Wound Cultureの結果/leukocytes/Pseudomonasの緑

■「pseudomonas」の緑

■ Wound Cultureの結果と免疫機能

受診に来られた患者さんの潰瘍に緑色のドレイネイジが見られたら、バクテリアは「pseudomonas」だろうと予想はつくわけですが、やっぱり予想は予想だし、種類も複数であることも多いので、Wound cultureを取るのが安全です。結果次第では、抗生物質の薬が複数必要になる場合もあります。

Wound cultureを採った結果、予想通り、pseudomonasバクテリアが検出されました。

「pseudomonas」の緑

「pseudomonas」バクテリアによる潰瘍のドレイネイジは、緑色をしていますが、同じ緑色でも、黄緑っぽいものと青緑っぽいものがあります。

まず、「pseudomonas」バクテリアのドレイネイジはどうして緑色なのか、という点ですが、それはバクテリアの代謝物である「pyoverdine」と「pyocyanin」の色からきます。「pyoverdine」は黄緑っぽい緑で、「pyocyanin」はもっと青っぽい緑です(Alonso et al., 2020)。こちらのサイトに写真が載っているので、見てみて下さい。

人間の身体はタンパク質で出来ているのは周知のとおりですが、その多くを占めるのがコラーゲンです。割合としては、大体3分の1くらいと言われています。「pseudomonas」バクテリアは、肌にあるコラーゲン由来の自然の蛍光成分に反応して、「pyocyanin」という青緑色の代謝物質 (metabolite) を産出します。

例えば、webサイトの色はRGBの3色で出しますが、印刷物やプリンターのインクは、ピンク(マジェンタ)、黄色、青(シアン)、黒、の4色です。シアンは青色のことです。このpyocyaninが混じった緑は、青緑になって、ドレイネイジの色からも、顕著に青が混じっているのがわかります。

Pyocyaninは、ホストの身体(患者さんの潰瘍部分)に酸化ストレス(oxidative stress) を与えて、健康なたんぱく質組織やDNAにダメージを与えます。ですが、それと同時に免疫細胞も動き出すので、免疫機能の活性化を促すとも考えられます(Alonso et al., 2020)。

今、外来に来ている患者さんは、右足の前面 (anterior lower leg) にpsudomonasの潰瘍があります。複数の潰瘍が散らばっている感じなのですが、青緑色のドレイネイジ部分の箇所は、黄緑色のドレイネイジの箇所と比較して、明らかに状態が悪かったです。

そして、この明らかに状態が悪い青緑色ドレイネイジの箇所は、抗生物質の服用を始めた後は、赤いserosanguineousのドレイネイジに変わりました。

Wound Cultureの結果と免疫機能

上記の話と前後するのですが、Wound cultureの結果は次の通りでした。

Pseudomonas aeruginosa

Gram Stain: Gram Negative Rods / Numerous leukocytes

Drug: Gentamicin (S / <=1), Levofloxacin (S / 0.5), Piperacillin/Tazobactam (S / 8), Tobramycin (S / <=1)

この「Numerous leukocytes」というのは、WBC(白血球)のことです。

白血球は怪我や出血など、皮膚上に何か問題があると、そこに早急に集合して外的(バクテリアなど)と戦います。

単一バクテリア+ WBCの組み合わせが見られた場合、この時点で、免疫機能が活発に働いていたということで、比較的初期の段階で病原体を検出できている、ということです (Bowler et al., 2001)。

確かに、この患者さんは、潰瘍が過去に何度もできているのですが、いつも比較的初期の段階で受診される方なのです。

毎回抗生物質の服用を要するわけではなく、患部の治療だけで回復することが多い方です。今回も、抗生物質を服用せずに患部の治療だけで回復してくれたら、と思っていたのですが、3回目の受診で「今回は抗生物質の処方が必要になるかもしれないね」とwound cultureを採ることになりました。

初診~2回目には、状態が著しく向上したので、このまま行けるかな、と思ったのですが、2回目から3回目の際に、状態がむしろ悪化してきたのです。バイタルサインは通常通りで、発熱なども見られませんでしたが、3回目の受診の際に、痛みも増してきた旨の報告もありました。

Wound cultureの結果は、2日後で出たので、直ぐに抗生物質が処方されました。

Reference

Alonso, B., Fernández-Barat, L., Di Domenico, E.G. et al. Characterization of the virulence of Pseudomonas aeruginosa strains causing ventilator-associated pneumonia. BMC Infect Dis 20, 909 (2020). https://doi.org/10.1186/s12879-020-05534-1. https://bmcinfectdis.biomedcentral.com/articles/10.1186/s12879-020-05534-1

Bowler, P. G., Duerden, B. I., & Armstrong, D. G. (2001). Wound microbiology and associated approaches to wound management. Clin Microbiol Rev. 14(2):244-69. doi: 10.1128/CMR.14.2.244-269.2001. PMID: 11292638; PMCID: PMC88973. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC88973/

Hall, S., McDermott, C., Anoopkumar-Dukie, S., McFarland, A. J., Forbes, A., Perkins,  A. V., …, & Grant, G. D. (2016). Cellular effects of pyocyanin, a secreted virulence factor of pseudomonas aeruginosa. Toxins (Basel), 9;8(8):236. doi: 10.3390/toxins8080236. PMID: 27517959; PMCID: PMC4999852. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4999852/