■サージカル・テープによる皮膚裂傷(スキン・ティア)★MARSI #57

サプライを置いているサプライ・ルームに、私が入った時から常備であるテープは2種類で(細かくは他にもありますが)、それらは紙テープとサージカル・テープです。

サージカル・テープは、手でも(はさみがなくても)簡単に真っすぐに切ることができて、便利で良いのですが、このサージカル・テープによるIVライン関連のスキン・ティア(皮膚裂傷)は本当に頻繁に起こるので、創傷を未然に防ぐ対策は必要不可欠です。

病院にいる患者さんの多くは高齢者で、皮膚がとても薄く、テープを剥がすときに簡単に皮膚の裂傷が起こってしまいます。

このように起こるスキン・ティアは、「Medical Adhesive Related Skin Injury (MARSI)」と呼ばれます。

IVのラインを取る際、看護師は、ラインを取った直後、チューブの固定にこのサージカルテープを使うわけですが(ラインを取るセット(Kit)の中にこのサージカル・テープが既に入っている)で留めて、その時はそれで良いのですが、ラインを何日か後に抜く際に、テープもささっと剥がすものだから、皮膚が破けて、患者さんは血だらけになってしまうのです。

正直な所、そして現実問題、悲しいことですが、医療従事者の多くは、患者さんの腕や手にスキン・ティアが出来ても、あまり気にしません。その上にドレッシング材を貼っておしまいです。

実際、皆さん、何日かで治るのですが、でも、皮膚が100%剥がれて無くなってしまう場合は、治るまで時間もかかります。

スキン・ティアが出来ても、特に報告するような創傷でもないという感じで、報告が無い場合も多いです。こんなの傷のうちにはいらないでしょう、という感じです。これは施設にいるディレクターや上に立つ人によって大きく変わってくることも事実です。

Med-SurgやICU, ERなどは、もっと生死に関わる症状を扱うので、はっきり言って「スキン・ティアとか何それ?」みたいな感じです。

これは当病院に限らず、他の医療施設でも有り得ることで、以前いた職場では、高齢者が多いのにも関わらず、スキン・ティアの事実や届けが全く無かったことから、逆に、報告漏れか、そうじゃなかったら隠蔽じゃないか、と疑われて州から指摘があったくらいです。

今日、3.0 ㎝ x 1.5 cmのサイズの、100%皮膚が無くなったスキン・ティアを見た時は、流石に思わず、担当の看護師に「皮膚(skin flap)をはさみで切った?」と聞いたら「切ってない。取れてきちゃったの。」とのことでした。

今、このサージカル・テープなるものを、いっその事サプライルームから無くしたらいいんじゃないのかな?という方向で考えたりもしますが、IVラインのセットには既に入っているわけだし(スキンを予め保護するskin-prep liquidも入っています)、やっぱり抜く際の看護師が気をつけるのが一番効果的、という結論に達します。。

Wound Care Nurseが教育しなきゃいけないんじゃないの?と言われればそれまでなんですが…。

値段が高いので、看護師の普段使いにはなりませんが、テープについた粘着物を溶かすようなスプレーも存在します。