■VACシステムのトラブルシューティング #221

最近、訪問看護から遠ざかっているので、久しぶりのpilonidal cystの患者さんでした。

手術後に患者さんが帰宅までの間にちょっと入る場所を「PACU」と言います。VACシステムを外来で使用する場合は、PACUで、家族にVACシステムのトラブルシューティングの説明をします。通常は、お母さんにちょっとドレッシング材の使い方を練習してもらいます。

パイロナイダルシストの患者さんは、ほぼ全員が十代の中高生なので、親も若いです。だからほとんどの親は、ちょっとしたトラブルシューティングに対応するキャパがあります。

でも、お母さんに通常説明するのは、シャワー時の対応と、リーク箇所にフィルムを張ってリークをとりあえず止める、ことくらい。

電話番号を渡して、24/7いつでも電話して、と言ったら、早速2時間後に電話がかかってきました。

電話の説明ではよくわからなかったので、ハウス・スーパーバイザーと外科医の承諾を得て、家に寄ってみました。

今回の手術では、外科医がサクションの場所を、ドレッシング材をブリッジで腰に持ってくるのではなく、患部に直接当てていました。ですが、それ自体は、患者さんのカンフィ度が落ちるというだけで、特に問題ではありません。術後は患者さんも患部に痛みがあって、横になる時も横向きに寝たりするし、そこにサクションがあったとしても、最初のドレッシング材の交換時(2,3日後)までは、むしろ直接吸い上げるから効果的かも、と思うくらいです。

(ここは、ちゃんと説明を加えないと、患者さんが外科医に対して不信感を覚えたりするので、説明します。)

ドレッシング材を見た感じも、ドレイネイジが患部から吸い上げられていて、そこは問題ではない感じ。でも、それが、進んで行っていない。

まず一番最初に…

VACシステムのトラブルシューティングの際は、セクション毎にチェックします。

キャニスター または、患部。特に肛門に近い方。またはサクション部分

Yコネクターを使用していな場合、この3つくらいしかありません。Yコネクターの使用は稀なので、大体この3カ所。

まずは、チューブにキンク(折れ曲がってたり)がないか、コネクターがちゃんとコネクトしてるか、2つのクランプが開いているか、バッテリーがあるか、等をチェックします。

各所各所を個別にチェック

肛門付近のドレッシング材

お尻を両側からグーっと押して肛門付近を塞ぐようにしてみて、VACシステムが動き出したら、そこにリークがある証拠です。

必ず、患者さんにこれから押すよ~と声をかけてからします。ティーンネィジャーなので男女とも、「キャー」となりますからね!

サクション

サクションの周りをフィルムでぴっちり覆って動き出したら、サクション。サクション部分は割と頑丈に作られているので、ここが問題の場合はそれほどありません。

キャニスター

新しいキャニスターをパッケージから取り出します。取り出したまま、キャップをはめたままで取り付け、ONにします。この時、患者さんには繋がっていません。キャニスターとデバイスだけが繋がっている状態です。

スクリーンに125mmHgと出て、普通に動く「音」がしたら、そのキャニスターは正常です。

まれに真新しいキャニスターでも、不具合がある場合があります。

今回は、途中までは吸い上げていたようで、キャニスター内にドレイネイジが入っていましたが、どこかで詰まったのか、キャニスターを新しいのに交換したら通常に作動し始めました。

キャニスターの不具合があると、KCIに連絡したりするといいのですが、今回は、キャニスターは当初機能していたので、その不具合というより、何かの原因で、ドレイネイジが詰まっちゃったのかな、という認識です。

VACシステムのトラブルがあった場合、医療従事者にとっては、「今回は〇〇」で済みますが、患者さんにとっては、生まれて初めての経験です。我が子が心配でお母さんがオロオロする気持ちや状況は手に取るようにわかります。

通常、医療従事者は患者さんに対して「大丈夫です」という言葉は安易に使えないのですが、VACシステムの場合は、「大丈夫だから心配しないでね」と言います。特にお母さんに!

ティーンネィジャーは、親がいると基本的に他力本願なので、本人が心配してるケースはあんまり見た事ないです。ほとんどの子は携帯見ながら寝転がってます。笑

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