■創傷治療の障害は医療システム側にある #69

人間の自然治癒力で放っておいても治る傷もありますが、放っておくと悪化の一途をたどる傷が残念ながら大多数です。でも、多くの患者さんが、毎日病院やクリニックに来れるわけでもなく、どうしても家族や友人の協力が必要になります。

創傷の患者さんが子供の場合、ほとんどの場合、親や兄弟(大学生とか)が毎日のケアにあたり、それ程問題はありません。例え一日三回のドレッシング材交換とかでも(あまりそういうケースはありませんが)ほぼ大丈夫です。

多くのお母さんやお父さんは、PICCラインの生食フラッシュやドレッシング交換等、教えると、とても上手に出来ます。可愛い我が子のためなら、看護師の何倍も真剣だし、頼もしいです。

しかしながら、患者さんが高齢の場合はいろいろな困難があります。

高齢者の方は、傷に手が届きにくい、傷が見えにくい、治療方法が複雑すぎる、家に創傷ケアのサプライが無い、お店までに買いに行けない、等、様々な弊害があり、この障害を訪問看護で埋めたくても、訪問看護師が訪問できるのは、週にほんの一日か2日のみ。

でも、傷が治るには時間がかかるのでで、ずっと入院してもいられないし、この医療システムがなんとか変わってくれることを望むのですが…。

今日クリニックに来られた60代の男性。糖尿病を患っています。

退職しているので時間と健康保険があるので、どうやらあっちこっちのお医者さんに掛かっててて、踵の手術をした関係上、足の専門医にも通い(つい5日くらい前)、内科の担当医もいて、家には訪問看護師も来ている、とざっとそんな感じのこの方、足の親指の裏に創傷があるということでクリニックに来られました。

足を切断しなければいけない結果になったら一大事、と、その足の専門医(遠方)からの紹介を得て、という流れでした。

足の専門医に「アグレッシブなwound careが必要」と言われた、とのことでした。

「もう足の専門医が削れる箇所は削ってるから、必要なのはwound careだけ。」と言います。また、訪問看護師がいるけれど、8回までと決まっていて、それ以降が無いとのこと。

足の裏に糖尿病性の創傷ですが、2㎝以下の大きさで、見ると綺麗な創床。傷の周りも、足の専門医が綺麗にしてくれたので、フレッシュないい感じ。ドレナージも透明。骨にも達してない。

外科医に、再度、自分は「アグレッシブな」ケアが必要だと訴えています。

外科医が「僕のアグレッシブは、一日2回ドレッシング材替えること。3回でもいいくらい。それが僕のアグレッシブ。週に2回、訪問看護師にドレッシングを替えてもらってもこの傷は絶対に治らないよ。」と。

こう言われたら、誰でも困ってしまうでしょう。

実際には、アグレッシブなケアのオプションは他にもあって、スキングラフト(皮膚の移植)や、NPWT、細胞増殖促進剤(Regranexというgrowth factor)などです。しかし、これは医師のオーダーが必要で、GOサインを出してくれる医師がいないとなかなか実現しなくて悩ましいのです。そして、実際には、RegranexもNPWTも高価ではあるけれど、ほぼ全ケースが保険でカバーされるし、スキングラフトに至っては、病院にreimbursementが望めるくらいです。

「創床がこんなに綺麗なのに、Growth factorとか必要ないでしょう?」と医師は言いますが、インフェクションの状態になってからではこのGFは使えなくなってしまいます。

別件で、以前、訪問看護で訪れた患者さんは50代後半の男性で、睾丸部分にインフェクションを起こして、睾丸部分の比較的大きな創傷ケアが必要でしたが、奥さん(伴に50代後半)が在宅でも「私は絶対に無理」と部屋を出て行ってしまいました。病院からのオーダーは、「ガーゼ交換一日2回」というものでした。

結局、この方は、訪問看護師さんの会社で提案してくれた、毎日交換する必要のないハニー(蜂蜜)のドレッシング剤を使用して、回復しました。ハニーのドレッシングは病院から出されることはまず無いので(僅かな確率の不適合ケースも避けたい理由で)、こういう小回りが利く訪問看護エージェンシーの存在は助かります。

最近の多くのドレッシング材は、進化を続けていて、このような障害を克服してくれる助けになります。医療機関サイドでも、「ガーゼ交換一日2回」と決めつけず、患者さんの側に立ったケアができたら、と思います。

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