「システム」看護の視点から

目次

「システム」とは

システムというと、コンピュータ用語のように思われがちですが、医療現場においては日常的に使用される単語です。

病院のウェブサイトに行くと、〇〇病院(”〇〇 Hospital”)という表記ではなく、”〇〇 Healthcare System”という風に書かれている場合が多々あります。

病院などの医療施設内では、保険管理や電子カルテ、危機管理、ラボラトリーやリソースなど、患者さんのケアに関して様々な部署が関わっています。そして、その全てが絡み合って機能している状態をさす言葉を「システム」と呼びます。システムが機能している、機能していない状態、などのように使われます。

「Healthcare System」は、自治体、州、国、または世界全体に対しても同様に、各レベルを表す際に使用されます。例としては、「The US healthcare system」とか、「Healthcare system in Japan」という風に使われます。日本でも、国、県、市、町、など、各レベルにおける医療システムという意味で同様に使用することが可能です。

「システム」と患者

朝、患者さんの部屋に行くと、特に高齢者が多い、Long-Term Care Unitなどでは、各患者さんが各自の「システム」を持っていることをスタッフは把握しています。早い話が朝のルーティンです。朝だけではなく、一日に渡りルーティンがあることが多いのですが、スタッフがそれを崩すと、患者さんは時には不機嫌になります。

スタッフが入浴を促しても、その方は、まず、〇時頃にコーヒーを飲み、その後、残った砂糖のコブクロを容器にしまう、等々です。医療施設に限らず、年齢も関係なく、多くの方は、このような日常のルーティンをお持ちでしょう。それをシステムと呼びます。

今日の朝のルーティンが多少狂ったからと言って大事になるわけではありません。しかし、このようなルーティンは、特に高齢者の方や、認知症を患う方々にとっては、身心を平穏に保つための割と重要なポイントとなります。

会話としてはこんな感じです。

スタッフ「〇〇さん、はいお薬ですよ。」

〇〇さん「待って、焦らせないで。まず、〇〇をして△△をして、それから水を口に含んでからでないと」

スタッフ「そうでしたね、〇〇さんの朝のシステムでしたね」

みたいな感じです。

これを無視したり、リスペクトせずに急がせて投薬を促したりすると、薬の服用を拒否したり、その後の入浴を拒否したり…ということに繋がったりもします。上記の場合、看護師さんは、看護助手さんに予めお水の部分まで出来るだけ終わらせておいて貰えると助かりますのでスタッフ間のコミュニケーションが大切です。

一見すると患者さんの我儘のように感じられたりもしますが、そこを理解してあげることで、患者さんや施設の利用者さんに対して、よりスムーズで気持ちの良いケアを提供することができます。

職場における「システム」

職場において、何か問題が起きた場合は、問題を起こした人に対して何か言う前に、「システム」に不具合が無いかを考えます。

例えば、リフト使用時について。体重が重めで自力でベッドから車椅子に移動できない患者さんには、全員、リフトという器具を使用することが義務付けられています。これは、スタッフの腰痛など仕事中の怪我を防ぐとともに、患者さんの安全のためでもあります。これによって仕事中の腰痛というような労災申請は、そう簡単に認められなくなりました。

このリフト使用時には、スリングという患者さんを持ち上げるものが必要です。リフトとスリングは、きちんと合ったものを使用しなければいけません。かなり以前になりますが、1人のリフト使用の患者さんが、繰り返しスキンティアを起こし、スタッフがどのようにリフトを使用しているのかを現場で一緒にやってみました。そしたら、スタッフ曰く「忙しい朝の時間に、合うスリングが無いから、その時にある物を使用してる」と言い、それが原因であることがわかりました。

そのシステムを改善しないことには、いくらスタッフにガミガミ言ったところで、何も変わりません。

このように、「システム」という単語は、看護の現場では実に頻繁に使用されます。そして、前述のとおり、看護だけでなく、家庭でも学校でも、どんな場所でも、物事を機能させる必要がある場面で使用されるkey term (鍵となる単語)です。