質的研究 (qualitative study) は、昔からの研究の王道的な量的研究に比べて、何年もの間、劣るとか、研究とは言えない、とか補助的とか、量的研究の前段階のデータ収集、とか言われてきましたが、今日では、れっきとした研究のタイプとしての位置を確立しています。
量的研究では主にリサーチ結果を数値で表すのに対して、質的研究では、数値に加え(数値が無い場合も有ります)、インタビューした内容など、文章的な内容が盛り込まれているのが特徴です。
この度、褥瘡予防/管理(PIPM) に関する、質的研究を読む機会がありましたので、ちょっと紹介したいと思いました。
何故かと言うと、Discussionの欄に、「褥瘡予防/管理に対する看護師の体験や意見に関するオーストラリアでは初の質的研究」と書かれてあったからです。
「へ~、初なんだ~」と思って…。
インタビューを受けた看護師は全て女性で、年齢の情報は無く、勤務年数のみです。
この「女性のみ」というのは、研究のLimitations(欠点)として挙げられていて、オーストラリアでは全看護師の約10%が男性なのだから、と加えられていました。
面白いと思ったのが、質的研究に使われていたデータ分析用のソフトウェアです。3ページ目のData Analysisの所に書かれてあります。
このソフトウェアは、「NVivo 10」という名前で、会社のウェブサイトでインターフェイスのイメージを見ることができます。
「NVivo 質的データ分析支援ソフト」
http://www2.usaco.co.jp/shop/pages/product_nvivo.aspx?gclid=Cj0KCQjwnpXmBRDUARIsAEo71tQg5JUVBQJGV37jCtqz0JQOmtFKHJX4op5bMzE3ccf37bqrOA0WyC4aAu6kEALw_wcB
インタビュー内の発言を文章化した際に、発言内容にある共通した単語とかを拾っている感じです。じゃ、同じ内容でも、全てにおいてあまり使われないような単語を使っていた場合は、あまりカウントされないとか… どうなんでしょう。
このソフトがどのように使われるのか見てみたいなあ。
データ的には、(看護師曰く)「動けない患者さんや超肥満な患者さんを、褥瘡予防目的で2時間に一回体位を変えるのが大変」とか「わかっているけど他にやることが多すぎる」とか、「書類が多すぎ」とか、聞いたことのあるような内容が多数挙げられています。
個人的に思ったのは、褥瘡が一旦できたら要記録かもしれませんが、褥瘡予防中のケアはそんなに書類が多い、ということは無いし、この看護師さん達の言っている内容は「ある意味」興味深いと思いました。実際の現場はどのような状況になっているのかな、って。
この研究は、ジャーナル名が「Collegian」となっているので、大学系の研究だと思います。
そして、そのせいか、(ほとんど?)全てのValidity系を盛り込んでいる内容になっているんじゃないかと思います。多少のlimitationは、もしかして意図的に?と思ってしまったくらいです。
多くのReliability, validity などを盛り込んだ質的研究のサンプルとしてはいいんじゃないかと思ってあげてみました。
Barakat-Johnson, M., Lai, M., Wand, T., & White, K. (2019). A qualitative study of the thoughts and experiences of hospital nurses providing pressure injury prevention and management. Collegian, 26(1). https://doi.org/10.1016/j.colegn.2018.04.005. Retrieved from: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S132276961730313X
(※ウェブ上で見ると、やけに見にくいですが、ダウンロードして見ると、まとまってて見やすいです。)