傷は「ほっといてもどのみち治る」発言

学校の先生だという若い男性の患者さんが、右前腕の内側(Anatomically ‘anterior (front)’)に怪我をして3日前にERに来られたようで、今日は、夏休みなので奥さん子供さん家族6人全員でクリニックにフォローアップに来ました。

5㎝くらいの直径の円形の創傷で、深さが割とあります。と言っても0.3㎝くらい。

wound

患者さんの創傷。とても綺麗な赤い傷床。

丁度神経に触っているようで、Q-tipの先でちょっと触っただけでも、すごく痛いようでした。

3日間一生懸命ケアした、というだけあって、とても綺麗な赤いwound bedです。

私だったらこうするかな、と思うトリートメント方法はあるけど、外科医にも見てもらってそれでいいよ、と言ってもらう必要があるので、先ずは外科医に診てもらってからね、と言っていたら、外科医が入って来ました。

例の外科医

「お~、綺麗なwoundだ~!でも、もうちょっと深かったら、君は今ここにはいないね」と言って、一同笑い。(苦笑)

「いいんじゃない?じゃ」と部屋を出ようとしました。え?

患者さんがちょっぴり焦って「あの… wound careは…」と外科医に聞くと、私をちらっと見て、「それはこちらにおまかせ。何故なら、どんなケアでもどっちみち治るからサ(そして笑い)」と言うではありませんか…。

英語では「because it doesn’t really matter. It’ll heal anyway.」でした。

もう~、その言い方。ひどいなあ~。

確かにその通りではあるかもしれませんが、2%くらい傷つきましたョ…。

そこに予め、Normal Salineとか患者さんにあげるサプライを用意していたので、それを見て「これでいいよ」と言って部屋を出ていきました。

この外科医はとてもいい人で、言ってることも正しいんだけど、あともう2分カスタマーサービスをしてくれたら、もっと患者さん受けが良くなると思うんですが…。

ちなみに、この日のケアは、wound bed に湿潤環境の為もあって、Bacitracinを置いて、non-adherent strip dressing を被せてガーゼを置いて、包帯する、という感じでした。

患者さんが、ERでゼロフォーム(Xeroform)を貰って来たようで、「あの、これは…」とカバンから出したのですが、ゼロフォームは、パッケージから出した時は、ベタベタしてくっつかないからいいかと思うかもしれませんが、割とすぐに乾いて、乾いた後は、もともとガーゼなので、このただでさえ痛い創傷に使ったら、翌日くっついて泣きの痛みになってしまいます。上記のnon-adherent dressingは、oil emulsionと書かれていて、最初はベタベタして、「こんなの傷にいいの?」と思われるかもしれませんが、こちらも割りに直ぐに乾いて、でも乾いた後はさらっとして、ガーゼじゃないので傷にもくっつきません。

ネットで覆いたい?と聞いたら、覆いたいと言うので、ネットで被せてあげました。

患者さんが「次のフォローアップの予約は…」と聞いたら、外科医は、「だから治るって。もう来なくていいから。いや、来たかったら来るなとは言わないけどね」と…。(苦笑)

でも、確かに外科医の目から見たら、wound care nurseなんてものは、そういう感じなんでしょうね…。まあ、本当のことだし、いいですけどね~。