excoriation=引っ搔き傷 看護師というバリア

■excoriation=引っ搔き傷

■看護師というバリア

ERから電話があったので、行ってみたら、見覚えのある患者さんでした。3週間くらい前にMed-Surgから退院したばかりの患者さんでした。

内科系の症状でERに来られたようでしたが、同時に、お尻にwound があるとのことでした。

3週間くらい経ってるし、ERに来たのは内科系の症状だし、それ程関係無いと言えばないのですが、確かに退院時には、wound の状態は既に回復していました。でも、3週間経って、また悪化して同じになっているということは、退院時の「patient education」がいまいちだったということにもなります。

既にあるwound のトリートメント自体はそれほど問題ではなく、この、またすぐ退院されるであろう患者さんの自宅でのケアを、学んでもらうことの方が重要です。

しかし… ちょっと難があって…

それは、この患者さんのケアを自宅でされる奥様が、25年の経験があるICUナースだということです。

前回の退院時に、私はそれを知らなくて、いや、知ってても知らなくても、同じ内容をお伝えするのですが、自宅でのケアについて話そうとしたら、「結構です。私は25年ICUとオンコロジーで勤務してきました。もうわかっているので。」と言われました。

患者さんに「貴方はラッキーね。こんな素晴らしい専属ナースがいて」と言って、患者さんは奥さんと共に家に帰りました。

excoriation=引っ搔き傷

この度、この患者さんがERに来た際、彼のお尻には、赤くなってひっかいた後が無数にあって、ちょっと、ぐちゅっとなっている状態でした。

そして、そこに、小児用の小さなハイドロコロイドのドレッシング材が何個も貼られてあり、それをフィルムドレッシングで押さえていました。

ひっかいて出来た傷を「excoriation(エクスコリエーション)」と呼びます。Excoriation は、通常、痒くて掻くのですから、ドレッシング材でいくら覆っても痒いものは痒いのです。

痒いでしょう、と聞くと「すっごく痒い」との返事。

痒い箇所は、貼るのではなく、塗り薬です。通常は医師にステロイド剤を処方してもらいます。

ステロイドの軟膏は少量で効くので、Petroleum jellyなどと混ぜて使います。でも、最初は少し多めに混ぜて、痒みを軽減してあげます。そしてその後、量を減らしていきます。痒み自体は1日2日で軽減されるので、この間、5日間くらいです。状態が良くなったら、Dimethicone入り(シリコンバリア)のクリームなどに切り替えるといいかと思います。

この患者さんは、内科系の病気のために、基本的にベッドで寝た切りなので、Petroleum jellyで多少べとべとしても大丈夫です。

看護師というバリア

自分の子供がドクターのオフィスに行く際は、私が看護師であるという事実は言わないです。こんなにも知らない事だらけの自分なのに、こちらが看護師と知った瞬間、相手は何も教えてくれなくなってしまいます。こちらも、あれこれ質問できない感じになってしまいます。

同僚も、「そうだよね!私も絶対に言わないよ」と言っていました。

この患者さんの奥さんのように、「私はICUナースだったんだからレクチャーは結構」となると、とても損しているんじゃないかな…と思います。

でも、そのようなご家族の場合でも、出来るだけ、そのプライドを傷つけないよう、でも、伝えることは伝える、ということをしないと、やっぱりPatient educationは失敗ということになってしまうんだろうな、と思った次第です。