutout)クッション
- Doveの固形石鹸
- かかと保護用フォームブーツ(Foam Boots)
- 三角ウェッジ (foam wedges)
ドーナツ型クッション
尾てい骨部分 (Coccyx)に褥瘡がある車椅子の患者さんが、ケアギバーさんと一緒に外来に来られました。「ケアギバーさんからのクリスマスプレゼント」という柔らかそうなドーナツ型クッションに座られていました。ケアギバーさんが横で満面の笑みで立っていましたが、患者さんが「これってどうなの?」と聞いてこられて…。
「こんなに柔らかそうなのに何がいけないの?」と不満そうなケアギバーさん…。
ドーナツ型のクッションは、褥瘡用にはNGとなっています。理由は、血液の流れを悪くする可能性があるからです。リンパの流れも悪くする可能性があるから、とも言われます。
でも、本当に柔らかめのクッションでした。まあ、そんなにギスギスしなくても、時々使う分には問題ないんじゃないでしょうか。くらいで終わりました。
余談ですが、今日ドラッグストアに子供の処方箋を貰いに行った際に、並んだ列の横の棚にドーナツ型クッションが置かれていたのを見たのです。上記のケアギバーさんのクリスマスプレゼントとは程遠い、ゴム製の(苦笑)。でも、説明部分には「pressure release」と書かれているし、褥瘡にいいよね、と読めてしまいます。そんな感じで、家で使用している人は多いんじゃないかな~、と思った次第です。
カットアウト(cutout)クッション
カットアウト(切り抜き)クッションは、5~6㎝の高さの四角いフォームクッションで、尾てい骨部分が切りぬかれていて、椅子に座った際、その部分に圧がかからないようになっています。
カットアウトクッションは、主に術後の患者さん用で、厳密には褥瘡用ではないようです。褥瘡用にはエッジのない形での減圧デザインのクッションが各種出ていてそちらを使用します。
とは言っても、すぐに回復するような軽い褥瘡の患者さんの車椅子用のクッションに時々使用しています。すぐに回復すると思われる褥瘡なら短期的なカットアウトクッションの使用で対応できる場合も多いからです。カットアウトクッションは、ROHOクッションのような褥瘡用クッションに比べ低価格で、1つ$20-30で手に入るので、常備しています。カスタムクッションを注文する際にも、到着までの間にカットアウトクッションを使用したりもします。
Doveの固形石鹸
Doveの石鹸は、グロセリーストア等のお店で売られているバー石鹸(固形石鹸)の中でも比較的酸性に近い石鹸です。pHは5~6くらいです。例えばZestなどの石鹸は、pHが10くらいで、すごくアルカリ性よりです。若い男性などにはZestでも全然いいと思いますが、高齢者にはやっぱりどちらかと言うとDoveでしょう。というわけで、Doveは悪くないと思います。思いますが、ちなみに医療施設では「pH Balanced」と書かれた液体Body Soapが使用されています。
ところで、Doveの石鹸もZestの石鹸も、正直、使ってみた感じは、その差はあんまりわかりませんが…きっと私の鈍感力が高いせいでしょう。と言うのも、たまたま患者さん用に買ってみたantimicrobialの石鹸がZestで、それを自分でも使ってみたのです、最近。香りもよくて、そんな悪くなかったです(笑)。どちらかというと、好きなくらい。まあ、石鹸がantimicorobialである必要はなく、その石鹸は体中がバクテリアでskin lesionが出ていた患者さんに用に買ってみました。もちろん普通のZestも売っています。
お店の石鹸売り場は、pH順とか、対象年代順とか、石鹸をそんな風に並べて欲しいなあ、と時々思います。
Update (10/30/22): Doveの石鹸はpH 7.3で、CetafilがpH 6.4のようです。(Fitzpatrick, et al., 2018)
かかと保護用フォームブーツ(Foam Boots) とオフローディング(Offloading)
かかとに褥瘡が出来ると、治るのに非常に時間がかかります。なのでかかとは死守、なのですが、それはなかなかデフォルトにならないようです。特別にオーダーを出さなければ、悲しいかな、かかとは全然保護されない状態になっています。
というわけで、かかとを保護するためのフォームブーツというものがあるのですが、比較的頭の(又は意識の)しっかりした患者さんは使いたがりません。それはわかります。何故なら自分もあんまり使用したくないからです。夜にこんなブーツ履いて寝るなんて嫌ですよ…。きっと貴方も嫌だと思う…。
かかとがオフローディングされるのがメインの目的なので、フォームブーツが嫌な方は枕等でオフローディングにされてさえいればいいので、フォームブーツに固執する必要はありません。逆に、フォームブーツを履いて枕の上に載せられている足を見ると、意味がわかっていない可能性もあるかな、と思います。
(オフローディングというのは、かかとの下に何も無い状態です。)
三角ウェッジ (foam wedges)
駄目です。どう見ても硬いじゃないですか…。
それも駄目。何故そうまでしてウェッジでオフローディングという考えに固執するのかわかりませんが、ウェッジの目的はオフローディングではないので…。枕があるならそれを使って下さい、という感じでしょうか。
あと、一枚の枕カバーに枕を二つ入れるのも止めて下さいね。(圧アップ)
あと、枕を二つ折りにして高くするのも止めて下さいね。(圧アップ)
まとめ
- ドーナツ型のクッション: 褥瘡には使用しません。
- カットアウト(cutout)クッション:褥瘡用じゃないとはされていますが、褥瘡が尾てい骨部分に有る場合は無いよりはいいです。
- Doveの固形石鹸:悪くはないですが、肌の乾燥はその他の要因も関係します。入浴後は保湿クリームなどを塗って肌の乾燥を防ぐようにします。
- かかと保護用フォームブーツ(Foam Boots):オフローディングされていることが重要なので、枕でも可です。本人が嫌がる場合は強要しないで下さいね。
- 三角ウェッジ (foam wedges):踵のオフローディングには使用しません。体を横向きに保ったりする際に使用します。本人が嫌がる場合は気付いてあげて下さい。体が動かないように固定されているため、虐待のようになってしまう可能性もあります。
Reference
Fitzpatrick, J. E., High, W. A., & Kyle, W. L. (2018). Urgent care dermatology: Symptom-based Diagnosis. ELSEVIER, Philadelphia, PA.