■Kennedy Terminal Ulcer (死期が迫った患者さん特有の創傷)ではなかったケース #55

題名にありますように、ケネディ・ターミナル・アルサーという名の創傷ですが、仙尾骨部分に見られる紫色の大きな蝶々のような形の褥瘡です。ターミナル、というのは、「終末期」を示していて、それが見られると、大体患者さんの状態が死期に近くなっているということのようです。

私は、この褥瘡を見たとしても、この呼び名は心にしまっておくことにしています。

過去に何度か出会ったことのある創傷なのですが、一番最初に見たのはERで、見た目が本当に教科書通りでした。

その時、同行していたご家族の方に「家でどうやってケアすればいいか教えてもらえますか?」と聞かれて、一瞬答えに詰まってしまったのを覚えています。

Comfort Care (緩和ケアのように)のようにしたらご家族の方が悲しむだろうか、とも思ったし、それよりも、果たしてこのまま家に帰ることができるのかな…と思ってしまったのです。

他には、話も出来ていた患者さんがあれよあれよという間に弱ってしまい、それに伴い、褥瘡もみるみる数日で悪化していった、というケースもありました。

そして、他のケースは、最近あったケースですが、私がそうかと思ったら医師に「いや、これは違うでしょう。きっと違う」と言われて、その後、その医師がおっしゃる通り、患者さんの非常に弱った状態に反し、創傷は回復してきました。医師に対して、改めて尊敬の念。

いつも反省することの多い毎日ですが、このケースに関しては本当に反省しました。でも、同時に、回復してきたのを見てすごく嬉しかった。

ICUに運ばれて、その後、もっと大きな病院に運ばれて、数日後にまた当病院へ戻ってきたのですが、いいケアの元ではこんなにも回復できるんだ、と感動すら覚えました。

この患者さん、数日前にICUでintubation(気管挿管)までされたのに、今日は、酸素マスクも外しちゃって、呼吸はもう全く平気な様子。

すごいな~、人間って。

IVのラインを抜いた際に腕に出来てしまった深いスキン・ティア(皮膚裂傷)も昨日からの一日で三分の一のサイズに。これもびっくり(何故にこんなに深い傷になってしまったのかが不思議です)。

特に食欲があるわけでもなく、動くわけでもないのに、しかも高齢でこの回復力はすごいなあ、とびっくりさせられます。でも、本当に嬉しくなってしまいます。

「うわ~、嬉しい。また良くなってる。」と言ったら、かすれた声で「うるせーよ、ジャパニーズ」と言われてしまいました。(笑)

でも、病室を出る時は、ちゃんとお礼を言ってくれました。ホントに嬉しい。