Agの使用は、予防か、治療か、保身か

隣の病院の創傷ケア看護師とお茶をする機会がありました。

大体は、「最近なんかケースあった?」という話で始まります。

彼は数えきれないくらいケースがあるので、大体は「うーん、いっぱいある」という曖昧な答えだけど(単に説明するのが面倒くさいのかも)、私は数がそんなに多くないので、「うん、これとこれ」みたいに、超具体的…。

私の「ケース」って言うのは、折角コラーゲンのドレッシングを使うのを楽しみにしていたのに、患者さんが内科的な事情で、もっと大きな病院に転院になってしまったので、出来なくなっちゃった、残念、というやつでした。

そこで聞かれたのが、「Agの?」ということ。

(Agとは、銀(又はナノ結晶銀) が含まれたドレッシング材で、感染症に効くと言われています)

「違う。普通の」

「何で?」

「何で、って、インフェクションになってないから」

「だって、予防できるでしょ?」

「ん~、予防的にAgにするべきだと思う? だったら… 全部Agになっちゃうよね?」

彼の意見は、出来るだけインフェクションを防ぐべきだろう、というもの。

そうなのかな… そうするべきなのかなあ… と考えてしまいました。

Antimicrobial Stewardship 的には

年に何回かある Antimicrobial Stewardship というコミッティに出席するのですが、病院内にMed-Surgやら、クリニックやら、OBやらORやらあるのにも関わらず、話題はいつも何故か、SNFフロアの尿路感染症 (UTI)や肺炎 (PNA) の患者さんの数と抗生剤の処方について話し合われます。

例としては「Dr. 〇〇〇は、どうしてこの患者にCiproなんかを処方しているんでしょう、とんでもないですね」みたいな…。

何故か不思議なのですが、Med-Surgなどは話題にされず… 何故SNFだけ?

本当に不思議ですけど、まあ、それはいいとして。

コミッティには、wound care nurseだからという理由で出席しているのですが、wound やドレッシング材に関する話題は、そういうわけで皆無です。

それにしても、そのコミッティの影響と、周りの外科医も、創傷の状態が良かったら、Agを使おうという人が「通常は」いないことから、私の頭には、Agのドレッシングという選択肢は最初からありませんでした。傷の状態も良かったですし…。

でも、彼の考えは、出来るだけインフェクションを防いであげるべき、ということ。

彼の考えも、間違ってはいないと思うけど、地球レベルで考えたらどうなのかな、と思います。

でも、この特定の高齢の患者さんと、地球のどちらが大事?と聞かれたら…。

Agドレッシングに関しては、このような(下記)文献がありますが、この文献の中でも、インフェクションになる前の段階での使用は不要、とあります。

では、どの段階で?との質問にも答えていて、「colonization」から「infection」に移行する段階です。

そして、そのジャッジメントが、クリニシャンの腕にかかっている… のでしょうけれど、そんな腕はこれからの時代は不要なのです。

いずれ、いずれと言うより、とても近い将来、バクテリアの量は、テクノロジーの判断にお任せ、となる日が来ます。

カメラ的なものでパシャ、っとすると、ソフトウェアが、Agをその段階で使用するべきかどうかを判断してくれる、ということ…。

そうなると、予防か、治療か、はたまた保身か、なんて、そんなことを思う必要さえ無くなるわけで…。

Reference

Woodmansey, E. J. & Roberts, C. D. (2018). Appropriate use of dressings containing nanocrystalline silver to support antimicrobial stewardship in wounds. Int Wound J. 2018 Dec;15(6):1025-1032. doi: 10.1111/iwj.12969. Retrieved from: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/iwj.12969