Hidradenitis Suppurativa (HS) 化膿性汗腺炎

■ Hidradenitis Suppurativa (HS) について

■ 患者さん1

■ 患者さん2

■ 術的治療について

■ 早い段階での受診及び診断をされますように

■患者さんから「これが効いた」

小児科の女医先生から電話があり、化膿性汗腺炎かと思われる患者さんがいるので外来に来てね、ということでした。ドクターが診断をしてくれて治療方針を決めてくれるので、私はその治療方針に従ってケアをする、という流れです。

小児科は18歳までなので、ティーンエイジャーの子も多くいます。中学生になると、体も大人と同じサイズになる子も多く、今週来られる患者さんも中学生の女の子ですが、体は大人のサイズです。お母さんより大きいです。

私が働いている地域はヒスパニック系の人口が多いからか、hidradenitis Suppurativa (HS)と診断される患者さんはどの方も、ヒスパニック系の若い女性でした。と言っても、そんなに何人も会ったことはなくて、4人くらいです。一人を除いて、他はティーンエイジャーの女の子でした。その「一人」の方は27歳でしたが、「16歳からずっと(症状が)ある」と言っていました。

でも、某リサーチによると、ヒスパニック系人口のHSの罹患率は他のポピュレーションと比べても少ないとされています。

アフリカン・アメリカンと白人は、同じくらいかアフリカン・アメリカンが若干多い程度というリサーチもありますが、白人がかなり罹患人口的に上回っている報告も別にあり、HSの罹患率に関しては、更なるリサーチが必要、ということのようです (Vaidya et al., 2017)。

リサーチする国や地域によっても変わってきてしまいますが、こちらのリサーチでは、African-Americans (1.3%)、Caucasians (0.75%)、Hispanics (0.07%)、そしてその他の人種(0.17%)となっています (Vellaicharmy et al., 2022)。

その他の人種に含まれるのは、アジア人やネイティブ・アラスカン、ネイティブ・インディアン、ポリネシアン系などです。

日本での罹患率はどんな感じでしょう。HSの要因の一つに肥満が挙げられているので、日本でも糖尿病が増えている現実を考えると、HSも増えている可能性もありますよね。肥満の他には、喫煙や菌への感染などが挙げられます。遺伝的要因も関係あると考えられているようですが(Vellaicharmy et al., 2022)、HSの内的及び外的要因に関しては、リサーチによって結果がまちまちな印象です。

Hidradenitis Suppurativa (HS) について

タイトルが「見出し2」でバーンと太字設定にされてますが、化膿性汗腺炎の説明は、次のウェブサイトでとても詳しく説明されていましたので、そちらを読んでいただけたらとてもわかりやすいと思います。私も、自分のリファレンス用としてもパッと見られるようにリンクを貼らせていただきたいと思います。ありがとうございます。

はなふさ皮膚科病院様のウェブサイトはこちらです。

患者さん1

一人の患者さんは、中学生でもう体も大きく、ワイヤー入りのブラをしていました。小児科の先生が「ワイヤーじゃないのにしよう」と言ったのですが、「ワイヤーはワイヤーでもソフトワイヤーで、スポーツブラだから」と着用をやめませんでした。

その次の受診時もきちっとワイヤーブラ着用で、お母さんが横で申し訳なさそうにしていました。中学生ともなると、お母さんの言うことを聞かないなんて、全然普通ですもんね。

ドクターはちょっと困った顔をしましたが、すぐに「じゃあ、こうしましょう。週末家にいる時と夜は、着用しない。それならどうかしら」と提案しました。患者さんは「オッケー、やってみる」と同意してくれました。ドクター、ナイスです!

この患者さんは、結局、その後、抗生物質の服用と、加えて真菌用の処方箋、そして患部をantimicrobial solutionで洗浄することで良くなりました。

この当時は、まだ初期段階でステージ1にもなってなかったかと思います。ドクターが、診断についても「HSと言うのはちょっとどうだろう…」みたいな感じで言っていたかと思います。

今度来られるのは、同じ患者さんです。今度は、他の部位にできたようです。このように、HSは進行する病気です。進行というのは、肌の下に残っていた菌や、同じような環境下でまた菌がトンネル状に繁殖していく感じです。今回は違うドクターです。

