次のような内容について書いています。
「Skin Tear(皮膚裂傷)」
高齢者の「Skin Tear」
「Skin Tear」の処置 – 治癒期間が全く変わってきます
「Skin Tear」の予防
余談(読み方・発音)
画像付き文献1つ(写真だけでも見てみて下さい)
Wound care nurseは、医師のオーダーがあって初めて患者さんの部屋にwound careに行けるので、医師のオーダーがない時は、担当看護師が対処しています。
看護師は入れ替わり立ち代わりシフトで入るので、1人の看護師がたまたま気付いて私にオーダーを入れてくれた時には、wound になってから日にちが経っていたりすることもしばしばです。
起こるWound の中で、あぁ、直ぐに呼んでもらえてたら…と思うのが「Skin Tear」です。
「Skin Tear(皮膚裂傷)」
「Skin Tear」は、皮膚を何かにぶつけたりした時に起こる裂傷です。いわゆる何かにぶつかって「皮がむけちゃった」って状態なんですが、擦り傷とは違って、皮膚そのものが剥がれてしまう状態です。高齢者の施設(Long-Term CareやSkilled Nursing Facility)では、残念ながら、日常茶飯事のように起こります。
サイズは様々、一番多い箇所は腕です。ベッドレイルや車椅子など色々な物にぶつかったりして出来ます。IVを設置した際にスキンバリア無しに貼られたサージカルテープ(←ほんとやめて欲しい)を、忙しくしているナースがべりっと勢いよく剥がして、肌がテープごと剥がれてしまうSkin Tearもあります。医療従事者側の不注意としか言いようがありません。
アセスメントについては、今日は省略します。今日は対処について書きたいので…。
高齢者の「Skin Tear」
年齢が若い人が物にぶつかっても、そうそう皮が剥けたりすることはありませんが、高齢者はささいなことで、すぐにSkin Tearになってしまいます。
高齢者の肌は、ブロックに例えると、今にも崩れそうなブロックがかろうじて積みあがっている状態(全員がそうということではありません。)。
若い人の肌は、積み上げられたブロックがきちんと並んでいる状態。モルタル(セラミド等の脂質や水分)もきちんとブロック間に入ってて、ちょっとやそっとじゃ並んだブロックは崩れません。このブロックは、皮膚組織です。
高齢者の肌は、ブロック(皮膚組織)間にあるべき脂質や水分が減って、ブロック(皮膚組織)間がスカスカ、ガタガタしてる状態です。なので、ちょっとの衝撃でも崩れてしまいます。
施設のベッドのベッドレイルは、丸みがあって、ぶつかっても肌を傷つけるような造りになっていませんが、このような丸みのあるベッドレイルにぶつかっただけでも、簡単にSkin Tearが起こってしまうのが高齢者の肌です。
高齢者の肌は、簡単に創傷が出来てしまうことに加え、治りにも時間がかかります。しかし、初期の段階できちんと対処するしないで、この治癒期間は全く変わってきます。3~4倍は変わってきます。
きちんと対処すれば数日で治りそうなものが、3~4週間かかる創傷になってしまったりします。
「Skin Tear」の処置ー治癒期間が全く変わってきます。
「Skin Tear」の最重要事項は、皮膚が戻せるか否か。Skin flapというやつです。
Skin flapがあると「no skin loss」と記録され、これはカテゴリー1というSkin Tearの中でも一番良い状態です。
しかし!
一番残念なのが、100% Skin flapがあるにも関わらず、ちゃんと皮膚が伸ばされていなくて、縮まったまま、安易にSteriStripsが貼られているような時。SteriStripsを貼られている意味が全く分からない状態。深いため息が出る瞬間です。
縮んだ皮膚は、何日かするともう固まって引き伸ばせなくなるので、全然カテゴリー1の100% Skin flapの状態ではなくなって、Skin lossの状態になります。皮膚が無い場所に皮膚の細胞が細胞単位で成長していくのを何日も何週間も待つことになります!
