■鎮痛剤と創傷の治療 #88

RN(正看)の試験(NCLEX)の質問にこういうのがあります。

問:「患者が痛みを訴えています。一番最初にすることは何ですか?」

NCLEXの設問は、基本的に四択。 又は、「Select all(当てはまるもの全てに)」です。

上の質問が四択だとして、選択肢にあるのは、アセスメントだとか、MARを調べる、だとか、いろいろあると思いますが、正解は:

「患者(の訴え)を信じる」です。

創傷の患者さんで、以前にも書いた青年。

External Fixator(骨を貫通して固定している金具)をしている人で、痛みがあります。

痛み止めは、6時間毎のハイドロコドン(Narco)(スケジュールではなくて、要請があったら)と、その中間にTylenolがあります。以前より少なくされたようです。

部屋を訪れたら、痛くて顔をしかめていましたが、薬は二時間前にもらったからもう貰えない、と言っていました。

「でも痛いんだよね?」って聞いたら「すっごく痛い」との返事。

そして「でも、貰えないものは貰えないから我慢するしかない。から、いいよ。大丈夫。」とのこと。

でも、どう見ても大丈夫には見えません。

痛みを我慢すると、血流が悪くなって、創傷の治りに影響するので、痛みはできるだけ無くして、身体全体がリラックスできたほうがいいです。

それに、何よりも、患者さんの痛みに対して、看護師は何かしてあげる義務があります。

薬が効かなかったら、ちゃんとそれを記録して、医師に説明して薬を見直してもらう必要があります。

Painはもう何年も前から、VS(バイタルサイン/血圧等)と一緒のレベルでアセスメントをして対応する項目となっています。

「ちょっとナースに聞いてくるから待っててね」と言って、ナースステーションに行き、「痛み止めがあるならあげて欲しい」とお願いしたら、「無いよ。2時間前にもうあげてるから。」と言います。

「他のPRNは無いの?」と聞くと「無いよ。彼はドラッグ中毒だったから、あげたらどんどん欲しがるから」と。本当はスケジュールであげる薬の他にPRNと言って、必要な時だけあげられる薬が必ず出てる筈なんですが…。

「じゃ、痛み止め効かないってことだよね?じゃ、それをちゃんと記録しないと」と言うと、また彼が以前ドラッグをしていた過去がある旨を語り始めました。

そのようなsubstance abuse 歴があると、看護師のbias(偏見)やラベル付け(その人はそうだと決めつけてしまう)がどうしても出て来てしまいます。そうあってはいけないのですが、現実問題として、現場では多々あります。

そのような患者さんのケースでは、担当の医師が専門医にお願いする場合もありますが、大概の場合は、鎮痛剤の処方は担当医がやります。ちなみに、外来の場合も、専門医に回さない場合、又は、専門医が見つからない場合は、主治医(PCP)がすることになります(鎮痛剤の処方)。

いずれにせよ、創傷の治療、特に長期に渡るような創傷の治療に鎮痛剤を処方する場合は、その患者さんにドラッグの依存症や依存症歴がある場合は、とても難しいケースになります。

しかしながら、現実は、割とさらっと処方されてしまっているケースがほとんどです。

とにかく、彼が依存症だった過去や、もしかしたらその経緯の延長で薬を欲しがるかもしれないことは、担当医師や専門医が判断する内容であって、目の前で痛みと戦っている患者さんのニーズは対応されなければいけません。看護師に出来る事は、観察をしたり、薬以外に出来ることを模索したり、記録をしたりすることで、でも、それがなかなか難しかったりするんですよね…。

上記の患者さんは、精神科医に診てもらった後にセラピーを受ける気はある?と聞いたら「受けてみたい」と言うので、担当医師にお願いして、リファーラルのオーダーを出してもらいました。

セラピーは、一般的にどんなセラピーでもそうですが、当の本人の受け入れ体勢が無いと、始まりません。

受けてみたい、と言ってもらえてホッとしました。