■アメリカの看護師事情:看護師の仕事内容★病院の一般病棟 vs 高度看護施設 #14

アメリカの病院滞在日数は、日本に比べ短めですが、昨今はそれに拍車がかかり、高度看護施設(Skilled Nursing Facility)の需要が高まっています。そして、SNFに求められる看護内容がより高度になってきています。

需要の高まりと共に、以前は点滴などの取り扱いがなかった施設まで、SNF化せざるを得ない状態になってきています。そして、SNFに於ける看護内容が、病院の一般病棟(Med-Surg)とほぼ同じ雰囲気になってきています。

しかしながら、受け持つ患者数は、雲泥の差であることには変わりがありません。病院の一般病棟では、一人の看護師の受け持つ患者数は通常は数人以下です。患者数の少ない病院では、一人の看護師の受け持つ患者が、1~3人なんて日もあるくらいです。

それに比べ、SNFには、中期・長期で滞在する人達が多くいるため、受け持ち患者数が減るなんてことはまずほとんどありません。大きな施設では、一人の看護師が15~20を見ます。SNFなので、患者さんというよりは、そこの住人という感じだとも言えますが、どの人にも急な体調変化の可能性はあります。

大変なのは、SNFで勤務するLVN(准看護師)の受け持ち分までRN(正看護師)がスーパーバイズ(監督)する必要があるという点です。LVNは、薬の投与など一通りの看護業務はこなすので、何事も無ければそれで良いのですが、患者の急変や死亡、転倒や患者同士の喧嘩などが起こった時、LVNの資格では出来ない業務は全てRNがすることになります。

想像してみてください。

セクション1に30人(RN+LVN、各計2名)、セクション2に40名(LVNが1名)、セクション3に40名(RNが1名)いた場合、この中に、IVの抗生剤を投与されている患者が10人くらいいたとしましょう。

2名のRNで、自分達の持ち場の薬の投与その他の業務に加え、IVのバッグを各患者に4時間毎、6時間毎、8時間毎、12時間毎など、様々な時間にセットしまくらなければいけない状態+何らかの理由で、IVのラインに異常が出たり、患者さんがラインを引き抜いてしまったり、もうそれはそれは大変です。

しかも業務は、その他に山のようにあります。他のセクションのLVNから、「今日来た患者さんのWound VAC スタートして~。私はLVNだから出来ない。サプライは部屋にあるから。」とか突然言われたりします。そして、患者の数だけ、必ず何か起こるんですから、もう休憩する暇なんて無いくらいです。

コードブルーになっても、自分たちがラピッド・レスポンスの人達だし(爆!)

これは、新卒の頃は本当に怖かった! サクションとか瞬時に用意する訓練なんて看護プログラムではされて来てないし、エマージェンシー・カートの出し方も習って来てない。救急の人達が来てくれるまでの数分間、超高速で動かないと駄目でもう~。

だから、SNFの形態にもよりますが、SNF勤務は病院以上に鍛えられるような気がします。

そういう状態って、患者さんの安全上、どうなの?とお思いになるでしょう。それはやっぱり時間があってゆっくり患者さんと向き合って…と出来たら理想だとは思いますが…。

でも、仕事場に着いてロッカールームに向かって廊下を歩いて行く途中にも、患者さんの様子を目や雰囲気で確認しながら、ざっとラウンド(見回り確認)しながら、皆んなそんな感じで仕事に入ってると思います。

というわけで、SNF勤務の看護師は、早々に病院勤務に移りたくなるのが普通です。

そして、面接で、必ず言われること… 「SNF勤務経験者はタイム・マネジメントが強みだよね」「勿論です(マジで!)」