老人性紫斑 (senile purpura) の原因/リスク要因/ケアと経過/参考文献

老人性紫斑 (senile purpura) の原因

■ケアと経過

■参考文献 (Reference)

Long-Term Care (一般に言う高齢者施設)では、時々、スタッフと入居者さんのご家族を含めたケアカンファレンスというミーティングが開かれます。

ケアカンファレンスでは、「最近、気になっている点はありませんか?」とか「最近はこんな感じで過ごされています」みたいな内容で、報告や連絡や意見交換などがされます。

先日、そのミーティングで、某入居者さんのご家族の方が「腕に紫のアザが出来ていて、スタッフにBeat up(乱暴)されたんじゃないかと思って心配です。」と仰いました。手で「サイズはこれくらい」と表されたのが、20㎝くらいのそこそこ大きなものだったので、マネージャーはじめ、スタッフは驚いてしまいました。そして、私に、「すぐに確認して貰える?」と言いました。

その足で、その入居者さんのお部屋に寄って、腕をチェックしたしたところ、直径2㎝くらいの老人性紫斑が見られました。肌は「intact」な状態です。腫れてもいません。

老人性紫斑 (senile purpura) の原因

老人性紫斑は、別名では「日光性紫斑」とも呼ばれます。英語では、タイトルにもあるように「senile purpura」、また、「actinic purpura」といいます。

原因としては、過去の「慢性的に浴びた紫外線」がメインに挙げられるようですが、老人性紫斑と過去の紫外線との関連性は特に見られなかった、という報告もあるようです (Cho et al., 2019)。

それ以外には、過去における次のような点がリスクファクターになります (Cho et al., 2019)。

  • 運動不足
  • 高コレステロール症
  • Anti-coagulants(血栓予防の薬)やステロイド剤等の服用

この入居者さんは、体全体、しみ一つないような綺麗な白い肌をしている80代の男性です。そのようなわけで、この度、ちょっと上に紫斑が出来て、ご家族の方がびっくりされたようです。ビジネスマンとして地元では割と有名な方だったということで、日焼けとは無縁なイメージです。本当に茶色いような老人性の肌のシミなどもほぼ皆無です。が、運動不足初め、上に挙げたその他3つのリスクファクターは、当てはまりそうです。若いころどの程度の運動をされていたのかはご家族の方に聞かないとわからないです。

さて、マネージャーがちょっと苦笑して「senile purpuraよ?そんなのは、誰にでもできるわよ。」と言いましたが、それは必ずしもそうではないんじゃないかと思いました。

高齢者の肌は、弾力性も低下して、紫斑が出来てしまっても確かに不思議ではありません。でも、そうだとしても、現に、入居から今まで3,4年もの間、そのような紫斑は出てなかったので家族が心配されるのも無理はありません。

服用している薬や年齢等で、肌が薄くなったり弱くなったりしているのは事実だとしても、ケアの途中で「micro injury(部分的 (local) な毛細血管の損傷)」が起こったものとして、受け止めるべきだと思います。

老人性紫斑 (senile purpura) のケアと経過

肌に傷があるわけではない(intactな状態) のですが、ちょっとぶつけたりしたら出血する可能性があります。

というわけで、肌はスキンバリア (Cavilon skin barrier liquidの類)を塗って、その上を透明のシリコンドレッシングで部分的に覆います。肌がintactな場合、これは安全でなかなかいいです。外から様子を観察することもできるし、何日(1~2週間)もそのままでいることも可能です。ドレッシング材は空気を透過するので、「occlusive (閉塞的)」でもありません。

Cavilon Skin Barrier Liquid

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3M Dermatac「気に入ってます」

ドレッシング材には、シャーピーで小さく日時を記入し(回数によって、複数の日時になることもあります)、定期的にチェックしていることが誰の目からもわかるようにします。

このようにして、紫斑部分に「skin tear」が起こることもなく、紫斑は3~4週間ですっかり消えました。

Reference

Cho, S. I., Kim, J. W., Yeo, G., Choi, D., Seo, J., Yoon, H. S., & Chung, J. H. (2019). Senile purpura: Clinical features and related factors. Annals of Dermatology31(4), 472–475. https://doi.org/10.5021/ad.2019.31.4.472. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7992766/