■ルール設定で院内褥瘡患者数が半減 #78

病院内のコミッティの一つに、院内褥瘡予防というのがあります。

褥瘡予防と言っても、入院時に褥瘡があれば対処して、たとえ無くてもシフト毎にスキンチェックする、と、本来ならば、特別取り立ててどうこういう事項ではない筈なのに、残念なことに、褥瘡が出来てしまったりします。なので、院内褥瘡予防はやはり大切なことです。

褥瘡は、痛みを伴うものです。病院側の不手際のために、患者さんに不必要な痛みを与えるというのはあってはいけないし、防止に努めなければいけません。

約一年前の号になりますが、某創傷系雑誌に、「シンプルなシステムの導入だけで褥瘡の院内発生率が劇的に減少」というような内容の研究結果が記事として掲載されていたので、紹介したいと思います。

詳細に興味のある方は、ソース先を下に載せますので、そちらを検索してください。

それは、カリフォルニア州のカイザー系の2病院が数年にわたり調べた結果で、具体的には、全部で8年、最初の4年分は既存の数字(記録)、4年経った時点で、ある改善策(intervention)を実験目的も含め導入した結果、その時点から、院内の褥瘡発生率が約半分に減り、その減った数はその後も(少なくとも4年間)変わることが無かった、という内容です。

簡単にイメージで要約すると、下記のような感じです(ちょっと画像がボケてますが…)。

2013年の時点で、実験的に、かつ改善策として、何を導入したのかと言うと、それは、褥瘡発生リスクの高い患者さん用に、次のような内容が書かれたピンクカードを置く、ということです。

予防ポイントはシンプルに4つのみ。

  1.  Apply Heal Protector Boots (踵のプロテクションブーツを着用)
  2.  Apply Mepilex Border Dressing to Sacrum (フォームドレッシングを仙骨部分に)
  3.  Assess Skin Under Devices(IVチューブ、SCDのチューブ等)
  4.  Vigilantly Turn Q2H

こんな感じです。

ちょっと説明を付け加えると、1)のフォームブーツは、かかとのDTI(Deep Tissue Injury/深部損傷褥瘡)用。DTIは、一旦出来ると、「かかと部分の肌がちょっと紫っぽいけど…肌は大丈夫」とか思う人もいますが、実際は、骨に近い深い部分の損傷なので、見た目よりも深刻です。これを予防するには、1にOffloading 2にOffloading です。とにかく圧をかけないことが重要です。

2)Mepilex Border dressing とありますが、シリコンボーダーのフォームのドレッシング材であれば、その病院の常備の物で良いです。どの病院もMepilex を使用しているわけでもありませんし。

3)フロアの看護師は割とこれを軽く見がちですが、身体の大きな患者さんは圧もすごいので、これでDTIになるケースもあります。F/C(Foley Cather/Indwelling Urinary Catheter/尿管カテーテル)のチューブとかが腿の下敷きになっている場合もあります。

4)「Vigilantly」というのが重要で、ただ体位を変更すればいいだけではなく、ちゃんと見る、というか意識的にチェックする、という感じです。

このピンクカードは、基本的にハイリスクの患者さん用で、それでは、どんな患者さんがハイリスクでこのクライテリアに入るのか、が下記です。

まず、① Braden Score が12、又はそれ以下の患者は全員

褥瘡のリスクを測るツールにブレーデンスケールというものがあります。そのスコアが”10-12”の場合は、ハイリスク患者です。

又は、

② Braden Score が18以下で次のうち2つに該当する患者

  • 65歳以上
  • アルブミン(Albumin)値が3.0g/dlか、それ以下
  • 肌の状態が既に普通じゃない (partially blanches, irritant dermatidis)
  • 褥瘡が既にある

このピンクカードを作るのは簡単で、ワードファイルをピンクの紙に印刷したものをラミネート加工するだけです。

割と簡単に出来ます。裏側にはクライテリアを。

裏側はこんな感じで作ってみました。

でも、現実的には、既存のシステムを変えて、新しいルールを取り入れるのは、自分が上のポジションにいないとなかなか難しいものです。

規模が大きな施設だと尚更です。

でも、そこで「この病院終わってる~」とか思わず、現場で、担当看護師がその内容をその患者さんのケアプランに盛り込めばいいだけ、です。

ブーツとかドレッシング材での保護とか、たぶん多くの病院で普通に取り入れている事だと思いますし、チューブが足の下になってないかなんて、看護師が普通にチェックすることだと思います。

しかしながら、このピンクのカードを見ることで、無意識にしているような事を「意識的」な作業に変えてくれるのがポイントなのだと思います。

参考文献:

David C. S., and et al. (2018, March). Dramatic reduction in hospital-Acquired pressure injuries using a pink paper reminder system. Skin & Wound Care, 31(3), 118-122.

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