■創傷治療にハニードレッシング #130

■サイズが小さいからすぐに治るとは限らない

■病院ではなかなか出せないハニードレッシング

■ハニーの抗菌効果

■ハニーいろいろ

■Antimicrobial stewardship の観点から

■サイズが小さいからすぐに治るとは限らない

糖尿病性の潰瘍が足の裏にある患者さんが先日退院された際、訪問看護師さんが自宅に来れるよう手配をしました。

高齢であるのと、バランスが取れなくて歩くのもままならないのとで、フォローアップでクリニックに来るのが難しいため、訪問看護師さんが見てくれたら安心です。

潰瘍のサイズは、退院当時(一か月前)は、直径1㎝くらいにまで小さくなっていました。

深さも3㎜くらいで、ぱっと見、とても小さな創傷、という感じ。

それ以外にも、外科医がベッドサイドで行った I&D (incision & Debridement) による創傷サイトが近くにありましたが、2週間くらい前に、そっちは完治した旨の連絡がありました。

でも、今日、訪問看護師さんからのFAXを見たら「足の裏の創傷は段々状態が悪くなって、サイズも大きくなる一方なので、ハニードレッシングでの治療をしたい」と、書かれていました。

■病院ではなかなか出せないハニードレッシング

個人的には、ハニードレッシングで行ってみたい、とも思いますが、うちの病院から外科医のオーダーとしてハニードレッシングが出ることはまずなくて、それを私が「いやいや、ドクター、ここは絶対ハニーですよ」とも言えないのです…。

ハニードレッシングは、万人に良いというわけではなく、中にはアレルギー反応を起こす人もいます。

でも、それは、どんなドレッシングだって同じです。入っている成分にアレルギー反応を起こすことが、頻度は少なくても時々あって、「赤くなった」とか無いわけじゃないです。そして、それがハニーとなると、アレルギー反応の可能性は他のサプライアイテムよりは高いと言わざるを得ないわけで、それを考えると、私は押せないのです。

これが、毎日チェックできる入院患者さんならまだいいのですが(常に監視できるから)、外来の患者さんの場合は、やっぱり心配です。

病院は、とにかく安全第一、保守的に、保身的に行きたいので、結果、ハニーは出ません。

治りの悪い糖尿病性潰瘍の患者さんに出るとしたら、病院・クリニックからは「Regranex gel」あたりでしょう。高価ですが、効果的です。

しかし、なんだかんだ言っても、この患者さんの場合ですが、どう考えても、ハニーの方がただのwet-to-dryよりいいに決まってます。

訪問看護師さんと電話で話したら、某関連プロバイダーからオーダーを貰ったから一昨日から始めた、とのことでした。どのプロバイダーから、というのは私の問題では無いので、そういうことなら万々歳。ありがとう。と言って、電話を切りました。

いくつかある訪問看護のエージェンシーの中から、このエージェンシーを選ぶのは、ここが創傷ケアに関して、結構ちゃんとやってくれるからです。サプライも、病院からは出せない物もさらっと出してくれる。その内部の仕組みはわかりませんが、全くサプライを出さないエージェンシーや、ドレッシング交換(=創傷の確認)さえもしてくれないエージェンシーもあるので(意味無いよね⁈という感じです)、創傷ケアはここ、と言う風に私の中では確立されています。

とりあえず、良かったです。そして、フォローアップでクリニックにやってくる日がとても楽しみ。

■ハニー(ジェル/ドレッシング)の抗菌効果

よく色々なサイトで、ハニーにはhydrogen peroxide やenzyme が含まれており、それが抗菌作用となる、と書かれていますが、hydrogen peroxide自体は、バクテリアを殺すものではないし、enzyme自体も、ハニーによってはどういうものが入っているかは、種類も量もそれ程定かにはされていません。ので、enzymeの抗菌効果は、それ程あてには出来ません。

ハニーがバクテリアの働きを抑えるメカニズムは、浸透圧(osmolarity) による脱水症状によるもので、バクテリアをカラカラにして殺す、みたいな感じです。

ハニーは、「high sugar content」 = 「high-osmolarity」で、higher側がlower側の水分を引っ張るので、ハニー側にドレイネイジも含め、水分が移動します。

あと、ハニーのpHの低さも、抗菌作用になります。しかし、抗菌になるのは、pHがすごく低いか高いかのどっちかで、ハニーによっては、中途半端に低いものとかもあるようなので(下記参考文献1-Figure 4に載っています)注意が必要かと思います。

■ハニーいろいろ

ハニーは、マヌカハニー、raw(生)ハニー、医療用ハニー、等いろいろあります。

マヌカハニーは、ニュージーランドとかあちらの希少価値が高いハニーで、蜂の種類によるもので、抗菌効果も高いとされています。

アマゾン等のサイトに行くと、マヌカハニーのドレッシング等、色々出ていますが、「for minor cut」とか書かれていたら… 営業妨害をするつもりは一切ありませんが、minor cut くらいだったら、ハニーでなくてもOKと私は思います。自己治癒力で充分です。

