デイキンズ・ソリューション (Dakin’s Solution) = Sodium hypochlorite

■ Dakin’s solutionの濃度

■ Dakin’s solutionのpH

■ FDA承認?保険でカバーされる?

0.125% Dakin’s solution (デイキンズ・ソリューション)は、創傷ケア用に頻繁に使用される液体です。術後のケアにもよく使われます。薬品名は「Sodium hypochlorite (次亜塩素酸ナトリウム)」です。

製造販売元は「Century Pharmaceuticals, Inc」です(woundsource.com)。

Dakin’s solutionは、1900年代の初めにイギリスの化学者Henry Dakinとフランス人の外科医によって開発された殺菌剤で、第一次世界大戦中に広く使用されました(Keyes, Jamal, & Thibodeau, 2022)。

Dakin’s solutionのpH

「Safety Data Sheet」はじめ、多くのサイトには、Dakin’s Solutionの商品(細かい仕分け無しで)は、pH=10と書かれてあります。これは、皆んながびっくりしちゃわないのかな、と思います。「Dakin’s solution productsのSafety Data Sheet

創傷ケア商品販売各社のウェブサイトでも、SAfety Data Sheetに従って、普通にpH=10と書かれています。

ボトルを開けた際、漂白剤の臭いがします。が、勿論、漂白剤と同じではなく、治療に使えるようにちゃんとBuffer成分が配合されてpH的にも中和されています。創傷ケアに使用されるのは、0.125%かそれ以下(それより薄い)の濃度です。

0.50%のFull StrengthのDakin’s solutionのpH=10。

水で希釈されたらpHも酸の方向に進んで行くと思います。純水のpHは理論上7.0。どんどん希釈して水に到達してしまっても、その時点でpH=7.0。

0.50%のFull StrengthのDakin’s solutionのpHが10だとしたら、1/4 strength (0.125%)のpHは、単純計算で7.75くらいかな、と思うのですが、どうでしょう…

いや、それは違うよ、という意見がありましたら、是非コメントで教えていただけたら嬉しいです。

以前、外科医が患者さんに「ブリーチだけどね」と笑いながら軽く言ったら患者さんがびっくりしてしまったことがありました。訪問中で部屋にいた家族が、慌てて「Therapeutic bleachってことよね?」と言ってくれて、笑って終わりましたが、ブリーチ剤と聞いたら誰でもびっくりしてしまうかと思います。

Dakin’s solutionの濃度

人間の皮膚組織に害なく使用できるDakin’s solutionの濃度は、リサーチによって0.5%がMAXとされています。というわけで、Dakin’s solutionのMAX濃度、いわゆる「Full Strength」は0.5%です。

通常、創傷ケアに使用されるのは、1/4(クォーター・ストレングス/Quarter strength)の濃度、0.125%です。写真のように、0.125%の濃度のボトルはラベルが緑色です。濃度によってラベルの色が分かれているので、わかりやすいです。手元にこの濃度のボトルが無いというケースは稀だと思いますが、万が一、手元にある濃度がもっと高濃度の場合は、水で希釈します。

このように、病院でも0.125%の濃度で頻繁に使用されることが多いDakin’s solutionですが、厳密には、医療施設での使用には、0.025%が安全な濃度とされています  (Keyes et al., 2022)。。

Dakin’s solutionは、Gram(+)及びGram(-)のどちらのバクテリアにも広く対応するので、すぐに患部の感染を抑えたい時には効果的です。バクテリアの他、真菌、胞子細胞、イースト菌、ウィルスにも効果があります。また、MRSA(*)やVRE(**)にも効果があるとされています(Keyes et al., 2022; woundsource.com)。

*methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) / **vancomycin-resistant Enterococcus 

保険でカバーされる?FDAに承認されてるはず

以前は、外来で医師が処方しても、患者さんが薬局に行ったさい、FDAの認可がないとか言われて渡してもらえませんでした。しかし、最近状況がかわってきたのか、外来の患者さんが「保険でカバーされたよ」と言うようになりました。ウェブサイトを見てもFDA承認済のOTC(Over-the-Counter)と書かれてあります。OTCというのは、普通に市中のドラッグストアで置いているという意味です。実際、Amazon.comのサイトでも購入可能です。価格は、$40前後です。(Amazon.comの商品サイト

実際には、保険でカバーされるされないに関わらず、使用するのが患者さんに対して有益である場合は、クリニックで患者さんに渡す時もあります。

Dakin’s solution 製造販売元からのSafety Data Sheet

Reference

Safety Data Sheet for Dakin’s solution products. (2021). Century Pharmaceutical Inc. https://getdakins.com/wp-content/uploads/2021/09/Dakins-Safety-Data-Sheet-Substitute.pdf

Keyes, M., Jamal, Z., & Thibodeau, R. (2022). Dakin solution. StatPearls. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK507916/

WoundSource.com. (n.d.). Dakin’s Solution® Quarter Strength (0.125%). https://www.woundsource.com/product/dakins-solution-quarter-strength-0125