■Wound Cultureの採り方
■最も状態が良い部分から採る
■Levine technique と Z-Stroke technique
■まとめポイント
新任のInfection Controlのマネージャーが「Protocol」なので、と言って、Wound Cultureを取るようにと医師にお願いすることが最近多くなりました。
褥瘡や静脈性の潰瘍など、慢性的な創傷にはぼぼ必ず何らかのバクテリアが存在します。それでも、見た感じがクリーンで、ドレッシング材の交換などの毎日のWound Careで回復に向かうケースも多々あります。
これまでは、感染症リスクの気配が無ければ、Wound Cultureは特に取らない、というスタンスでした。Wound Cultureを取るのには医療費も結構かかります。取る必要が無いWound Cultureを取ったら、患者さんにとっても医療業界にとっても、フェアじゃないし、保険会社も「このWound Cultureは必要でしたか？」と言って、費用がカバーされない可能性もあります。
でも、Infection Controlのプロに所内規定（Protocol）と言われてはしょうがない、という感じで、医師もOKを出します。そんな感じで、最近少しWound Cultureに関する状況が変わってきました。ちょっとピリピリしてる雰囲気です。もしかしたら、COVID-19があったせいでしょうか。Infection Controlに関する決まり事が増え、Isolationの所内規定も複雑な感じになりました。今までが甘々すぎたのかもしれません。
今日はそのようなわけで、Wound Cultureについて書いてみたいと思います。
■Cultureの取り方
Wound Cultureは、3つの採り方があります。
１）専用の器具やScalpels、またはCurretを使ったWound tissueのBiopsy。Gold Standard for Soft Skin Infection。
3~4mmの深さの所から組織を採取します。糖尿病性潰瘍のWound Cultureを採る際は、一般的にこの採取方法が望ましいようです。採取した組織は、コンテナーや専用容器に入れて、1時間以内にラボに送ります。(Non, 2018)
２）Needle aspiration。注射針でドレイネイジを採取します。Gold Standard for Soft Skin Infection。22Gの注射針を10mlシリンジにセットして、ドレイネイジを吸い上げます。量は0.5~2.0ml。1時間以内にラボに送ります。ドレイネイジを吸い取るだけなので、痛くないです。よって、Non-Invasiveです。(Non, 2018)
３）Swabスティックでの採取。最も一般的で採取が容易です。痛みを伴うことも少ないNon-Invasiveな方法です。最も正確なWound Cultureの情報が得られるわけではありませんが、簡単で手軽なので、現場ではほとんどこれです。
■最も状態が良い部分の組織から採る
Wound Cultureを採る際、傷床上の特に悪い部分や、purulentなドレイネイジから採ろうと思うのが普通の心理ではないでしょうか。しかし、それは正しい採取方法ではありません。
正しくは、きちんと創床を洗浄した後、「最も状態が良い組織から採取する」というものです。洗浄は、生食水(saline)で、創床からドレイネイジや壊死組織などが全て無くなるまで行います。
The most healthiest area（最も状態が良い組織）から採取する理由として、例えばMSQC, Michigan Surgical Quality Collaborativeはプロトコルの中に次のように説明しています。「Pus（膿）やnecrotic tissue（壊死した組織）部分は、正確なバクテリアに関する分析結果を提供しない（が得にくい）」(msqc.org, 2019)
■Levine technique と Z-Stroke technique
Levine technique
最も正確な採取法とされているのが、このLevine technique/methodです。
採取方法は、まず、SwabスティックでWound bedに触る前に、Salineでwound bedを洗浄します。Wound bed上の最も健康的な組織部分を選び、1㎝四方のエリア内で、Swabスティックを5秒間回します。最後にSwabスティックを少し押し付ける感じにしてドレイネイジを吸い取ります。
Z-Stroke technique
Wound bed（創床）上をSwabスティックでジグザグにこすって採取する方法です。全面に触るので、Wound bedは十中八九バクテリアで汚染された状態になるため、Levine techniqueよりも結果が不正確とされています。
■まとめポイント
Wound Cultureは、Clinical examinationによる判断を超えるものではなく、あくまでも補助情報です (Non, 2018)。
バクテリアが検出されたからと言って、すぐに感染症と決めつけない (msqc.org, 2019)。殆どの創傷にはバクテリアが存在します。あくまでも患者さんの状態で判断します（肌の赤みや浮腫、痛み、皮膚温度、ドレイネイジ量の増加など）。
Wound Cultureは、抗生物質を処方する前に採るのが望ましい (msqc.org, 2019)。
Wound Cultureは、最も状態が良い創床部分から採る (msqc.org, 2019)。
Wound careはsterile procedureではありませんが、wound cultureはsterile equipmentを使用する (msqc.org, 2019)。
Woundの治療効果判定の目的で再度Wound Cultureを採ることは望ましくありません (Non, 2018)。
Reference
MSQC.com.(2019). Wound culture protocol. https://msqc.org/wp-content/uploads/2019/02/wound-culture-protoco.pdf
Non, L. R. (2018). Bacterial wound culture. MedScape. https://emedicine.medscape.com/article/2103764-overview?icd=ssl_login_success_221002#a3