患者さん2

この患者さんは27歳の女性でした。前述のとおり、16歳からずっと同じような症状に悩まされていたと言っていました。

外来に来られた時は、患部である脇の下の潰瘍はそれほどひどくなくて、ドレイネイジもそれほどなくてドレッシング材も要らないかもしれない、という感じでした。「今は状態が割といい」と言っていました。

その日診察したドクターは、外科医でした。外科医は「これは術的治療を勧めるので、Plastic surgeryにReferralを出しましょう」と言い、Referralが出されました。その後、来られてないので、手術をされたかどうかはわかりません。

でも、その時、持っていた健康保険が「Medicaid」で、「MedicaidはPlastic surgeryには保険が適用されない、と患者さんが言っていたので、もしかして手術はされてないかもしれません。Plastic surgeryがすべて保険適用外というわけではありません。Plastic surgeonの方でも、HSなら美容整形案件ではないので、健康保険のカバーを確認する作業をしてくれてから手術の日程を組むはずです。なので、最初から無理とあきらめないでほしいです。

HSの術的治療

HSは、上記の患者さん1のように、初期段階なら術的治療でなくても大丈夫ですが、酷くなったらやっぱり手術がオプションに入ってきます。再発率50%とどこかに書かれていましたが、その都度繰り返し抗生物質の内服薬を服用して治療するなら手術をするほうが予後がいいと思うので、是非、お医者さんと相談してほしいです。

HSの治療には、手術オンリーではなく、「手術薬」が効果的なようです。HS用にFDAが唯一承認している薬は「Adalimumab」です(Medscape Education, 2022)。ブランド名は「Humila」です。ルートは、Sub-Qの注射です。

早い段階での受診・診断をされますように

HSは、ティーンエイジャーには、いえ、ティーンエイジャーでなくても「Quality of Life」が低下する病気です。肥満や糖尿病、喫煙など、改善して予防できる要因は多いので、関わる専門分野も様々ですが、是非早い段階で受診して、きちんと診断をもらってほしいと思います。というのは、受診までの時間が平均で2年以上(2.3年)、きちんと診断をもらうまでの時間が数年(7.2年)、きちんと診断されるまでの平均受診回数が数年の間に17回以上、というレポートがあるからです(Medscape Education, 2022)。ドレイネイジがあったら学校行くのも嫌になるじゃないですか…。

患者さんから「これが効いた」

上記の患者さんが受診に来られました。小さかった時点で主治医との定期健康診断の予約がはいっていたようで、タイミング良く診てもらえたようで良かったです。もうドレイネイジも無くなっていて、ひとまず治まっていましたが、患部に毛穴から発展した黒いポツポツがあって、見た感じ、また再発するのが確実な感じでした。今日のドクターが、病名と再発防止の説明を結構長い時間かけて患者さんとお母さんにお話してくれました。

私はちょっと他の患者さんと一緒にいたので説明を聞くことができなかったのですが、終わってから患者さんとお母さんに「今まで大きな潰瘍に発展しないでこられたのは、以前貰っていたソリューションでその都度抑えてこられたからなの。それをもう一度貰いたい」と言われました。それは「0.125% Dakin’s solution」でした。HSはバクテリアのcolonizationを防ぐのが大切と言われています。ドクターの許可が必要なので聞いたら「いいよ」ということだったので、それをあげました。

0.125%Dakin’s solutionの他に、VASHEのソリューションも効くと言われています。手に入りやすさの関係でまだまだ身近ではないVASHEですが、ネットで買うことも可能です。

Reference

Medscape Education, (2022のCE). The patient experience of HS diagnosis
and treatment: a long and winding road. Clinical Handout. https://img.medscape.com/images/981/549/981549-Clinician-Handout.pdf

Vaidya T, Vangipuram R, Alikhan A. Examining the race-specific prevalence of hidradenitis suppurativa at a large academic center; results from a retrospective chart review. Dermatol Online J. 2017 Jun 15;23(6):13030/qt9xc0n0z1. PMID: 28633744. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28633744/

Vellaichamy G, Amin AT, Dimitrion P, Hamzavi Z, Zhou L, Adrianto I, Mi QS. Recent advances in hidradenitis suppurativa: Role of race, genetics, and immunology. Front Genet. 2022 Aug 26;13:918858. doi: 10.3389/fgene.2022.918858. PMID: 36092908; PMCID: PMC9458948. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC9458948/#:~:text=While%20the%20presence%20of%20numerous,et%20al.%2C%202021).