メチレンブルーの効果と危険性

■足の潰瘍

■青紫色の液体

■医薬品ではないViolet dyeに頼る危険性

■Patient education

■足の指にできた潰瘍

入院患者さん60代男性は、3か月前にも潰瘍で入院していました。入院の理由は「Cellulitis (最近による皮下組織の炎症)」です。足の指に出来た小さな傷から細菌(バクテリア)が入り込み、炎症を起こします。

Celllulitisは通常、抗生物質で治療をしますので、潰瘍や水疱等が無い場合、私が患者さんに会うことはありません。炎症が悪化して病院に入った時点で、傷口が既に閉じている場合もあります。

この患者さんは、小さな傷口 ー いわゆる、バクテリアの入り口 (port of entry)が足の指にあり、その指が熱を持って赤く腫れていました。入院するかどうかは、患者さんの症状の悪化具合、住居状況、または患者さんの治療に対する理解度などを考慮して医師が決めます。

症状がある程度落ち着いたら、患者さんは退院して、その後、外来治療でフォローアップします。その関係で私も病室を訪れました。病室で足の指を見た際、他の指の先にも紫色のダイがペイントされていました。

メキシコ人の中には、この紫色の液体を持っている人が多くいます。特に農場で働く人達はほとんど知っています。

■青紫色の液体

紫色の液体は、Violet dye、Gentian Violet、Methylene Blue、Methylene dye、など人によっていろいろな呼び方をします。Crystal violet dyeという呼び方もあります。

Crystal violet dyeには、看護師になる者なら誰しもが取る、微生物学のラボで出会います。

バクテリアには、グラム陽性菌と陰性菌があります。ラボでは、バクテリアの陽性と陰性を見分けるグラム染色(ステイン)の方法を学びます。その際に使用するのが、Crystal violet dyeです。

この青紫色の液体には、殺菌作用もあり、農場で動物の創傷などによく使用されます。価格も安価で、特にメキシコなどを含む南米では広く出回っているようです。上記の患者さんも、家にその液体がガロン容器に入ってあるそうです。

患者さんの入院中、今回も前回も、患者さんは「いつもは青い(青紫の)液体を塗れば傷は治る」と証言しています。

■医薬品ではないViolet dyeに頼る危険性

この青紫色の液体には、前述のとおり、殺菌作用があります。バクテリアの他、真菌やイースト菌にも効果があります。抗生物質剤に代わるものとして注目もされています。しかしながら、あらゆる創傷に対する万能薬ではありません。小さな傷には効果がありますが、基本的に人間の創傷用の薬ではありません。

また、皮膚の状態が悪い時に、適当に何日か常用することは、バクテリアをより強力なものにしてしまいます。抗生物質の薬を、処方日数に達する前に服用を止めてしまうのと同じコンセプトです。患者さんの中には、抗生物質の薬を途中で服用を止めて、いつか使えるように保存している人もいます。Antimicrobial Stewardshipの観点からは、最悪の考えです。

上記の患者さんは、何かあると常にこのViolet dyeを患部に塗ってやりすごしてきました。でも、現に2回も入院に至ってしまっています。ここでこの患者さんが必要なのは知識です。

■Patient Education

看護師の仕事の1つに「patient education」というのがあります。看護記録にも、どんなPatient educationを提供したか、を書く必要があります。特に退院時には、Patient education無しに退院した場合は、何かあった際、法的にも責められるポイントになります。

外来に上記の患者さんが訪れた際、患者さんは、(1)傷はむき出しでドレッシング材でカバーされていませんでした。この患者さんはMRSA (メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)を持っています。

また、(2)両足とも真菌感染症で痒いらしいです。

ワイン農園で働いているようですが、ワイン農園では、とにかく水を使います。ブーツはあるけど使いたくない、とのこと。ブーツを使うと、中が濡れてぐちゃぐちゃになってしまうようです。農園では化学肥料も使用します。(3)毎日の足のケアをどうするか。

(4)仕事中の履物をどうするか。

これらについて毎回毎回話さないことには、この患者さんは、何度も入院になってしまいます。

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