足裏の糖尿病性潰瘍 (DFU) にNPWT

■ 外来患者さんの糖尿病性潰瘍

■ 内科的要因

■ NPWT(陰圧閉鎖療法)

■ 経過

■個人的には…

外来患者さんの糖尿病性潰瘍

現在、外来で、NPWTを糖尿病性潰瘍 (Diabetic Foot Ulcer/ DFU) に使用しています。

患者さんが足裏に潰瘍が出来たと言って外来に来たのは、一年以上前で、残念ながら、最初の3か月間くらいは、内科の主治医や、足の専門医、また外科医、との間で診療が行ったり来たりしていたようです。

その後、潰瘍の治療元は、足の専門医の元に絞られました。理由は、潰瘍周りのCallus/hyperkeratotic tissue (硬くなった皮膚組織)を頻繁に削る必要があるからです。そして、そのデブリーメントをしてくれるのが足の専門医です。

何か月もの間、1-2週に一度の頻度で潰瘍周りのCallusのデブリーメントをしながら、感染症にならないように保守的な治療でやってきてました。しかし、1.5㎝くらいの深みのある潰瘍内に、Granulation tissueがなかなか形成されないので、思い切ってNPWTを試すことにしたのです。

潰瘍のサイズが小さかったこともあって、医師も「このサイズのDFUにNPWTはなぁ…」とい感じでなかなかオーダーが出ませんでしたが、一年も経ってることもあって、ようやく許可が下りました。

内科的要因

患者さんは40代ですが、糖尿病の他に、コントロールが難しいレベルの高血圧症(投薬治療をしていても、上が200近い感じ)、肥満、加えて、過去のアルコール依存症に関連した肝機能の低下などがありました。A1Cのレベルは、潰瘍が始まった当初は5.9だったのが、投薬治療をしているにもかかわらず、一年経って7.9になっていました。

比較的年齢が若いからか、これらの異常な数値がいくつもあっても、自覚症状は全くありません。

なので、食事指導や運動指導を受けても、あまりピンとこないようです。

内科的要因に加え、治療を困難にしている点がありました。それは、患者さんがなかなか「Offloading」に積極的でないことです。足裏にクッション的なドレッシング材をあてても、「ずれるから」と言って嫌がり、CAMブーツ的なものも「歩きにくい」と言って嫌がって、Offloadingはままなりませんでした。

圧力とCallusが形成される関係は顕著です。以前、一度、全然歩かなかった、という時があって、その時はCallusが目に見えて少なかったです。

NPWT(陰圧閉鎖療法)

サイズは小さいけどなかなか閉じない足裏の潰瘍にNPWTを使用する例は、インターネット上の文献もあまり多くないです。

各社から出ている、小さめのポータブルのNPWTは、それ自体はドレッシング材と同じような取り扱いで、事前に保険会社の承諾を得る必要がありません。

しかし、この度は、確実な効果を得るために、3M/KCI社から出ている「ACTI-VAC (ACTIV.A.C.)」を使用することになりました。自宅用NPWTの使用は、事前に書類を通して保険会社の承諾を得ます。外来=自宅で使用、です。

NPWTを使用した場合、ドレッシング材の交換は通常、週に3回ですが、諸事情から週2回のスケジュールが組まれました。

週2回の交換のためか、ドレッシング周りのモイスチャーがひどく、Callus形成の削減も見込んで、潰瘍周りにSkin barrier ringを手で形成してあてました。これは、オストミー用のストマ周りによく使用される商品です。

しかし、これはあまりよく機能しませんでした。くっつきすぎて、剥がす際になかなか剥がれてこなくて苦労しました。

次に、Medline社から出ている「Exderm」という名前のhydrocolloidドレッシングでバリアしました。潰瘍にあたる部分に穴をあけて、Plantarのmetatarsal部分を広く覆うくらいの面積でカバーしました。これはなかなか良く機能しています。

経過

NPWT使用前、足裏の潰瘍の大きさは、1.5cm (L) x 1.5cm (W) x 1.5cm (D)でした。

5週間使用した時点で、1.5㎝の深さの潰瘍内にGranulation tissueが形成されて、潰瘍の表面が平らな状態になりました。

潰瘍の表面が平らになったら、その後は、epithelializationを期待しますが、これも結構な時間を要すると思います。Biological dressingの類を併用したら、もしかしてもっと早く治療が終わるんじゃないかとも思いますが、今の段階では、このまま様子見でNPWTを続けてみようと思います。

個人的には…

個人的には、糖尿病系の足の潰瘍は、MRIを取って、外科的治療を早い段階でやるのがいいと思います。遅れると切断リスクが高くなって、いつもハラハラします。外来で時間を取ってないで、ささっと病院で外科の専門医の先生に診てもらうのがベストじゃないかと思っています。