かさぶた (Scabs) が剥がれるしくみ

理由(わけ)あって、体のあちこちにかさぶた(Scabs)がある患者さんがいます。「剥がさないでね」と言っても、かさぶたって取りたくなってしまうものなんですよね…。患者さんは、ついそのかさぶたを剥がしてしまいます。

その患者さんが「かさぶた(Scabs) って自然に剥がれるの?」と聞きました。というわけで、今日はかさぶた(Scabs)が剥がれるしくみについて書いてみたいと思います。

Scabs と Eschar の違い

まず最初に、ScabsとEscharは違います。

違いは、Scabsは乾いて固まった血液で構成されていますが、Escharは壊死した皮膚組織で構成されています。

見た目の違いは、Scabsは盛り上がっていますが、Escharは大体は平らで盛り上がっていません。

Scabsは、剥がれるとその下に乾いた新しい皮膚が見えますが、Escharが剥がれた際は、大体の場合は、その下から湿ったSloughがドレイネイジと共に出てきます。Iodine系でケアするといい感じです。「系」というのは、乾いてIntactな状態のEscharのうちは、10% Iodine solution でケアし、それがだんだん剥がれてきたら、Iodine Gelでケアすると、良い感じに治癒が進みます。創傷が悪化することもなく、抗生物質の飲み薬のお世話になるリスクも少なくなります。

かさぶた(Scabs)が出来て剥がれるしくみ

多くの人は、「もうかさぶたになってるから大丈夫ね」と言います。その通りで、かさぶたが創傷に蓋をしてくれたらもう大体安心です。でも、時々、かさぶたの回りが赤くなってくることがあります。そんな時は、Eschar同様、10% iodine sokution を毎日塗ると炎症を起こさずにすみます。

上記の通り、かさぶたは血液の塊なので、毛細血管がその下にあったということです。傷の治癒は、かさぶたの下に、ケラチノサイト(keratinocytes)とファイブロブラスト(fibroblast)という細胞が進んでいくことで分離されて最終的に剥がれることになります(detachment)。厳密にはもっといろいろな細胞が関与しますが、ここでは主に、分離する細胞としてケラチノサイトを挙げます。

keratinocytesとfibroblast cells は、パラクライン・シグナリングの原理(近くに存在する細胞同志が刺激しあう)で互いに影響しあいます。ケラチノサイトがファイブロブラストを刺激することで、ファイブロブラストが成長ホルモンを生産し、生産された成長ホルモンがケラチノサイトを刺激する、という様です。(Werner, Krieg, & Smola, 2007)

というわけで、時期尚早にかさぶたを剥がしてしまうと、ケラチノサイトの進行がまだ完全ではない状態なので、下にある毛細血管がまた顔を出してしまうことになります。そして、また出血してしまう、イコール、治癒が遅くなる、ということになります。忍耐ですね!

Scab detachment

Scab detachment

Reference

Werner, S., Krieg, T., & Smola, H. (2007). Keratinocyte–fibroblast interactions in wound healing. Journal of Investigative Dermatology, 127-5. doi.org/10.1038/sj.jid.5700786. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022202X15333820