■Santyl(サンティル)は本当に最強なの?★市場シェア100%の余裕 #17

smith&nephew社のSantyl(サンティル・オイントメント)という商品があります。

創傷治癒の現場では頻繁に使用される商品で、褥瘡、火傷、静脈性潰瘍などの、傷床上に壊疽組織が見られる創傷の治癒に効果を発揮します。

サンティルのアクションは、酵素の力で、ダメージを受けたコラーゲンを分解し、傷床の肉芽組織の活性化を促してくれるというもので、言うなれば、「傷床の酵素洗浄」をしてくれます。

コラーゲンを分解し、コラーゲンの生成を促す、と聞くと、コラーゲンはいいの?悪いの?どっち?となるかもしれませんが、上に述べたように、この酵素は損傷を受けたコラーゲンだけ取り除くという優れものです。

サンティルのPROとCONを挙げるとしたら、次のような点です。

PRO:

普通に効く
入院患者用にはほぼ完全に保険でカバーされる商品
他の薬品、商品とのinteraction が少なく安全性が高い
傷床にしみたりしない
酵素なので、アレルゲン性が低い
無臭

そしてCON:

軟膏が傷床にうまくくっついてくれない
使い方が簡単そうで実はちゃんと知られていない(現場の看護師など)
効き目がゆっくり過ぎる!
30日が目途のコースで、チューブが何本も必要!
医師がオーダーを出す際にdoseの書き方が面倒
医師が「何だよ、効かないじゃないか」という反応をする
外来に移って保険が効かないと(外来などまれに)とんでもなく高価!
途中から、保険が効かなくなってこの商品での治療を断念せざるを得ない場合有り。

サンティルは競合相手がいない、市場で唯一の酵素を利用したデブリーメント剤で(Enzymatic debridement agent)、MMP-8という具体的な酵素のアクションを利用していることから、もしかしたらこれで特許が取られていたら、この先何年かは安泰なのかもしれませんが、やはりチューブ一本が200ドル以上するという値段は高すぎる気がします。

どこかの大学の研究室あたりで、この商品のCON項目を改善してくれる新商品を開発してもらえないものでしょうか。
アメリカでは入院日数が短いので、もう少し即効性を高めてくれたら嬉しいです。

各MMPの働きに興味がある方は、下記参照部分にリンクを載せておきますので、読んでみてください。

Reference:
Chang, M., Mobashery, S., & Nygyen, T. T. (2015). Roles of Matrix Metalloproteinases in Cutaneous Wound Healing. Retrieved from: https://www.intechopen.com/books/wound-healing-new-insights-into-ancient-challenges/roles-of-matrix-metalloproteinases-in-cutaneous-wound-healing. DOI: 10.5772/64611