■PICOドレッシング(陰圧閉鎖療法)#103

Smith&Nephew社から出ている、NPWT(Negative Pressure Wound Therapy)のドレッシングにPICOドレッシングというのがあります。使い捨てなのでNPWTに小文字のsが付いて(Single use の s)、よくsNPWTみたいに書かれています。

PICOドレッシングのパッケージ

中味はこんな感じ。これはパンプ入ってないドレッシング材のパッケージです。

電池で動くパンプで、7, 8 cmくらいのサイズのパンプデバイスが付いてきます。

経験から、Venous Ulcer(静脈性潰瘍)とかにはあまり効果がなく(効果が無いというより、逆効果的な)、ほぼ全てと言っていいくらい、膝や腰の手術(Hip or knee replacement) 後のちゃんと縫合されたサイトに使われています。

大きな違いは、潰瘍のドレイネイジと、術後のドレイネイジのキャラクターの違いです。術後のドレイネイジはsanguineousやserosanguineousで比較的さらっとしているので、PICOのドレッシング材に最初の一日目の段階で割とピチッと吸収されます。

ほとんどの患者さんは、PICOでなくても大丈夫ですが(昔は陰圧閉鎖療法そのものさえ無かったのですしね。何をもって『なくても大丈夫』というかは微妙ですが…、”it helps”とは言えると思います。)、うちの整形外科医の1人は術後のPICOを気に入っていて、膝の手術の後には毎回使用します。

術後1,2日くらいで出るドレナージを吸い取ってくれて、その後は、Secureなドレッシング材、という感じで使用しています。3日目くらいにリハビリに移って来た時点で見ると、どの患者さんも大体、PICOのドレッシング内に、きちっとドレイネージが収まってる、みたいな印象です。以前は、その時点の量をペンでマークしたりしたこともありましたが、1~2日目以降もドレイネージが出続けるケースはないので、マークなんて要らないか、と思って、もう今はしてません。

というわけで、大体サイズは、長方形の長いやつ (4×8″, 4×11″など、サイズは十種類くらいあります。)です。

外科医が気に入って使用する理由として、PICOを貼っていると、入れ替わり立ち代わり担当になる看護師が各自の判断でテキトウなケアを施さない、というのもあるんじゃないかと思っています。

外科医の先生だって、自分が施した手術の箇所を、看護師にテキトウなドレッシング材であれこれいじられたら嫌じゃないですか。

PICOは、大体3~7日間くらいで交換ですが、膝や腰の手術をした患者さんは、通常7日の予定でPICOを貼り、その後、F/Uのアポイントメントで外科医が交換なり、D/C(Discontinue) なりを決めます。

時々、エアリークがあった場合にパンプの消耗が早くなって、5日間くらいで止まってしまうのがちょっと玉に瑕です。「電池の消耗」というわけではなくて、電池を交換しても、電池が原因じゃないので、動きだしたりはしません。デバイスには、内蔵のタイマーかセンサーみたいのがコントロールしているようです。電池自体はまだまだいけるのです。

これはですね…、あまりPICOの人気がない理由の一つでもあります。と思っています。個人的には、なんか…ちょっとせこい作りかな…、と思ってしまいます(Smith & Nephewさん、ごめんなさい。)

簡単な説明書きが、パンプそのものに書かれていたらいいと思うんですけどね。

電池を交換しても動きませんよ、と、看護師に何度か説明はしているし、書いた説明書きも置いているのですが(誰もそんな物読まないですしね!)、毎回「ランプがオレンジで、ちゃんと機能してないんだけど!電池も取り替えたんだけど!これって新しいドレッシングにしないと駄目なんじゃないの?」と言って慌てます。

この整形外科医は、「私の患者の術後の回復を邪魔する者はなにびとたりとも許さない」くらいの勢いでオーダーを出してくるので、担当看護師はどの人も、ちょっとした事でも「この状態っていいの?見てくれる?」という感じで聞いてきます。

「大丈夫、大丈夫。もう切れる頃だから、そのままで。ドレッシングの交換とか要らないから(医師がF/Uを設定しているから)。ドクターもわかってるから大丈夫」と言って、そのままにしておきます。