Skin Tearの処置
Skin Tearが起こったら、まず直ぐに皮膚を優しく伸ばしてあげて下さい。指でなく、Foreceps(ピンセットみたいなもの)できちんと丁寧に伸ばして、皮膚を出来るだけ完全に戻して下さい。
皮膚の流れに沿って、Skin barrier liquidを塗ってあげます。私は断然3M社のCavilon skin barrierです。Skin barrier liquidは、完全に乾かします。(1分くらい)
完全に伸ばしたら、1本~2本SteriStripsを貼ります。これはオプションです。
その上からシリコンベースのドレッシング(メピレックスあたり)を貼ります。Skin Tearが起こるということは、クッションとしてのドレッシングにもなるからです。
下に画像付き参考文献のリンクURLがありますので、画像をご参照下さい。Skin flapを綺麗に端まで伸ばして引き寄せて、ステリ・ストリップ(SteriStrips)を貼っています。
このまま、4~6日くらいそのまま貼っておきます。ドレイネイジが多かったらドレッシング材を途中で交換しても良いですが、少ない場合は、4~6日くらいずっと触らずに貼っておきます。
傷の状態によっては、2日目くらいにチェックした方がいい場合もあります。その場合は、SteriStripsの有無にもよりますが、傷の流れに沿ってゆっくり丁寧に剥がします。ちらっと見て大丈夫そうだったら、そこにまたスキンバリアを塗って、同じドレッシング材をそのまま戻します。
「Skin Tear」の予防
Skin Tearが多い人に対して、看護助手が時々「Geri-sleeve」を出して欲しいと言ってきます。肌を保護する腕カバーです。
Geri-sleeveは、でも、基本的に出しません。以前出したこともありますが、これを使用するポイントがわからないんですよね…。あまり利点がないのです。
Skin Tearの予防は、何と言っても一日二回のスキンケアです。一日二回のスキンケアで、Skin Tearが減るというエビデンスもあります。(以前書いたことがあるかもしれません。)
しかし、Geri-sleeveをしていることによって、クリームでのスキンケアがおろそかになります。「out of sight, out of mind」という感じです。隠れて見えないとクリームも塗られない状態になってしまいがちなのです。
それに、Geri-sleeveするくらいなら、長袖を着たらどう?と思います。Geri-sleeveは患者さんのためではなく、スタッフのためになっていませんか?と思ってしまうのです。
また、高齢者の肌にテープを張るのは極力さけましょう。特にサージカルテープ。サージカルテープは、IVスタートのKITにもデフォルトで入っていて、高齢者にも普通に使われてしまうのですが、それを使う際は、必ず事前にスキンバリアを塗りましょう。Alternative(代用品)としては、「ハイ・テープ (High Tape)」など、Zinc-oxideベースの、肌に優しいテープもあります。
テープの剥がし方スキル。テープは、垂直に剥がさないようにします。テープ類は、出来るだけ、肌と並行に肌を下に押しながら剥がしていきます。
余談(発音)
「Skin Tear」の読み方(発音)についてです。
この度改めて、「スキン・テア」と「スキン・ティア」どっちが正しいのか、英語ネイティブの我が娘に確認してみましたところ、「スキン・テア」でした。
今まで気にしたこともありませんでした。苦笑
画像付き参考文献1つ
参考文献を1つ載せたいと思います。下にリンク先URNを載せますね。
スキンテアのクラス分けが画像付きで説明されていて、ケーススタディも画像付きですので、写真だけでも是非見てみて下さい。
ケーススタディの大きなスキンテアに、Wound VACが使用されています。私の勤務する病院は小さめなので、Wound VACは使用の都度KCIから持ってきてもらっているので、ささっと一日二日使用しようか、という運びにならないのが残念です。
Wound VACは、ケースによっては一日二日の使用でも十分に効果が発揮できる治療法です。
Reference
Moradian, S., & Klapper, A. M. (2016). A novel way to treat skin tears. International wound journal, 13(2), 283–286. https://doi.org/10.1111/iwj.12426. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7949816/