進化するバンドエイド(傷絆創膏)★ハーバード大学が開発

■新しいドレッシング(バンドエイド)

■青色ドレッシングの青

■拡大する wound dressing 市場

新しいドレッシング(バンドエイド)

4,5日前(7/24/2019)、ハーバード大学の研究チームが開発したという、湿潤環境ばっちりのバンドエイドが発表されました。

バンドエイドと言えども、ドレッシング材には変わりないわけで、でも、バンドエイドと名乗ると、一般の消費者にも幅広く使ってもらえる可能性が大でしょう。

こちらがそのニュースです。ニュースは他のソ―スからも出ています。

https://news.harvard.edu/gazette/story/2019/07/bioinspired-wound-dressing-contracts-in-response-to-body-heat-speeding-up-healing/

その名を、「active adhesive dressings (AADs)」。日本語だったらどんな感じに訳せるでしょうか。そのままだとちょっと商品性に欠ける感じですので…。要「超訳」でしょうか。

このバンドエイドの特徴は、創傷の治癒に最適な、温度湿度、そしてpHを保ち、抗菌にも対応という優れもののようです。そしてそれは、その人の肌の環境に反応してドレッシング自体が適応して治癒に適した環境を構築…とでもいいましょうか、作ってくれる、というものです。

それにしても、この商品は、何故青色なのでしょうか?

青色ドレッシングの青

青の antimicrobial dressing と言えば、ホリスター社 (Hollister/www.hollisterwoundcare.com) から出ている「ハイドロフェラ・ブルー (Hydrofera BLUE)」というドレッシングがあります。青というよりです。

Hydrofera Blue の青成分は、Gentian Violet 又は、Crystal violet

詳しくは、こちらをご参照下さい。12ページのPDFです。同じリンク先アドレスはこちら:http://www.hollister.com/~/media/files/pdfs–for–download/wound–care/hwc-790–hfb_clinical_monograph_reprint_922206_f.pdf

このHydrofera Blue は、この度開発されたAADと同じように、適度なantimicrobial、湿潤環境を保ちながらも、ドレナージを吸ってくれるフォームドレッシングです。

しかし、湿潤環境を保つのはドレッシングが自力でできるわけでなく、それは人間がしないといけない作業で、これを患者さんに説明してやってもらうのは、ほぼ無理で、そういうわけで、外来で使うことはありません(私は)。

じゃあ、入院してる患者さんなら使えるかというと、状況は大体同じで、看護師さんにこれを説明してやってもらうのも、残念ながらほぼ無理。なので、結果… 却下なのです。とにかく使い方が、複雑すぎる、みたいな感じです。決して複雑ではないのですが… でも万人向けじゃないのです。

以前もどこかで書きましたが、以前、ERのドクターに、「Hydrofera Blue っていいよね~。なんで使わないの?」と聞かれたことがあります。「私は使用しないので、もし良かったら、ここにあるサンプル全部差し上げます。」と言って、全部あげました。

そして、この度開発されたAADというドレッシングの青は、pnipam (プニパム)というポリマーのようです。この成分は、温度とpHに反応するのだとか。

詳しくはこちらをご参照下さい。

同じリンク先アドレスはこちら:https://advances.sciencemag.org/content/5/7/eaaw3963

こういうのも?

拡大する wound dressing 市場

wound dressing の市場は、大きくなる一方で、traditional なサプライの量(需給と言えるでしょう)はこの十年間でほぼ変わらず、横ばいなのに比べ、advanced なドレッシング材は増加の一途をたどっています。

市場は、大きくヨーロッパ、北アメリカ、そしてアジア、の3つに分かれます。

Wound dressing market について (2012-2020):https://www.grandviewresearch.com/industry-analysis/wound-dressing-market

では、advanced なドレッシング材とは、一体どんなドレッシング材を指すのかというと、今回開発されたドレッシング、AAD のように、温度、湿潤環境、pHをちゃんと整えてくれる商品です。

traditional (従来のドレッシング材)でも、湿潤環境は整えられないわけではありません。

でも、その作業を患者さん側の手に委ねるのは、患者さんの負担が多すぎますし、ちゃんと教育したらいいじゃない、と思われるかもしれませんが。患者さんにそれなりのHealth literacy と commitment と、motivation とかが必要になって、創傷ケアが長期に渡る場合、とても難しいです。

というわけで、これからはどんどんドレッシングは進化して、激しい市場争いを繰り広げるでしょう。

考えてみて下さい。たった一つのドレッシング。例えば、メピレックス。

中くらいサイズの 4″ x 4″(10cm x 10cm) が約$3.50. 3ドル50セントです。

うちの病院は、とても小さいですが、隣のトラウマ病院となると、物凄い人数のベッド数です。

うち、フロアに、創傷、特に、このメピレックスを必要としている患者さんが10~20人いたとして、時々1人で、何枚も必要になるケースもあります。

フォームドレッシングは、intact な状態だったら、一週間またはそれ以上持つドレッシングですが、ドレイネージがある場合は、毎日取り替えるケースもあります。

これを単純計算すると、メピレックスだけで、その1商品だけで、すごい計算になります。

というわけで、隣のトラウマ病院の創傷ケア看護師のもとには、本当に頻繁に営業(その地域の管轄レプ)の訪問があります。

ちょっと話がそれました。

この度開発された商品は、一般的に皆さんが思い浮かべるであろう、あのバンドエイドとは、見た目が少し違いますが、バンドエイドもドレッシング材の一つとして、商品化されるべく、日々研究されて進化しているということです。