看護・介護現場 腰痛から身を守る為のリフトの導入

3年ほど前は、腰痛で職場を離れた看護助手(介護職)が何人もいました。そして、私の知る限り、少なくとも2人が腰痛で労災の申請をしています。結果は知る由もありませんが、いずれにせよ、看護・介護の現場には腰痛が付き物です。

2,3年くらい前から、看護の現場には、患者さんの移動には、写真のような「リフト」が導入されています。ホイヤーリフト (Hoyer Lift) と呼ぶ場合もあれば、商品名で「マキシ」と呼ばれたりもします。

リフトでの移動時には、機種に対応しているスリングに患者さんを包み、リフトで持ち上げます。安全のため、リフト使用時は、スタッフは2人でケアにあたります。

Hoyer Lift

アメリカ看護協会 (ANA, The American Nurses Association) は、スタッフ自身の安全確保のために、35 lb. (15.9 kg) 以上の重さの物を手で持ち上げないように、と言っています。これは、重い荷物等というよりは、患者さんの身体のことを指していて、趣旨としては、自力で移動できない患者さんのベッド/車椅子間の移動にはリフトを使用しましょう、ということです。

患者さんを抱き起したりする際、上半身の重さは全体重の約半分にあたりますので、ANAが定める35 lb.をゆうに超えてしまいます。

ちなみに、足全体の重さは全体重の20%くらいにあたるようなので、体重が70㎏の患者さんだと、約14㎏ですね。こちらのウェブサイトを参照させていただきました。

しかし、移動以外にも、ベッドで仰向けから横向けにポジショニングするような作業でもかなりの力を要する場合も多く、リフトが導入されたからと言って、私達の怪我の危険性が消えるわけではありません。

肥満の患者さんをベッドの上で15㎝くらい移動させるだけでも、ドローシートやグライディングシート無しではとても難しいです。

ポジショニングシート。シートの上(写真では横端)が丁度肩のラインに来るように敷きます。

アメリカでは、例えばMedline社から出ている「Comfort Glide」などがポピュラーです。

家庭で、このような用品が無い場合は、通常のシーツの上に、腰の部分あたりに横にシーツを畳んで敷いてドロー・シーツとして使用します。尿漏れパッドなどを敷く場合は、大き目のを敷くとポジショニング時に便利です。それでも介護者の身体的負担は大きいですが、何も無いよりはマシです。

リフトの導入で、労災申請はますますハードルが高くなっていく筈なので、自分の身は自分で守るべく、使える用品やボディメカニクスを知ることは、看護介護の現場では必須です。

参照ウェブサイト (Reference)

http://robslink.com/SAS/democd79/body_part_weights.htm