■その創傷にその鎮痛剤は適当? #176

去年あたりから、うちの外来のクリニックには、痛みの専門医がいて、痛みのある患者さんは、ささっとそちらへ回されます。

最近は、鎮痛剤の処方、特にオピオイド系の鎮痛剤の処方については、チェックが厳しいんだよね、と行って、医師は、特にwound careを診てくれる外科医は、痛み止めの処方はそちらでね、と自分は関わりません。

昨日、外来に、足の甲に深目のトラウマwound (ぶつけた結果の裂傷とかそういう系の) が出来てしまった患者さんがフォローアップで来て、その際、「痛みはありますか?」と聞いたら「No」と答えました。

もうサイズも大分小さくなって、浅くなってきて、それほど高齢の方でもないし、このまま順調に治るだろうから、そんなに心配しなくていいような患者さんでした。痛みもそれほどあるようにも見えないようでしたので、痛みがNOでも、まあ、そうでしょうね、という感じ。

がしかし、その後、独り言のように、ボソッと「痛みは無いけど、痛み止めは貰ってるから飲むけどね」と言いました。

え⁈ あ、薬を飲んでるから痛くないってそういうこと?飲んでないと痛むの?と聞いたら「さあ、わからない」とのこと。

薬は何?と聞くと「タイロノール4」ということでした。

タイロノール(Tylenol)は、アメリカでは、ジェネリック名をアセタミノフェン (acetaminophen) と言います。ヨーロッパ―ではまた違う名前があります。

医療施設では、Tylenolは、痛みの他に、熱がある場合にも使用されるので、痛みがある場合用と、そして熱が出た場合用とで別々のオーダーが出される場合が多いです。通常は「PRN=as needed」で出されます。

一般的にも、市中のドラッグストアやグロセリーストアの棚に置かれているOTC (over the counter)の鎮痛剤で、ごく普通の痛み止めです。

が、これに、2、とか、3とか4とかつくと違います。

2,3,4の数字が後ろに付くと、それはTylenolにコデイン (codeine)というオピオイド(麻薬性鎮痛剤)が合体した薬です。結果、オピオイド扱い(扱いと言うか、もともとオピオイドですしね) になります。

コデインだけでモルヒネみたいに痛みに効くのなら、何故にタイロノールと合体を?と思いますが、その理由は、合体すると鎮痛作用の効率がいいから、ということのようです。(コデインだけの錠剤も存在はします。)

コデイン (codeine)は、モルヒネ (morphine) と同じような鎮痛作用の他、咳を沈めたりする効果があります。なので、使用時は、他の鎮痛剤使用時と同様に、呼吸数に気を付ける必要があります。 呼吸数は、通常一分間に16~20(大人)、15以下だとちょっと少なくて、12以下になったら危険です。10を切って意識もあれ?となったら速攻ERに行きましょう。

後ろに付いている数字は、それぞれ、次のようになります。

2=codeine 15 mg

3 = codeine 30 mg

4 = codeine 60 mg

これが、acetaminophen 300 mgに合わさります。ちなみに、お店で売られている「Regular strength のTylenol」は丸い錠剤一錠が325mgです。

そして、ニックネーム的に、タイロノール#2、タイロノール#3、そしてタイロノール#4と呼ばれます。(#=ナンバー)

私は個人的に、この「2」がついたのを処方されている患者さんには会ったことが無く、多くの人は、「3」です。

でも、この患者さんは、その上を行く「4」です。この状態に、何故に4?と思いましたが…以前は非常に痛かったのかもしれません。でも、少なくとも今はもう不要なのでは…?と思いました。

一応外科医もそれは承知ですが、あまり言及してはくれませんでした。外科医によっては「もう飲む必要無いよ」とはっきり言ってくれる先生もいます。

この患者さんは、飲まない場合の痛みの程度はよくわからないが、とりあえず、手元にあるから飲んでる…ということ…。

この手の鎮痛剤は、Refillも厳しいので、「Refill=0」になっている筈なので、次の痛みの専門医との予約時に必要ならまた処方される筈です。不要なら処方無ということになります。が、この痛みの専門医は、患者さんの痛みの箇所を見たり触ったりしないで処方することで有名です。

痛みは患者さんの主観によるものなので、見ても見なくても、患者さんが痛いと言えばどんなに小さいwoundでも痛いということになって、処方されるということでしょうか。現に、venous ulcer(静脈性の潰瘍) が足にある患者さんは、大きさ的には2cmですがとても痛むようで、ハイドロコドン、通称ナルコ (Norco 5/325mg) を処方されています。薬を飲まないと、痛くて歩くのが大変とのことです。

痛みは患者さんの主観なら、この足の甲の患者さんは、痛みが「No」なら、次の処方は無いのかな、と思いますが、どうでしょう。