新型コロナ皮膚症状 vs ケネディ終末期潰瘍 vs 褥瘡/深部組織損傷(DTI) 比較

新型コロナウィルス(COVID-19)感染の身体症状には、皮膚症状も含まれます。体の様々な部位に発疹が出たり、手足の指先が紫がかったようになったりします。

皮膚症状について写真付きで説明されたニュースサイトがありましたので、興味のある方はご参照下さい。(https://news.yahoo.co.jp/byline/atsushiotsuka/20200424-00171478)

先日、新型コロナ感染のために入院してきた60代の女性患者さんは、末期のがん患者さんでした。

入院当初、臀部に1㎝未満の小さなステージ2の褥瘡がありました。通常ならば、ベッドの上でのポジションを変えたり、動いたりすると間もなく治るような小さな褥瘡です。しかし、患者さんが横向けに寝ることを嫌がり、また、ベッドで寝た状態から起き上がることさえも嫌がるため、褥瘡は徐々に大きくなっていってしまいました。

そして、入院から3日後、患者さんの家族の訃報が入り、患者さんは精神的にもますます動かなくなってしまいました。がんの治療は一時中断されていました。入院から約一週間経った頃、夜勤の看護師からの報告で、患者さんの尾てい骨部分に紫色の変色があることがわかりました。

翌朝、患者さんの皮膚のアセスメントがなされました。尾てい骨部分の皮膚は数㎝幅に渡って紫色になっていました。その症状から、下記の3つの可能性のうちの1つになるであろうことが考えられました。

  1. 新型コロナウィルスによる皮膚症状
  2. ケネディ終末期潰瘍
  3. 褥瘡(深部組織損傷/DTI)

上記3つは見分けるのが難しいというレポートが多く見受けられます。大きな違いは、①と②は、避けられない(unavoidable)潰瘍または皮膚症状であることです。③は多くの場合、ポジショニング等で避けられるとされています。避けられるか避けられないかは、保険サイドから見ると大きなポイントなので、紫がかった皮膚の色から安易に③で記録を残すことは危険です。施設側のケアが悪かったからじゃないか、という指摘をされる結果になるので、患者さんの病状の全体像や皮膚症状をよく観察する必要があります。

①と②の違いですが、②は多くの場合、ほぼ左右に橋がかかるように発生する点です。蝶々の形と言われることもあります。また、進行が早く、何時間かの間にサイズが大きくなることがあります。

その他の違いとしては、皮膚のどのレイヤーに症状があるか、という点です。①の場合は深部ではなく、上層部であるのに対し、②は深部の損傷を含む「場合も」あり、③に至ってはその名の通り深部の損傷です。

②で記録を残す場合、褥瘡と違い、記録に残す前に医師に必ず確認します。特に、Advance practiceのproviderでない看護師の場合は、必ず。何故なら、②は内科的要因から来る「臓器としての皮膚」の損傷ということで、医師の見解も必ず求めます。加えて、部署のマネージャーやケースマネージャーともコミュニケーションを取るのが賢明です。終末期(terminal)という呼び名がついているだけに、記録は慎重に行います。

英語版ですが、こちらの記事も参考になるかと思うので、興味のある方は読んでみて下さい。

Reference

Scarborough, P. (2021). Awareness of COVID-19 skin and mucosal manifestations. https://www.hmpgloballearningnetwork.com/site/twc/awareness-covid-19-skin-and-mucosal-manifestations