スマートドレッシング:ハイドロジェル Future Smart Dressing:Hydrogel

これから進化していくであろう創傷ケア商品の1つに、ハイドロジェルが挙げられます。しかしながら、私の周りでは、ハイドルジェルの利用頻度は、現段階ではそこまで高くないです。例えば:

Hydrogel

ハイドロジェル (Hydrogel)

Dakin’s Solutionのwet-to-dryパッキングを使用している方が、ハイドロジェルを同時に使用することで(wound bedに最初に置いて)ドレッシング交換時の痛みを軽減できるとして、患者さんの強い希望で使用していますが、医師が特に処方したわけではありません。

ハイドロジェルのシート状のドレッシング材は、患部をクールダウン出来るとして、放射線治療後に使用したりする場合もありますが、ドレッシング材そのものがハイドロな感じで柔らかく、動いてしまうので、患者さん自身に負担をかけてしまう場合が多いです(取り扱いが難しい)。

では、何故、ハイドロジェルが未来のスマートドレッシングなのか、という話です。

何故、ハイドロジェルが未来のスマートドレッシングなのか

ハイドロジェルの使い勝手は「pH」の話無しには語れないと思います。pHのHは水。ハイドロジェルそのものと言っても過言ではありません。pHは創傷の治癒過程で注目すべきポイントです。が、pHについては改めて触れるとして、ここでは何故ハイドロジェルがスマートドレッシングと呼ばれるのか、です。

キーポイントは2点。

1)pHを関知するセンサー機能を持ち、かつ、2)抗菌作用を持つdrug等のキャリアーに成り得る

という点です。

1)pHを関知するセンサーは、例えば、似たような機能としては、赤ちゃんのおむつの色が変わることで交換時を知ることが出来る、とか、ドレッシング材の色が変わる事で交換時を知ることが出来る、などがあります。創傷ケア商品に「Iodosorb Gel」というのがあります。Gelという名前ですが、実際はペースト状の見た目で、色は茶色です。でも、wound bedに置かれてから何時間かすると色が白く変わっていきます。

pHは、創傷の治癒過程に密接に関係しますし、治療に最適なpHも決まっています。となると、それを関知できる賢い商品は重宝されるでしょう。そして、そのような機能を併せ持つことがデフォルト化していくでしょう。

2)ハイドロジェルのボディはほとんど水分ですので、他の薬品等との「drug interaction」の心配がありません。シルバー(Ag+)が加わったり、メディカルハニーが加わったりすることが容易に可能です。そして、それらは既に商品として存在しています。drugの浸透速度をもっとコントロールすることで、slow-release (効き目がゆっくり)が期待されるドレッシング材を作ることも可能です。

RegranexなどもHydrogelを利用したslow-releaseの薬です。

■糖尿病性潰瘍の治療にレグラネクス (Regranex) #137

Silvasorb Gel

更に、ハイドロジェルは比較的安価なので、利益率も高く見込むことができるのは企業にとってもインセンティブです。

このように、これからは、アセスメントと治療に役立つスマートドレッシングとして、ハイドロジェルを使用した商品が開発されてくるでしょう。楽しみです。

参考文献

Kuo, S., Shen, C.-H. Shen, C.-F., & Chen, C.-M. (2020). Role of pH value in clinically relevant diagnosis. Diagnostics, 10(2), 107. DOI: 10.3390/diagnostics10020107