そのままだと、ライン(チューブ)が付いたメピレックスのドレッシング材みたいな感じです。

Smith & Nephew社のレプの人も、「パンプが止まっても、その後は普通のドレッシング材だと思って使用を継続して下さい。」と言っていました。

というわけで、大体止まるであろう時期を把握するために、パンプにシャーピー(パーマネントマーカー)で、使い始めた日にちを記入しておくのが重要です。この記入がなかったら、上記ドクター鬼のように怒ります(苦笑)。

これもパンプに「日付」を書く場所があったら、もっと「促される」と思います(ベーキングソーダの箱にあるみたいに)。

PICOは、先述のとおり、ジュクジュクのウェットな創傷には不向きです。吸い上げると言っても、陰圧が弱いし(80mmHg)フォームのドレッシングと同じように、ドレイネージは基本的にその局部にとどまっているわけですから、クラシックなKCIのNPWT(125mmHg)とは違います。

使い方によっては、その箇所の肌が結局ドレイネージに触ってるため状態が悪くなることがあります。でも、縫合した術後の創傷は、ドレイネージは最初の1~2日くらいで、そういう意味でも、PICOは、特定の手術の術後のケア適しています。帝王切開の術後にも使用されるようです。

このドレッシング材ですが、以前は、1つの箱に、ドレッシング材が2枚とパンプが一個入っていました。これだと、ドレッシング材がいつも1個余っちゃって、とても不経済なのです。

一年くらい前に(2018年の夏位)、Smith & Nephew社に、パンプの別売りをしてもらえないか、と問い合わせたことがあるのですが、きっと他にも問い合わせがあるのでしょう、「商品コミッティにかけないといけないから、もうちょっと待ってもらえないか」みたいな返事でした。

隣の大きな病院では、使用されずに捨てられる運命のPICOドレッシングが、うちよりも多くあって、これって、地球のごみ的にどうなの?!と思いました。

そして、2019年に入ってから、Smith&nephewさんは、新しい形での販売を始めましたが、やっぱりパンプの単品での販売はなくて、その代わり、「ドレッシング一枚+パンプ一個」又は、従来通り「ドレッシング材2枚+パンプ一個」という形での販売です。

どうなんですかね…、どうしてパンプだけ売れないのかな… と思います。というよりも、この、5日くらいでパッと止まっちゃうパンプ(本当は7日間いけるはず)の性能をどうにかしてほしいなあ。他にもいろいろちょこちょこ改善されているようですが…。チューブを平らにしたり…。平らなチューブは肌にチューブが食い込まなくていいかと思いますが、もともと細いチューブなので、うちでは問題なく使えていました。でも、平らな方がいいことはいいでしょう。また、パンプを入れる小さいバッグを作ったり…。このバッグは…どんな患者さんが使うのかな…?バックは確か$25ですが、保険がバックまでカバーしてくれるのかな?。

そして、このPICOと一緒に割と頻繁に使用されるのが、ACTICOATという商品です。ちょっと手術の箇所に不安要素がある場合、外科医は時々シルバーのドレッシングを併用するのですが、PICOのドレッシングのフォーム部分にドレイネージを吸い上げるには、中に入れるシルバー商品は、メッシュである必要があるので、必然的に、商品はACTICOATの中でもFlex7とかいうのになります。ACTICOAT Flex7のサイトはこちらです。

ACTICOATは、看護師の私が欲しい場合は、それが何故に必要か、どうしてこの商品でなければいけないか、を説明しなければいけないので、そうなると、正直… ま、なくてもいいよね、となります。

というわけで、うちの病院では、ですが、購入者は必然的に外科医のみ、となります。

他に、Smith & Nephewさんがドレッシング内の窪みのパッキング用に推奨しているのが、PHMBがついている俗にAMDと言われるガーゼドレッシングです。Antimicrobial dressingです。これは、実際にはあまり良くなくて、ガーゼに吸われても、それが通過できず、PICOのドレッシング材までドレナージが到達できない雰囲気。

創傷の状態だけでなく、ドレッシングを外した看護師が、「何でこんなガーゼが入っちゃってるの?!ヤーック」みたいな反応をします。

PICOドレッシングでした。