以前も書きましたが、再び…。
今日、クリニックに来られた「パイロナイダル・シスト」(手術で除去されたという)の患者さんは、40代女性でした。
「え?40代?」という感じでしたが、大人だっていることでしょうし、私が属しているのは「小児科専門」の訪問看護のエージェンシーなのだから、訪問する患者さんは、当然、小児の患者さんしかいないのであって…。
でもちょっと調べてみました。
このサイトの下の方にリファレンスがありますので、興味がある方は見てみて下さい。
パイロナイダル・シストの罹患年齢と性別
パイロナイダル・シストにかかるのは、主に、思春期から40歳頃にかけて、で、25歳を過ぎると、罹患率は減少します。
ピークの平均は、男性が21歳、女性が19歳。
男女の比率は、大人は圧倒的に男性が多く、男性:女性=3~4:1。
しかしながら、小児(主にティーンエイジャー)の場合は、それが逆転して、男性:女性の比率が、1:4になります。
パイロナイダル・シストにかかりやすい人
パイロナイダル・シストは、誰にでも起こり得ますが、訪問する子達には、明らかに、体型などに共通点が見られます。
男女とも、どの子も、ムチっとした感じで(肥満ではありません)、でも、ヒスパニック系の子達にはごく普通に見られる体型です。毎月何人もいますが、今まで白人やアジア人の子をパイロナイダル・シストの為に訪問したことは、少なくとも個人的には一度もありません。
パイロナイダル・シストを患いやすい要因
本人がコントロール出来ない要因(unmodifiable factor)が多いです。
- 年齢
- 民族性(体型や体毛の感じなどにつながるため)
- 性別
- 家族の病歴(過去にパイロナイダル・シストを患った人が家族にいる)
- 体型(体毛の性質なども含め)ー この「体型」というのは、全体的な身体の体型というよりは、主に、お尻の尾てい骨部分の形、ということです。
コントロールできる要因 (modifiable factor) もありますが、ここでは省きます。ちょっとムチっとしているだけの高校生に「肥満も要因」などとは言いたくないですしね。
術後・予後
うちの訪問看護のエージェンシーに回ってくるパイロナイダル・シストの患者さんは、ほぼいつも同じ病院から来ます。なので、前回うちの病院に女児がパイロナイダル・シストらしき症状(治らない状態)で来た際は、うちの外科医に「Dr. ●●●にリファーラル出してもらえますか?ほとんど専門ですし」と言って、そちらのドクターに回してもらいました。
皆さん、術後はWound VACを3~4週間(早い人は2週間)して、その後、wet-to-dryに替えて、2週間ぐらいで治ります。この3年くらいで、再発したのはwound VACをしなかった患者さんくらいで、再発はありません(あくまでもうちのエージェンシーで訪問した患者さんです)。
でも、手術で閉じてしまうと再発が5年間のうちに20%と書かれていたのを読みました(下に文献あります)。
でも、それはありうるよね…と思います。Wound VACのキャニスターに溜まる毎日のドレナージの量はとても多く、日によっては臭いのある場合もあって(状態は日々変化するので)、それが手術で閉じられた状態だったら、ドレナージがどこへ行けるの?と思います。
今日のクリニックの患者さん
クリニックを訪れた患者さんがパイロナイダル・シストと聞いて(アシスタントが『ERからそう言われてる』と言うので)、外科医と、「今日は金曜だから、wound VAC用意しても月曜か…」「まあ、見てみないとわからないじゃない」という会話をしながら部屋に入ったところ、私達二人とも、あれっ?!という反応でした。
想像よりかなり小さかったのです。
尾てい骨部分に、3 cm x 2 cm x 1.2 cm と言ったところです。
本当にパイロナイダル・シスト?と一瞬思いましたが、尾てい骨部分にあるのでパイロナイダルですし、そこに取り出すべきシストがあったら、それはパイロナイダル・シストですよね!
外科医は、それを見ただけで「あ、小さいね。全然大丈夫。なんでこれでERに行くの?」と聞きました。
患者さん「だって痛くて…」。
外科医「ERじゃなくて、次はクリニックに来なさいね」
以上で診察終わりでした。
患者さんは、ERで切ってもらって(え、本当に?!という感じ…)、パッキングストリップを渡されて「週一回これで」と言われたそうで、「???」の状態でした。ERらしいです。
家にはケアをしてくれる家族はいないとのことで、メディカルアシスタントに鏡を用意してもらって、ガーゼでパッキングする練習をしました。「wet-to-dry」です。毎日です。
ドレッシングを全部外してシャワーもオッケーよ。とシャワーの説明もしました。
ガーゼとNormal Salineとテープをあげて、患者さんは「オッケー!」という感じで笑顔で帰られました。良かったです。
参考文献
Koifman, A., et al. (2019). Are pilonidal cyst and sinus more common in males or females?. Retrieved from: https://www.medscape.com/answers/788127-111214/which-age-groups-are-most-commonly-affected-by-pilonidal-cyst-and-sinus
Marza, L. (2019). Pilonidal sinus disease: a multidisciplinary approach. Trends in Urology & Men’s Health, (Jan. & Feb., 2019). Retrieved from: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/tre.673