ノン・コンプライアンスと潰瘍

■ノン・コンプライアンスとは

■ノン・コンプライアントの患者さんの特徴

■ノン・コンプライアントの人の潰瘍

■ノン・コンプライアンスとは

最近、芸能事務所のコンプライアンス研修、という話題をテレビで耳にします。さらっと英語で他の外来語と同じように普通に使われていますが、コンプラインスとは何でしょうか。芸能事務所のそれにおいては、社会の規制や道徳を守るとか、そのような内容かと思います。

創傷ケアに於きましては、それは、言われた通りに創傷をケアする、と言う事になります。

または、アポがある日はクリニックにちゃんと時間通りに来る、と言う事です。

というわけで、ノン・コンプライアンスはその反対で、ケアをしない、好き勝手にケアをする(それでも回復に向かったら何も言われません)、フォローアップの予約日に現れない、等です。

ケアの仕方がわからなくて出来なかった、というのはノン・コンプライアンスではなくて、それは医療従事者側のアセスメント不足、または失敗です。

いずれにせよ、きちんと記録を残す必要があります。

残念ですが、創傷に限らず、医療従事者の中には、きちんとしたアセスメントや指導をせず、結果が悪いと、患者さんがノン・コンプライアントという風に記録に残される場合もあります。

アプローチの仕方によっては、患者さんの中には「これなら出来るよ」となる方もいるわけで、はなっからノン・コンプライアント、と記録されるのは、フェアではないなあ、と思う時もあります。

■ノン・コンプライアントの患者さんの特徴

特徴としては、まず、言い訳をする。でも、これは、医療従事者側のアプローチの仕方の悪さとセットみたいな時が多いです。でも、患者さんが言い訳をすると、自分のアプローチの悪さを棚にあげて「全くもうしょうがないんだからこの患者さん…」みたいになっちゃったりします。

人の話をあんまり聞いてない。これへの対応として、よく「teach back」する、というのが挙げられますが、私はこれが苦手です。

説明して「はい、今、私、何て言いました?言ってみて」とか、そんな風に自分が言われたら嫌じゃないですか。

創傷ケアでは、やっぱり、患者さんに見せるだけでは駄目で、実際にやって貰うことが大事です。それも二回くらい。

先日訪れた高齢の女性は、今年の夏頃にも、足に静脈性潰瘍が出来て、外来に来ていました。

その際、潰瘍が大方表面的になった時点で、自分で出来るwet-to-dryに代えて、家でとてもきちんとケアできて完治していました。

しかし、この度、同じ足のそのちょっと近くに違う潰瘍がまた出来て(家具にぶつかって)、今、治療中です。一か月経って、創傷がとても浅くなったので、じゃあ、前回のようにwet-to-dryでいいよ、と言って、本人も「ああ、前も自分でやったしオッケー」と同意して、一週間後に来たら、あ、あれ?という結果でした。

そして本人、医師が来たら急に言い訳を始めました…。これは私が悪かったです。

少し前に出来てても、その記憶があるとは限らないし、高齢者ですし、Problem listの中に、「軽度の認知症」とも書かれています。

■ノン・コンプライアントの人の潰瘍

ご多分に漏れず、潰瘍の治りは遅いです。

でも、一番困るのは、予約の日にちゃんと来てくれない患者さん。ドレッシング材を外しちゃっても、ケアを怠っても、テキトーな物でカバーしちゃってても、とりあえず、クリニックに来てくれたら、それ相応の対応がこちらも出来るわけで、来てくれないと、悪化しているものなのか、治っているものなのか(それは無い)、見ることが出来ません。

ケアは、本人が出来なさそうだったら、それに合わせたケアに変えることが可能なので、とにかく来て見せて欲しいです。

今週の月曜日に、近隣のファミリー・プラクティス(主治医のクリニックみたいな)の所から送られて来た患者さんが来る予定でした。1時間~1時間半圏内にある病院2つから「もう無理(ノン・コンプライアンスのため)」と断られ、潰瘍が悪化の一途をたどったため、片道3時間の大学病院に送られ、それでは大変すぎるので、まず一度見て、という連絡だったのですが、予約の時間に現れませんでした。

そのクリニックに電話して「no showだったよ」と連絡したら、その看護師が「もう~、本当に困る。このアレンジメントに私、どれくらい苦労したと思う?ちょっとこれから電話する」と一旦電話を切りました。

すぐに電話がかかって来て「怒っておいたから。アクア(私)は、もう貴方には会いたくないと言っている、謝らない限りもう見ない、と言ってたよ、と伝えておいたから。」と言います。え⁈何それ、そういうのやめて。私、言ってないし! と言っても、「いいの、いいの、もうね、それくらい言わないと駄目なのよ、この患者は。」と息巻くだけで…。

その後、すぐに患者さんから電話があって、電話の向こうで、すごい言い訳をして謝っています。私はこの患者さんに会ったこともないし、「That’s ok」とか言ってしまいそうでしたが、一瞬、「ああ、でも、それを言っちゃったらノン・コンプライアンスを助長するのか⁈」と思い、それをこらえました。

でも、この患者さん、その遠い大学病院には、最近きちんと毎週通ってたようなので、やっぱり病院側の対応なんじゃないかな…と思わないでもないです。または、2つの病院に断られたので、後は無いと思ったとか。

その近隣のクリニックの看護師に「で、そのwoundってどんな感じなの?」と聞くと(書かれたものが全く無くて)、「Bad. Really really bad. I just can’t explain. Very bad.」との答え。

何それ…。答えにもなっていないですが、どんなだろう。6日の日に来ます。なんせ、今週はサンクスギビングですので、クリニック開いてません。

大学病院で、4レイヤーのラッピングをされているようなので、週一でいいんじゃないでしょうか、と思います。

ケアのプランは週に2~3回のドレッシング交換が必要と書かれてありますが、そんなに頻繁に片道3時間の大学病院まで行けないので、そちらを一回、地元で一回交換して、ということで、私のタスクは大学病院側のインストラクション通りに、ドレッシング材を交換するだけなのです。でも私はあくまで看護師なので、うちでも医師がちゃんと診ます。

4レイヤーを週に2~3回って聞いたことないけど、こればっかりは見てみないと何とも言えません。しかも、もっと詳しく言うと、4レイヤー+ABD(アブドミナルパッド/ドレッシングと言って、布団みたいにふかふかしたドレッシングです。)と書かれています。(順序はABDが先)。更に、その前にコンタクトレイヤードレッシング使用です。

それを週に2~3回交換って、それ程のドレイネージなの⁈ ほとんどWound VAC使用のレベルです。

患者さんの創傷を見てみたいと言うのは不謹慎だと言われそうですが、早く見てみたいです。

後日

12/6に患者さんが外来に来ました。

正直…それほど凄い潰瘍という印象ではなく、普通の静脈性の潰瘍です。くるぶしより少し上に内側と外側。内側が大きくて、でもそれでも4.0cmx1.5cm。外側は2.0㎝x1.2㎝。

でも、きっとここまで来るまでが大変だったのだろうと思われます。

医師の反応も「どれどれ…。あ、そう。ふ~ん。ま、いいんじゃない?そのオーダー通りで」という感じでした。

wound bedは、ドレイネイジに3,4日さらされていたせいで、ハイパーグラニュレーション気味でしたが、こちらであれこれやってもいけないので、その患者さん用のサプライに入っていたDi-Dak-Sol(希釈したDakin’s solution)をガーゼに浸してしばらく押さえていたらある程度収まりました。

というわけで、4レイヤーのドレッシングをそのままオーダー通り巻いて、帰られました。