写真(drug.comより)は、Long-Term-Care(長期療養的な)施設等で時々使われる、カルモセプティンという軟膏で、言ってみれば、昔、日焼けなどにべちゃべちゃとつけたピンク色のカーマインローションの軟膏版みたいなもので、特に、尿漏れや尿失禁される方のお尻回りの肌を守る目的で使われることが多いです。
私が今勤務している医療施設や過去に勤務した医療施設では、通常使用はありませんでしたが、去年くらいに入院されたステージ3の褥瘡がある患者さんが運ばれて来た際に、褥瘡部分がカルモセプティン軟膏で覆われていたので、「ああ、この施設ではこれを使っているんだ」と思いました。
レポートによると、ずっとケアを続けて来たが(カルモセプティン軟膏で)、一向に状態が好転せず、むしろ悪化しているので、一旦入院させたい、というものでした。
カルモセプティン軟膏は、Zinc Oxide Ointmentで、日本語で言ったら「酸化亜鉛」の軟膏なのですが、この成分は、主に肌の湿り気を吸ってくれるもので、同時に防菌効果もあります。というわけで、前にも述べたように、主な使用目的は、尿などの水分による肌のブレイクダウンの予防です。
さて、このカルモセプティン軟膏ですが、使い方にちょっとしたコツがあります。
お尻(主に)に厚めに塗るのですが、患者さんのオムツ(*)を取り換える毎に、また、寝たきりの方へベッドバスをあげる毎に、全て、拭き取るのではなく、尿や便で汚れた部分だけを拭き取り、その上に、また新たな軟膏を塗ります。
(*オムツという言葉は医療施設では使われなくて、ブリーフと言います)
この軟膏を全て綺麗に拭き取ってから、フレッシュな肌に軟膏を…と普通は思いますが、それをすると、この拭き取りが難しいカルモセプティン軟膏は、ごしごし拭かないとちゃんと取れないので、逆に肌を痛めてしまう原因になってしまいます。
なので、これを施設で使用する場合は、その使い方について、何度も何度も教育を重ねないといけなくて、それでも使用が大変なので、結果、忙しい大きな施設ではまずほとんど使用されません。どのCNA(看護助手)も大抵使用を嫌がります。
創傷ケア用品・ドレッシング材等を選択する場合には、患者さんの毎日のケアをしてくれるCNAやホームぺるぱーさん、またはご家族の方達に、出来るだけ、負担をかけない物を選ぶべきだと思っています。
そして、そういう観点からすると、このカルモセプティン軟膏は、ちょっと難があります。
Zinc Oxide の軟膏は、Zincが何%入っているか、また、滑らかさ・扱いやすさのための成分として、何がどれくらい入っているかの違いでいろいろな種類があるのですが、コンセプトは大体同じです。
アメリカで赤ちゃんのオムツかぶれに使用されるDesitinという商品がありますが、それなども同じ原理です。ちなみにDesitinにはラノリンという動物性の油分を含みます。
Medline社から出ているCalazime(これもカルモセプティンみたいな感じの商品です)という商品があるのですが、私はこれが割と気に入っています。
褥瘡に使用するか否か、と問われたら。使用しないと思います。
理由は、アセスメントが難しいこと。褥瘡に対しての当軟膏の扱いが難しいこと以前に、使用が一般的ではないこと(コンセプトが違う)。一般的ではないということは、他に一般的なケアがあるということで、ということは、もっと他に適したケアがあるであろう、ということです。
最後に… 「Calmoseptine」は、実際に言う時は、「カモセプティン」と言う感じです。ルはほとんど聞こえない感じで。でも、私は英語のセンスがかなり無いので、周りの人が適当に理解してくれてるだけ…かも!