「Nursing is an art and science.」と言われます。
看護プログラムに応募する以前に、必修科目として、解剖生理学や微生物学などを予め履修しないといけないので、「サイエンス」の部分があることは明らかだとしても、それでは「アート」部分は何でしょう。
まあ、なんとなくわかる気はするじゃないですか。でも、実際に例を挙げて説明するとなると、一瞬、間を置くかもしれません。
先日、某足の専門医の先生がお話する動画を見る機会がありました。そこで、「これが看護のアート部分ですね」と言及されていました。はっきりそのように言ってもらえると、すっきりします。
下肢に静脈瘤がある高齢の患者さんが来られた時、その治療法の一つとしてかかせないのが圧迫両方です。専用の靴下やデバイス(ベルクロ付きとか)を使用します。
その際、ドクターは「30-40mmHgのを使うようにしてくださいね。今履いているソックスでは(圧が)弱すぎますからね。」と患者さんに言って、患者さんも「はい、わかりました」と答えます。「サイエンス(エビデンス的な)」の観点から言うと、確かにそうなります。
しかし、この患者さんが、言われた通りに30-40mmHgのコンプレッションストッキングを使用する確率はほとんど0%です。
高齢の患者さんが使用するには難しすぎるからです。力も必要だし、実際、私自身も、それを仕事に履いていこうとしたら、他のソックスより1-2分余計に必要なくらいです。多くの高齢の患者さんは、それを履く際に、逆に肌を爪でひっかいてしまったりして、潰瘍に発展したりします。
なので、サイエンス的な理想は30-40の圧だけれども、アート的には20-30mmHg… いや、15-20mmHgでも履けるならそれでもいい、というスタンスがそれです。この足の専門医は資格試験に携わっている先生なので、そう言ってもらえてホッとしました。
というわけで、看護におけるアートとは、「医師と患者さんの間に立って、患者さんがより理想の治療に近づけるように調整する、ということ」みたいな感じでしょうか。
付けたしですが、この同じ専門医の先生が、肌につけるクリーム類の説明もされていました。成分を細かく説明してくださって、市販されているこれやあれは、マーケティング的なものであって云々…などなど話された後、「まとめ」として仰ったのが「any cream is better than no cream.」でした。まあまあ、成分があれだのこれだのと色々あるけれども、つけないよりは何でもいいからつけてくださいよ、ということでした。思わず笑ってしまいました。