■創傷ケアは「3つの事をするだけでいいから!」#87

以前投稿した内容にあった、NFの患者さんがもうすぐ退院なので、ご主人が今日、仕事をお休みして「お見舞い兼wound careの練習」をしに来られました。

昨日も来られて、昨日は、まずは見学ということで、それでも洗浄部分は実践でやっていただいて、今日は全体的な実践という予定でした。

もう、まるで手術前の外科医のように手袋をはめた手を上にあげて、「準備オッケー!」とやる気満々でした。

結婚して49年ということですが…、50年経ってもラブラブの夫婦って凄いです!

「どうすれば、50年間もそんなに仲良くいられるんですか?」と聞いたら、ちょっと神妙な低い声になって「forgivenessだね」と言います。

「forgivenessかあ~。なるほど…。forgetって言うのかと思った」と言うと「それも大いにあるね!」と大笑いになりました。

そういう前置きはさておき、wound careの練習…。

wound care をこれから家でしなければいけない状況にある人は、ほとんど皆さん、とても不安な顔をされます。一体全体どうするの?みたいな。

でも、「3つの事をするだけでいいから!」と言うと、ほとんど皆さん、「おー、オッケー!」となります。

その3つとは、とてもシンプル。

1. クレンズ(cleansing/洗浄)

2.パッキング (packing/ガーゼで創床を覆う) - そうでない場合も有り

3.カバー (ドレッシング材などで覆う)

です。

「クレンズ・パッキング・カバー」、「クレンズ・パッキング・カバー」、と何度か呪文のように唱えると、「わかったよ、クレンズ、パッキング、カバーね!オッケー!」となります。

お子さん連れの場合は、お子さんまで「マミー、たった3つだよ!」という出来るモードになります。

スペイン語の場合でも、私の片言のスペイン語がこんな時には役に立ちます。

なんたって、詳細説明が不可能ときてるので、3ステップを簡潔に説明せざるを得ないんです。

でも、スペイン語でも皆さん、「リンピアル、ポネル、カブリル」って感じで、「おー、ブエノ!」となります。

この段階で下手にメディカルアシスタントの通訳を入れると、私の言った短文が、超長文化されて伝わるので、患者さんの不安顔はますます不安顔になります。

「え~、そんなに長くしないで下さいよ~」と私が心の中で思っても、メディカルアシスタントの通訳が親切すぎて、一体何を説明してくれているんだか、とにかく長すぎるのです!(最近、病院内で、通訳に関するin-service(教育)が行われましたが、まあ、大して変わりません)

なので、通常は、一通り説明し終わって、患者さんや家族に3ステップの呪文を唱えていただいてから、「じゃ、質問があったら、聞きますからね」と、もしその時点で質問があったらメディカルアシスタントの人に通訳にきてもらいます。

そんなこんなで、上記のご主人は、3ステップを唱えながらやる気満々でしたが、そこでちょっとした予期せぬ状態になってしまいました。

新しく入った夜勤になるであろう看護師が登場して「私は夜のシフトでドレッシング交換することになるので一緒に見ておきたい。今日しか見れないから。」と見学にきたのです。

そしてその看護師がいろいろ質問してくるものだから、シンプル3ステップが崩れてしまい、ご主人は、看護師を一歩前に出して、自分は一歩後ろに下がってしまわれたのです。(こういう性格も50年間ラブラブの秘訣なのでしょう。)

私も、新しい看護師の質問にも答えたいし、しかしながら、こちらのご主人は今日の実践のためにわざわざ仕事を休んで来ているのだからそちらも優先させたいし、そういった意味ではちょっと残念な状況になってしまいました。

wound careの練習で、とても重要なことは、集中できる環境です。

たとえシンプルな3ステップでも…。いや、だからこそ…。

テレビとかも消して、人も入れず、それだけをする、って感じです。

看護師は、自身の看護師経験もあって、何もやったことが無いわけじゃないので、「ああ、こんな感じね」と質問をするだけしたら「ありがとう」と言って部屋を出て行きました。

そしてその後、ご主人に「ごめんなさいね。でも、まだ全然終わってないから大丈夫よ(笑)」と言うと、「え、ええーっ!終わってないの? 3ステップはなかなか奥が深いな」で、また大笑いでした。

この患者さんのドレッシング材は、かなりびしっと固定しないと、場所が場所だけに剥がれてきてしまいがちなので、固定して、そして更に時々チェックしてないといけません。

バイカーショーツというか、伸縮性のエクササイズパンツとかを履いてみることをお勧めしたのですが、そのようなものを今まで履いたことがないので、とどうも嫌そうでした。

当初はテープ無し+ネット状の妊婦さん用の下着(病院の)と言う方向でしたが、テープ無しではとても無理ということが直ぐに判明して、ドレッシング材は、スキンバリア+テープ+産婦人科フロアから持ってきたネット状下着に、ご主人が購入してきた、パジャマ兼部屋着、で保つ感じになっています。

最後にご主人が「Can I sleep with her (患者さん)?」と聞いてきたので、「スリープの定義にもよるかなぁ」と言ったら、「後ろからcuddleするだけだよ~」と言うので、「ドレッシングを押さえててくれるんならオッケーよ」と言うと、「勿論だよ!」とまたまた大笑いで帰って行かれました。

患者さんは、「もういいから帰って~」という顔でした。ちょっと笑いすぎちゃいました。