小児専門訪問看護、成人の訪問看護、の両方をした経験から書きたいと思います。
訪問看護は「基本的に」週末の勤務はありません(私は必要ならばやってしまいます)。看護師個人の置かれてる状況によって、患者数を減らしてもらったりできるので、都合により施設などでシフトで働けない人には良い勤務条件である場合もあります。
訪問看護は、一人で物事を判断しなければいけないので、基本的に新卒の採用ではなく、経験者を採用するようですが、教育を長くしてもらえば可能な仕事だと思います。確かにIVの薬の投与などだと、病院や施設での勤務経験があれば楽にできるとは思いますが、それはその人次第だと思います。
私が訪問看護もしたかった理由は、創傷看護の案件が時々あるから、です。時々、その他の案件も回ってきますが、普段創傷ケアが専門でその他の事をする機会がめっきり減ったので、個人的には歓迎です。
★訪問看護師の一日
フルタイムの訪問看護師の一日は、一日前から始まります。翌日の訪問患者をチェックして、家族や本人に連絡を取り、時間の取り決めをします。
必要なサプライ(採血用サプライやドレッシング材など)は、通常、患者さんのお宅にありますが、それも事前に確認し、無い場合は、事務所に寄って取って行く、という形になるため、その分朝余計に時間がかかることもあります。
訪問件数は、一日に大体5件前後かと思います。それ以上あると、移動時間や記録にかかる時間も含めると、かなりきついです。また採血したらそれを近隣の病院のラボに2時間以内に届けないといけないので、採血が2,3件ある場合は、「ええっとー…」みたいな感じになります。
記録は、出来るだけその日のうちに。オンラインでできるタイプもあるので、家でもどこでも基本的に可能です。
時給は、やはり病院に比べ、低く抑えられています。
★小児専門訪問看護
一番多いのは、急性リンパ性白血病の患者さんです。血小板が減少することが多く、ほとんどのドクターは、早朝の血液検査を希望します。結果は2時間以内に出るので、血小板が少なく輸血が必要な場合は、家族がその日の午後に病院に連れていけるからです。
この病気を持つほとんどの全ての患者さんは、胸右側上部にパワーポート、又はパワーPICCと呼ばれる埋め込み式のPICCラインを持っていて、RNが週に1回か2回、訪問してパワーPICCラインから採血します。
年齢が3,4歳だと、針を怖がって泣き叫ぶので、なだめたり優しく説得したりしてもダメな場合は、お母さんが押さえ込み、そこで一発で的中させる必要があって(じゃないと、お母さんも辛い)かなり緊張する瞬間です。泣いて怖がる子供は、2回目をさせてくれません。
痩せ気味の子供はパワーポート自体が浮き出て、埋め込み先が見えるのですが、ヒスパニック系のちょっと小太りな子供や、パワーポートがちょっと動いてしまうようなケースは難しいです。
大人の患者さんの訪問看護との大きな違いは、親とのコミュニケーションが主体になる点です。訪問してもおばあちゃんがいても親が居なかったり、患者宅に患者がいなかったり、家が猛烈に散らかっていて足の踏み場がなかったり、ガレージに新生児を含む家族4人が住んでいたり、本当に、様々な家族模様を見ます。
★訪問看護に興味がある方へ
■訪問看護はまさに「Family centered care」。家族の関わり方次第で、患者さんの状態も変わります。家族の血圧を測ってあげたり(時間があれば)、家族全員に血圧の測り方を教えてあげたりすることもあります。お父さんの血圧が常に高く、それからお父さんが食べ物に気をつけるようになったり、そんな話を聞くととても嬉しいです。
■家の中では靴を脱ぐ。アメリカでは皆が家の中で靴を履いている、と思われがちですが、履いていない家族が圧倒的に多いです。特に、医療関係者の靴で家に上がられたら嫌な人は多いです。靴を脱いで上がって、嫌がられることはまずありません。
■ラボの人と仲良くなるといろいろ教えてもらえます。また、急に電話して「ごめん!今から行くから紫のとグリーントップのチューブ用意してて!お願いね、ありがとう~!」とか超急いでる時とかお願いして助けてもらえます。
■患者さんのお母さん達は病気についてすごく勉強していて、ナース達より何倍も知識があることが多いです。学校では習わないようなこともお母さん達から教わることがあります。お母さん達は、抗がん剤なども病院から教育を受けて自宅投与していたりして、精神的にも強く、尊敬に値します。
病院の滞在は日本に比べて短く、それに伴い、訪問看護師さんの存在価値は大きいですが、圧倒的に看護師さんの数が足りていないのが現状です。是非もっと増えて欲しいと思います。