■退院時のサプライ
■代用品を探す理由
■退院時のサプライに代わるもの
今日、クリニックの女医さんから質問されたので書いてみたいと思います。
女医さんの息子さんが、怪我で入院して、おととい隣のトラウマ病院から退院してきたのですが、病院から渡されたwound care products に代わるものが無いか昨日から調べている、とのことでした。
代用品を探しているわけは後で書きますが、とにかく、それでいいのかどうかを聞きたい、ということでした。
wound careは専門外でも、女医さんなので、「そうよね、そうよね、そうだと思った」みたいな感じでしたが、同じケースもあるかもしれないので、書いてみたいと思います。
傷は、1枚の写真を見ただけですが、広範囲にわたるアブレイジョン (abrasion)/擦り傷、という感じでした。
入院中に回復に向かった後の写真かとも思いますし、入院時はもっと大変だったのだと思われるのですが、パッと見、広範囲なので痛々しくても、abrasion的な状態になったので、退院になったのかな、という感じ。
■退院時のサプライ
- Xeroformの大き目のシート
- Santylのointment (サンティルの軟膏)
- Wound WashというNormal Saline (生食) のボトル
■代用品を探す理由
Xeroformの大き目のシート
退院後、一回、ドレッシング交換を家でしたとのことですが、痛がって、母としては(女医さん)ドレッシング交換が辛かった、とのこと。
剥がす時に、貰って来たWound Wash で濡らしたけど、あんまり効果的じゃなかった、とのことでした。
Xeroformは、開けた時は、ベタベタしてて、その為、occlusive dressingという呼び方をされる場合もあります。でも、乾くのが意外と早くて、乾くとガーゼなのです。乾かなくてもガーゼですが…。ガーゼは傷にくっついて、剥がす時に超痛いのです。
ドレッシング交換の前に、ドレッシング交換が痛いから事前に飲むとよい、と言って、痛み止めの薬を勧められたりしますが(市販のTylenol錠とか)、痛みを感じいくらいになるには、もっと強い薬が必要で(Narcoを2錠くらい)、Tylenolくらいじゃ、あまり効きません。それより、痛くないドレッシングにする方が効果的です。
痛くないドレッシング材を使用したら、不必要な強い鎮痛剤を飲む必要もなくなります。
Santylのointment (サンティルの軟膏)
女医さんは、Santylは聞いたことがあるけど、XeroformとSantylを同時に持ち帰って(家族が)、「この2つを一体どうするのか?」となった、ということでした。
更に、Santylは、ご存じの通り、高額商品で、しかし、一度に使用する量も、厚塗りが基本なため、結構な量になります。そのため、広範囲の創傷に使用する場合は、チューブがすぐになくなるのです。Santylを処方される場合は、ちゃんと創傷の面積にたいする量のチャートがあって、それに従って、処方されたりするのですが(多くの場合はテキトウです)それにしてもあれだけの広範囲となると相当量が必要です。
Santylは基本的に保険でカバーされる商品ですが、100%ではありません。
特に、低所得者じゃない場合、ほぼ全然カバーされません。この女医さんはそういうわけで、$200払ったようで、これじゃ、使用量が多すぎて… 高額すぎて、昨日から何か無いか探してるけど、ということでした。
Santylを好む医師も多くいるので、その場合は、勿論使用します。入院中の患者さんだと、自分が監視できるので私個人的にはOKなのですが、外来となると結構大変です。保険が100%カバーされる人も多いので、それはそれでいいですが、サンティルは、使い方にコツがあって、それは、その都度Activateする必要があることです。
それをきちんと出来ないと、高額なのにケアが進んでいかない、という結果にもなりかねないです。(言ってしまえば、$3のpetroleum Jellyに$200払うようなもの)
また、医師の中には、Xeroformの黄色は、特に薬でも何でもない、と言い切る方もいて、それはそれで別にどのように思おうが私的にはいいのですが、Xeroform+Santylを合体した場合、Activateがうまく機能しないのではないかと思います。
SantylのActivateは、基本的には、濡らす、というか、湿らせる、というか、モイストな状態にするとOKです。でも、Xeroformでは、モイストな状態ではあっても、Activate用のモイストにはならないと思うのです。
Wound WashというNormal Saline (生食) のボトル
Wound Washは、市販のNormal Salineの創傷用クレンザーです。中味は、いわゆる生食とは同じではなくて、保存料とかいろいろ入っていますが、それ自体は特に問題はありません。
無くなったら同じのを買わないといけないのか、と、よく患者さんに聞かれますが、傷の状態が良ければ、普通の水で大丈夫です。勿論、同じ商品を購入したい場合は、それも全く構いません。
市販のボトルのミネラルウォーターでも大丈夫です。水道の水でも良いくらいです。でも、傷の状態が悪い場合や、悪化している場合は、水がどうのとか、そういうレベルではなく、クリニックに出向いて医師に診てもらって下さい。
■退院時のサプライに代わるもの
Wound Wash に関しては、上記の通りです。ちなみにこの女医さんは、「Sterile Water」を使います。
Xeroformの代わりは、non-adherent Stripsというドレッシング材を使用したらOKかと思います。
Xeroformがガーゼなのに対し、そちらは、ナイロン(ナイロンじゃないと思いますが)っぽいSyntheticな感じのドレッシングです。
これも、全くくっつかないわけじゃないです。ちょっとはくっついたりします。が、Xerofomのくっつきとは比べ物になりません。
外科医はよくこれを「Adaptic」と呼びますが、本当のAdapticはもうちょっと高価な純正版です。というとnon-adherent Stripsに悪いですが…。
そしてSantylに代わるもの、ですが、Santylは、市場シェア100%の製品なので、厳密には同じ働きをするものありませんが、この女医さんの息子さんの場合、又、この世にサンティルが存在しないと仮定した場合、やっぱり、Bacitracin軟膏です。市販のTriple Antibiotic ointmentなんかも同じ類です。
non-adherent Strip には、薬はついてませんので、それに、tongue-pressor等を使って、軟膏を塗って、それを肌に当てます。薬と薬を混ぜるということも無くなり、「これをこれを一体どうするの?」みたいにもなりません。
最初は、1日2回の交換、と言われるかと思いますが、段々、一回でもいい感じになります。
(使用面積によっては、一個一個が小さいパック(0.9g)になっているものが使いやすい場合もあります。また、好みで、チューブよりも小さいパックを使用したい、という方もいます。)
というわけで、まとめ、としては、下記のようになります。
1. Cleanse wound with normal saline (この場合は、実際には、濡らしたガーゼでちょっと綺麗にするくらいで、じゃぶじゃぶ洗うとか、上からかける、とかそういうことにはなりません)
2. Apply Bacitracin ointment to non-Adherent Strips dressing, then apply to wound
3. Cover with dry gauze(場所によっては、Kerlixという包帯で巻いたりします)
女医さんは「ああ、もう、本当に可哀想なことをしてしまった…(痛いでしょうにXeroformを使用してしまって、という意味で)」と言って…。
第三者から見れば、Abrasionっぽい状態に一回くらいXeroformを当てがったからと言って、どうということも無い…と思うのですが、お母さんというのはそんなものでしょう!
ちなみにこの女医さんは、小児科のお医者さんです。見渡すと… うちは、小児科は女医さんがほとんどです。
退院時に渡された物が手に入らないとか、使用に難がある場合は、病院に遠慮なく問い合わせたら良いかと思います。迷惑でも何でもないですから…。