基本的に、antimicrobial itemは、インフェクションの症状が無ければ使用する必要がない、とされています。予防的にあれこれ使うのは、かえってバクテリアを鍛えてしまいます。

下記の股関節の創傷とか、どう見てもminor cut 以上の創傷には、あれこれ考えますが…それだって、最初はnormal salineとガーゼでOKの場合が大半です。

これは絶対駄目、というのは、市販の甘いハニー。ほぼ100%砂糖なので、効果はありません。ありません、と言い切っていいのか… 効果極めて薄くらいでしょうか、何故なら、市販の普通の甘いハニーをコントロール目的みたいな感じで使用したリサーチもあって、それでも、創傷は一応治ってはいました。でも、それこそ、自己治癒力で治ってくれたのかもしれませんし(このリサーチの文献は後で追って載せます)。

私が持っているサンプルは、このような(↓)アイテムです。

この、上のチューブのは、どろどろっと出て来て、最初は扱いにちょっとコツを要します。

下の、四角いドレッシングは、ハニーがアルジネイト・ドレッシングにべっとり染みている感じです。これも最初はちょっとコツを要します。また、これだけではなく、このハニーを抑えておくドレッシングが必要になってきますので、治癒期間を考えると、ちょっと高くつく、というのもネックかもしれません。

普段、このサンプルを病院では医師のオーダー無しには私は使用できないので、あくまでも個人的に使用した感想ですが、脇の下にできた膿を出した後(status post I & D)の創傷だったのですが(知り合い)、場所が場所だけに、どろどろ感たっぷりのハニー(チューブの方)の扱いがちょっと大変で、「うわ、失敗した、こういう創傷だと知ってたら四角いドレッシングを使用するべきだった」と思ったのを覚えています。

ちなみに、覆うドレッシングは、メピレックス等のフォームドレッシングが一番扱いやすいと思います。

また、以前、訪問看護(大人)をした際(エバリュエーションのみ)、患者さんが訪問看護師さん(上記と同じ訪問看護エージェンシー)が持ってきてくれたハニードレッシングを、比較的大きな股関節付近の創傷(10cmx5㎝くらい)に使用ていて、とてもいい具合に治っていってたのを記録したことがあります。

■Antimicrobial stewardship の観点から

ここまで書いて、自分の正直な気持ち的には、やっぱり安易に勧めるものではないと思いました。

前述の脇の下の創傷の方、そして、足の裏の潰瘍の方は、普通にケアしていても治りがいまいちだったので、試す価値はあると思います。

しかし、一般的に、ちょっとした普通の傷には、特に使用する必要も無いと思っています。

繰り返しますが、antimicrobial itemは、創傷の状態が良い場合は、逆に使用するべきではないし、バクテリアを強化するだけです。

それに、現状では、お店にもいろんなハニーアイテムがずらっと並んでいますし、中に入っている成分だって、よくわからないと思います。市場に無数のドレッシング類が存在するように、一体どれが良くてどれが良くないのか、迷ってしまって、とりあえず、マヌカハニーがいいか、とかそういった選択肢になってしまうのが関の山です。マヌカハニーと書かれていても、どの程度の量が含まれているかわかりません。

創傷ケアは、最初は、「清潔にして湿潤環境を保つ」が基本で、ハニーは、その後に続くものかな、というのが結論です。

矛盾して聞こえるかもしれないので、繰り返すと、状態が良いケアの初期段階で使用する必要はないけれど、その後の段階で使うには、きちんとした品物を使用したら効果が期待できるもの、だと思っています。

創傷ケアに於けるハニーの位置づけは、伸びしろが大きい、という印象で、伸びしろどころか、太古の昔から使用されているにも関わらず、ドレッシング市場ではまだまだ発展途上という感じなので、私自身も、もっと知っていけたら、と思います(病院では使用する機会が無いのが残念)。

ハニーを創傷ケアに使用することに、興味のある方は、最初の使用時は、アレルギー反応に気を付けて下さい。過去に蜂に刺されて赤く腫れたとか、アレルギー反応が確認された方は、特に慎重にご利用下さい。そして、出来るだけお医者さんの指示のもとに使用して下さい。

参考文献

  1. Simon, A., Traynor, K., Santos, K., Blaser, G., Bode, U., & Molan, P. (2009). Medical honey for wound care–still the ‘latest resort’?. Evidence-based complementary and alternative medicine : eCAM, 6(2), 165–173. doi:10.1093/ecam/nem175. Retrieved from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2686636/
  2. Mandal, M. D., & Mandal, S. (2011). Honey: its medicinal property and antibacterial activity. Asian Pacific journal of tropical biomedicine, 1(2), 154–160. doi:10.1016/S2221-1691(11)60016-6. Retrieved from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3609166/

(どちらも十年近く経っていますので、ちょっと古めです)

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