■使用する状況
■上記の使用する状況に使えるAlternatives
■余談 Petroleum Jellyが無くなる時
使用するサプライにも、個人の(私の)トレンドがあって、その時どういう状態の患者さんがいるかにもよるのですが、最近、Petroleum Jellyを使うことはあんまりないな… と感じていました。
でも、サプライルームで先日Petroleum Jellyの補充作業がされていたのを見たので、誰かが何かに使っているんだろう、とは思います。
Petroleum Jellyは、お店ではよくバセリン (Vaceline) として売られていて、安価で大体3ドルとか4ドルとかそういうところです。それに香りが足されたりして別の商品になると、もうちょっと高くなったり、でも、基本的には安いです。
■使用する状況
医療施設に置いてあるPertroleum Jellyは、材料にあれこれ入ってないので、他のものと混ぜる必要がある時などに役立ちます。
例えば、お尻の部分が赤くなって、肌が剥けてしまっている、いわゆるダイパ―ラッシュ、おむつかぶれの状態などです。
肌がむけて(raw skinという状態ですね)しまったら、拭かれたらもう痛くて、なるべく柔らかいものを塗ってあげる必要があります。incontinenceの場合、2時間くらいに一回は拭かれてしまうわけで、その都度こすられたら地獄の痛みですから、なるべく、肌に直接触れずとも拭ける状態がいいです。
痛いから、ってその都度、incontinentの患者さんに痛み止めお薬を飲ませるのは現実的ではありません。
痛いから、事前に薬を欲しがる人もなかにはいます。でも、気持ちがわからないでもないです。痛いんですからね。そしてそれに「はいはい、そうですか」と薬を上げる看護師さんもいます。確かに。
ドレッシング材の交換時の痛みにも、ドレッシング交換時のための痛み止め、と言って、鎮痛剤を出される場合が多いですが、多くの場合は、ドレッシング材の選択と交換の仕方によって、痛みは軽減します。
医療施設では、ドレッシング交換時は、事前に看護師に薬をあげたかどうか確認してから行く、みたいな風潮もあって、私は個人的には、どうなんだろうね、それ、と思います。無駄な薬の投与が多い気がしないでもないです。。
患者さんは、欲しいですか?と聞かれたら「ドレッシング交換=痛いもの」という認識になってしまいますし、当然「じゃあ、下さい」みたいになりますし、私は、術後等の場合を除いて、薬は事前にチェックしたとしても、必ずしもあげる必要もないと思っていて、様子を見ながらで、いいと思っています。
というわけで、話はPetroleum Jellyに戻りますが、赤ちゃんのダイパ―ラッシュ(おむつかぶれ)もそうですが、市販のクリームなどには、このPetroleum Jellyが何%か入っています。多ければ多い程、塗る際の伸びがいい、みたいな感じです。
でも、これが100%だと、逆にベタベタ感いっぱいで通常は現実的ではありません。赤ちゃんやベッドにいる高齢者はまだ良いとしても、動き回れる方は、ベタベタするものをあまりつけていたくもないでしょう。
ベッドで寝ている高齢者の方には、Petroleum Jellyに、肌が剥けた直後くらいは、Zinc入りのBacitracinなどを混ぜて浸けると効果的で、痒みがある場合は、これに少量の(本当に少量で効きます)triamcinolone acetonide を混ぜてあげるといいです(最初の一日二日で痒みは収まると思います)。
いずれにせよ、医師のオーダーが必要です。
このように、Petroleum Jellyは他の薬を混ぜる必要がある場合に使われます。
その他には、リップクリーム代わりに唇につけたり、とても乾燥しているLymphedemaの人の足のコンプレッション時につけたり、単純に乾燥している部分につけることが多いです。
創傷には?
擦り傷 (abrasion) などにつけると傷の治りがいい、と言われますが、Wound healing の観点からは、最初に、まず、創傷箇所の自然治癒作業を先に済まさせて(洗浄してそのまま)から、湿潤環境にしてあげるといい、というレポートがあります。どういうことかと言うと、ササっと直ぐにPetroleum Jellyを塗ってしまうと、本来、人間の体が自然に行うべく創傷治癒の作業が妨げられてしまうので、それを先にさせて(洗浄後何もつけないでおく、ということ)、それからPetroleum Jellyを塗るのは構わない、ということです。
高齢者の擦り傷には、感染防止、創傷箇所保護、そして、クッションの意味もあって、Petroleum Jellyではなく、skin barrier + formのドレッシング材、の方が効果的です。Petroleum Jellyを塗っても、すぐに取れちゃうし、本当に一時しか肌を保護してない感じになっちゃいます。
Skin tearには使用しません。
■上記の使用する状況に使えるAlternatives
Petroleum Jellyは、いろいろな物の材料として入っています。
上で挙げてるように、ダイパ―ラッシュ用の軟膏や、Calazimeクリームにも入っていますし、Bacitracinの抗生剤軟膏にもPetroleum jellyが入っています。
Santylも、エンザイムをちゃんとアクティベイト (activate) しなかったら、それはただのPetroleum Jellyです。Activateがなされなかったら、$200の軟膏の働きは$3の軟膏と同じ働きしかしない、ということです。だからActivateが大切で、だからSantylの患者さんへの教育はチャレンジんングなのです。
というわけで、Alternativesの話ですが、例えば上記ダイパ―ラッシュの状態では、やっぱりCalazimeのクリームです。これをストックするようになってから、Petroleum Jellyの使用頻度が減りました。Petroleum Jellyを使用する場合は、細かいインストラクションが必要だったので(フロアの看護師に)、Calazimeの方が簡単…では実はないのですが、結果的にこちらを使う頻度が高いです。
擦り傷の状態の時は、これも既に述べた通りです。(skin barrier + foam dressing — 主に高齢者の場合)
Lymphedemaなどの場合は、Skin repair creamとか別の保湿用クリームや軟膏でOKです。
余談
娘が学校で習ってきたという話では、石油はこの先45~50年後くらいに地球上からなくなってしまうのだそうです。
そうなんだ… 50年後か…。
そうですよね、その為にも、中国を始め、世界は電気自動車に向かっているわけですし。
Petroleum Jelly とかそれが材料に入っている物は、どうなるんだろう、と思いました。
その時、世界がどうなってるか見たいなぁ…と言うと、「長生きして見て。その為にはちゃんとした物を食べて運動して」と言われました。確かにね…(苦笑)。
でも、ホント…見てみたいです。
創傷ケア商品の値段の高騰とか。あるのでしょうか。